東京
ガイグは太平洋を。
真っ直ぐ東京へと向かっていた。
インターネットニュース徳東の
堆星のインタビュービデオは。
それをもとにテレビ各局は
その筋の専門家を-----
番組に引っ張り出しあれやこれやと。
しかし-----。
第五周期など彼らも-----。
肝心の堆星も本沢もいっこうにテレビに
出演する気配はない。
他の事で忙しいらしい。
テレビのキャスターが
出演して説明すべきだと
何度も訴えている。
スマフォで撮影した実験の様子は
インターネットニュース徳東が
配信済み。
各局ともに流している。
それを見るにつけ
各局ともに。
最初は小さな扱いだったが、
-----他にも専門家はたくさんいる。
遺伝子工学系の学者たちを
多く取り上げていた-----
それが今では。
大学側も現在取材をどうしていいのか。
結局、本沢も堆星も。
テレビ各局の代表取材という形でインタビューを。
そう長い時間は取れなかったが。
しかしテレビでこんな事を言って
大丈夫なのだろうか。
不安もある。
それをもとにテレビの画面では
専門家の先生方があれやこれやと。
どちらにしても結論が出るのは
相当先の事らしい。
そのようにテレビに出ていた
偉い学者の先生が言っていた。
それを見ていた政府関係者も防衛省も-----。
すぐにも結論が出るかと
期待していたらしいが。
がっかりと。
堆星先生たちを
政府のコントロール下に置くか
政府とは関係なく勝手に動いてもらうか。
それで揉めた経緯もあるが。
結局は“勝手に”という事になっていた。
第五周期など危なくて。
後で何を言われるか。
抱え込むと-----後で何を言われるか。
そういう考えが大勢を占めていた。
「マスコミと堆星先生の方で
結論を出してくれればありがたかったのに」
そう言った者がいたとか。
マンガなら
すぐにでも結論を出して
対抗策を出してくれるのが
学者の先生なのに。
現実にはなかなか。
政府内でもそうだ。
マンガではすぐにでも
その筋の専門家を集めて対策会議となるのだが。
まだ人選の段階だ。
いったい誰を呼べばいいのか。
マスコミの報道を見ながら
その中から選ぶのが正解か。
官僚たちはテレビにかじりついている。
もっともらしいことを言う先生たちか。
いや。
それでは。
マトモとそうでない意見の中間か-----。
キャスターに突っ込まれて口ごもる先生は
-----ちょっと。
たいへんだ。
しかしスズ、アンチモン、テルルとなると
専門の先生方も、皆。
第五周期など出た日には全員。
どうしよう。
それとも-----その筋の第一人者を。
しかしその筋の第一人者を誰が決めるのか。
しかも-----その筋とはどの筋か-----
怪獣相手の第一人者など。
全く雲をつかむような話だ。
とにかく何も決まってはいない。
マスコミに出ている先生を何人か。
それしかないか。
多少の事には-----。
しかし堆星先生はどうする。
専門家会議に呼ぶべきか、
どうするか。
まだ揉めている。
「もうちょっとまともな意見を
述べてくだされば」
そういう意見が大勢を占めている。
「呼びたいのはやまやまだが」
これが後につく。
堆星先生にテレビに出てもらい、
他の専門家の先生方と
丁々発止とやってもらい。
その上でこちらが出て行った方が
良かったというモノもいる。
しかし-----それで怪獣を倒せるのか。
まあ怪獣を倒すのは自衛隊の仕事。
こちらの仕事は-----野党対策と、
マスコミ対策だ。
怪獣の方は自衛隊に任せておけばいい。
しかし-----。
横目で自衛隊の幹部を見る。
マンガでは-----。
こちらも怪獣対策に手を貸すしか。
しかしどうやって。
やはり専門家か。
どうしよう。
時間もない。
事態は急を要する。
本沢先生と堆星先生に加わっていただくかは-----。
今回はご遠慮いただく事になりそうだ。
テレビの中でもあまり。
番組の占有率は高い割に-----。
これは非・常・に・穏やかな表現だ-----
評判は良くない。
東京にはすでに避難勧告が出されている。
しかし逃げると言ってもどこへ逃げるのか。
とにかく郊外へと急ぐ
人の群れであふれている。
ガイグは太平洋に海底をゆっくりと。
すでに東京まで二百キロない。
八丈島の近海を北へ。
「大臣、もうこれ以上は」雪川統幕議長。
「やはり来るのか」枠未防衛大臣。
「炎龍山の火山噴火も
下火になったんだろう。
そうなればすぐに引っ込むはずじゃあ
なかったのか」官僚。
「東京上陸は何としても
阻止しなくてはならん」陸堀首相。
「できるね」枠未大臣。
「何としても」雪川も。
攻撃命令が下った。
海自からは対潜哨戒機が。
護衛艦隊、潜水艦隊はすでに配置についている。
合戦準備も整っていた。
テレビ局のヘリがその上空で。
防衛省内にもテレビのモニターが置かれている。
前線の部隊からのモノと
テレビ各局の映像を映し出している。
南北大学。
堆星研究室でもその映像は。
「先生。
ここは大丈夫でしょうか」弥生。
「いざとなったら
逃げだせるようにしておかなければ」堆星。
陸自の陸川二佐もいる。
数機の対潜哨戒機が
魚雷を投下した。
十数発の短魚雷が
同時にガイグへ向け。
「あれで進行方向が変わってくれなければ」
防衛省内。
ガイグが短魚雷を認めた。
短魚雷は真っ直ぐガイグへ。
着弾。炸裂。
次々に。
対潜哨戒機が直撃を報告している。
しかし-----。
「やはりダメか」枠未。
「奴の鼓膜でも破れれば-----。
奴も嫌がって逃げていくかも
知れないのだが」誰かが。
「怪獣の鼓膜も破れないような兵器しか
我々はもっていないのか」
全員-----ため息を。
まあその手の映画なら
それがパターンだし-----。
そうでなければ
ならないのだろうが。
現実にそのような事になるとは。
潜水艦が長魚雷を。
護衛艦もアスロックを。
アスロックはロケットを噴かし、空中を。
そしてパラシュートを開き
魚雷を海面へ。
その様子はテレビの画面が伝えている。
「あのあたりにいるのか」首相。
海上からでは
海中の様子はわからない。
着弾。命中。
その報告によるのみ。
深海における魚雷の炸裂により
海面がわずかに盛り上がる。
ガイグは迫りくる魚雷の群れに。
うるさげに。
全身が-----。
口からレーザーを。
魚雷が数発、吹き飛ぶ。
しかし数が多い。
命中は続く。
ガイグは構わず東京へ。
潜水艦を認めた。
潜水艦が魚雷を。
ガイグはレーザーを。
潜水艦が一瞬にして爆沈。
それも次々と。
「潜水艦隊が」
「全滅か」
がっくりと。
ガイグが浮上した。
数隻の護衛艦が対艦ミサイルを。
主砲を。
ガイグがレーザーを。
護衛艦が真っ二つに。
上部構造物が一瞬にして蒸発。
消し飛び。
次々に爆発していく。
「信じられん」海月海幕長。
対潜哨戒機が対艦ミサイルを。
魚雷を。
ガイグは空へ向けレーザーを。
対潜哨戒機も。
「-----」全員声もない。
ガイグは速度を上げ東京へ。
東京湾へと入った。
東京湾を歩きながら
川崎市を横浜のびり群をレーザーで。
地対艦ミサイルが数十発。
超音速対艦ミサイルも混ざっている。
しかしまったく。
東京湾岸のビルが
ガイグのレーザーにより薙ぎ倒される。
戦車が、自走砲がベイエリアに。
最新鋭戦車の120ミリ滑腔砲が
一斉に火を噴いた。
タングステン合金製の
装弾筒付翼安定徹甲弾《そうだんとうつき
よくあんていてっこうだん》がガイグへ。
しかし火花を散らしたのみ。
「あれでもダメか」陸堀首相。
「もう他には」陸幕長。
「かすり傷一つ付かないのでは-----」幕僚。
どうしようもない。
ガイグがレーザーを。
最新鋭の戦車が
一瞬にして蒸発。
自走砲が爆発。
「戦車が。
複合装甲でもダメなのか」
絞り出すような声で。
タングステン合金の分厚い板を
増加装甲として取り付けた戦車も
一瞬にして-----。
蒸発。
ガイグはベイエリアへ上陸。
「タングステン合金でも」
「他に何がある」
ありったけのタングステンを急遽かき集め、
一部の戦車に取り付けたのだが-----。
チタンは1600度あまりで融けるが、
タングステンの融解温度は3400度以上。
(チタン 融点 1667℃ 比重 4・5
タングステン 融点 3420℃ 比重 19・3)
されに晴海から台場へと。
レーザーによりビルは薙ぎ倒され。
その巨体により崩れ落ちる。
テレビで見慣れた
いつものキャスターがニュースを読み上げる。
中継映像だ。
さすがにスタジオからの映像は
入ってこない。
避難勧告が出ているためだ。
しかし一瞬。
映像が真っ黒に。
一般庶民にとりテレビの中の出来事は-----。
まるで別世界のようなものだが。
瞬間、何が起こったのか。
テレビの画面が次々に。
映像が受信できない旨を伝える
メッセージ画面に。
民放数社をモニターしていたモノだ。
「どうしたんだ」陸堀。
「テレビ局のビルが破壊されたようです。
それも数社同時に」
残ったモニターを食い入るように。
ガイグはレインボーブリッジを。
レーザーで。
さらにその巨体で破壊する。
海岸へ上陸。
田町、浜松の両駅をレーザーで。
そのまま芝公園に入った。
「ここも危険では」
「移動しましょう」
首相たちはヘリで
首相官邸を後に市ヶ谷へ。
空からは対地支援戦闘機がレーザー誘導爆弾を。
ガイグの頭部へ。
道路では戦車隊がガイグへ向け戦車砲を。
しかしガイグのレーザーにより
戦闘機は一機、また一機と。
戦車も次々に。
タングステン合金製の増加装甲も
一瞬にして蒸発していく。
ガイグが東京タワーに手を掛けた。
崩れ落ちる。
麻布から六本木へ。
北から西方向へ
なめるようにレーザーを。
ガイグは赤坂へ。
某官庁後を踏み潰し。
あたり一面火の海に。
青山から球技場を破壊し、
さらに競技場へ。
その間も自衛隊の攻撃は続いている。
空からは戦闘機。
陸からは対艦ミサイル。
重さ四十数キログラムの榴弾を撃つ
155ミリ中砲。
対戦車ミサイルが。
ガイグへ向け。
ガイグの姿は
その爆煙により全く見えなくなった。
それでも-----。
「もっと撃ちまくらせろ」陸幕長。
ガイグは西へ方向を変えた。
逃げ遅れた人々がレーザーにより。
原宿が渋谷駅が火の海に。
代々木競技場までもが。
ガイグは-----へ。
ビルが。
ガイグの巨体がそのビルにめり込んだ。
ビルは一瞬にして崩れ墜ちる。
中には逃げ遅れた人々が。
外へ投げ出される。
ガイグはそこから北へと。
何かを見つけたのか。
代々木公園を横切り、
代々木から新宿区へ。
西新宿へ。
「市ヶ谷も危険か」
ヘリの中で陸堀首相は。
「どういうつもりだ」
「眼につくビルは
すべて破壊するつもりでしょうか」雪川統幕議長。
「奴の大きさから考えて-----
東京の都市にしても
400メートルトラックの競技場の中に
ミニチュアのビルが林立しているに
すぎないでしょうし」
「我々から考えれば広範囲だが。
ガイグにすればそれほどでもないわけか」
怪獣の着ぐるみにでも入って
ミニチュアのビルを壊した経験がないため、
その感覚は分からない。
その手のキワモノ映画では
そういう感覚で都市を壊しているのだろうか。
「そういう事か」
ガイグは都庁へ。
レーザーを。
都庁が。
他の高層ビル群が崩れ墜ちる。
残り少なくなった戦車が道路を。
旧式の105ミリの戦車だ。
105ミリ装弾筒付徹甲弾を。
「あれでは全く」
一瞬にしてガイグのレーザーで。
西新宿はすでに廃墟のよう。
いや、西新宿だけではなく
ガイグの通過した跡はレーザーにより。
その巨大な身体による。
足による破壊のために。
溶岩の流れたような跡は
レーザーによるものだ。
ガイグのレーザーは地面さえも
溶岩の海と化す。
ガイグは東へ向きを。
ガイグは新宿駅を。
川田町から市ヶ谷へ。
そこにある公共施設を踏み潰し
千代田区へ入った。
「市ヶ谷が」陸幕長。
「また引っ越しか」
「-----」防衛大臣。
ヘリは-----。
ガイグは五番町から四番町。
麹町、隼町。
市民劇場が火の海に。
空自の爆弾が。
残り少なくなった陸自の地対艦ミサイルが
ガイグへ命中。
例の超音速ミサイルも含まれている。
戦艦大和の主砲の1・5倍というモノだ。
むなしく炸裂を繰り返している。
ガイグはレーザーを。
某ビルが図書館がなぎ倒される。
国会議事堂に足を掛けた。
国会議事堂が踏み潰される。
さらに霞が関へ。
ビルをレーザーで。
一面火の海。
地面は煮えたぎり。
そこからガイグは東へ。
「首相。わかりました」陸幕長。
「何が」
「いえ、なぜガイグが
あのような妙な動きをしているかがです」
「-----」茫然自失の首相には。
一瞬何を言われているのか。
「ザイドです。
ザイドが東京の地下を。
それを追っているようです」
「ザイドが」枠未。
今までザイドが地下深くもぐり過ぎていたため
見失ってしまっていたのだ。
それが地震計により-----ようやく。
ガイグは日比谷公園から有楽町。
そして中央区へ。
銀座へ。
東京駅がレーザーにより。
そして築地へ。
ガイグは急に北へ。
「ザイドが地上へ現れます」
気象庁の地震計による情報を。
地震速報のようなものだ。
震源はすぐに出る。
ガイグは京橋から日本橋へ。
その巨体でビルを街を押し倒し、
レーザーで火の、溶岩の海と化しながら
北へと向かった。