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プロローグ

2/14~2/21までの、短期集中連載です。

お楽しみいただけると幸いです。

 ベッドの上で横たわる男性の傍らに、麻由良まゆらは立った。

 未だ若いその男の腹には、半分ほど赤く染まった包帯がぐるぐると巻かれている。その痛々しい姿に、麻由良は顔を歪めた。

「今、助けるからね」

 麻由良はそう囁くと、彼の腹に右手をそっと添える。それだけで痛みがあるらしく、男が呻いた。

 麻由良は目を瞑ると、静かに息を整える。左手を自分の胸の前で握り込み、強く祈った。


 ──どうか、この人の怪我が、治りますように。


 風もないのに、麻由良の長い黒髪がふわりと舞った。麻由良の身体が柔らかい光に包まれる。

 少しずつ強くなったその温かい光は、男をも包み込んだ。

 二人を包む光が、まるで月のように輝き辺りを照らす。

 周囲で見守る人々は、誰一人として動かない。皆、事の行方を固唾を飲んで見守っていた。

 しばらくの後、光がだんだんと弱くなり、淡くなり、やがて、消えた。


 麻由良が男を見下ろすと、男の表情は和らいだものになっていた。

「う……」

 男が呻き、薄らと目を開ける。

「ここは…? オレは……確か、崖が崩れてきて……」

「もう、大丈夫。安心して」

 麻由良は、状況を把握できずに辺りを見回す男に優しく声をかけ、微笑んだ。

「おぉ……」

「治った……!」

「あの怪我が」

「さすが聖女様だ」

「ありがたや」

「女神のご加護だ」

「聖女様だ……!!」

 周囲がざわざわと騒ぎ始める。

 麻由良はそれに応えるようにゆっくりと振り返り、微笑む。

 その直後、ふっと気を失って崩れ落ちた麻由良を、傍らにいたアッシュブロンドの髪を持つ精悍な顔つきの男が飛び出し、抱き留めた。


   * * *


 笠原かさはら麻由良まゆらが異世界へと迷い込んで、そろそろ二年が経とうとしていた。

本日19時にもう一話更新します。

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