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真夜中の蝶

作者: 蜜柑

それはとても静かな夜だった。

満月が冴えざえと輝いて、遠くに虫の声が聞こえたのを覚えている。

一人でいることに慣れきった生活。これからも何も変わらないだろう。そう思って、淡々と生きていた。

ただ、全てを諦めてしまったわけではないけれど。

この言いようもない孤独は、終わらないと思っていた。誰にも打ち明けることなく。

それなりに楽しくて、悲しいこともある毎日。ありあまる若さだけが、空まわりしていたのかもしれない。

何かをしたいけれど、何をしたいのかが明確にならなくて。現実逃避の「あの世界」に逃げていた。


ふと、気づいた。

いるはずのない、青白い美しい蝶があらわれ、僕の右手に止まった。

なぜだか、古くからの友達に会ったみたいな懐かしい気持ちになった。

誰だったかな。思いだせない、なのに。

「久しぶりだね」

自分でも驚いた。なぜこんな言葉をかけたのか。

こんな不思議なことは初めてなのに、とても安らいだ気分なのだ。この蝶を見つめていると、誰かの笑顔が浮かんでくる。

これは誰だっただろう。僕は知っているはずなのに。

双子のように分かり合えた、大切なあの。


よく見れば蝶の羽は藍色をしていて、ひらひらと動くたびに全体が白く光る。発光しているのだろうかと、ぼんやり考えていた。


それから何時間たったのか。外の音も一層静かになって、僕は眠っていたらしい。

夢の中で藍色の魂をした女の子が微笑んでいた。乳白色の目に見えない優しい力に守護されているから、きっと大丈夫だろうと思った。そこで目が覚めた。


目覚めると、蝶は僕の周りを飛んでいた。右手に止まったときは命を感じたのに、時々身体が透けている。消えそうなのに、それでもいいと僕は思った。

この美しい蝶は、きっと誰にも見えないだろう。僕は一人きりで、それはこれからも変わらないのに。

何かが変わった夜だった。それは、この蝶という希望を見たからだろうか。

この世のどこかに、彼女が生まれてきたのだ。藍色の星から、僕のいる世界に来たのだ。


君はこの世界をどう見るのだろう。どう生きていくのだろう。


早くここまでおいで。僕は先に生まれたけれど、今から再スタートする。日々の雑事で忘却してしまった、大切な仕事を終えなくては。

それを思いだせるために、蝶は現れてくれたんだね。

君の先輩として、恥じないように生きるよ。

だから、待っている。再会する日を楽しみにしているよ。


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