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過保護ファンタジー

何となく思いついたので書きなぐり&垂れ流し。

暇つぶしにでもどうぞ。

剣と魔法なファンタジー世界。

モンスターにドラゴン。そんな危ない奴らが世界中を跋扈しており、それを騎士や魔法使い、そして冒険者たちが倒して生きていくおとぎ話の世界。


俺はそんな話が載った本が大好きだった。

暇さえあれば読み、自分がこの世界に行ったらどう生きようかと夢想もした。

我ながら幼稚とも思う。だがこの思いは大人になってからも色あせる事はなかった。

だからだろうか、ちょっとした事故に巻き込まれて命を落とす瞬間に思った事が家族や友人の事では無く、「来世は物語のような冒険生活をしたいなぁ」というなんとも薄情なものになってしまったのは。


実際にそんなことはあり得ない。

そんな事は重々解っていた。

だが、それでも願わずにはいられなかったほどに、俺の憧れは強かった。


ゆえに、死んで無くなったと思っていた意識が覚醒し、しじがまったく自分の知らない場所だと解ったときはとても驚いた。

見知らぬ若い女に抱き上げられあやされている時に、自身の肉体が赤ちゃんのソレに変わっていると知った時は戸惑った。

だがそんな驚きと戸惑いも、ふと見えた全身甲冑の騎士や魔法と思わしき行いで部屋を明るくするトンガリ帽子の獣人を見た時に湧き上がった喜びで一瞬に消し飛んだ。


そう、俺は夢にまで見た剣と魔法の世界に生まれ変わっていたのだ。

ぁあ、神よ。ありがとうございます。


……と、この時はただただ誰とも言えない存在に感謝をしていた。

これで俺も冒険ができると。

物語のような大冒険を絶対に繰り広げてやると。


ただ、実際はそう上手くいかなかったけどね。


本当、世の中、ままならないよなぁ……。





  ・ ・ ・ 





「坊ちゃま! また剣なんて危ないものを持ち出して。万が一怪我でもしたらどうするのですか!!」


「げ、見つかった……。」


日が丁度転変に差し掛かった時刻。

使用人も含め、家中の人たちが昼食に差し掛かった頃合い。

その時刻を狙い、兵舎の倉庫からこっそりとかっぱらっておいたお古の剣を担いで屋敷の裏手に回ろうとしていた所をメイドさんに見つかった。

くっそ、見回りに一人だけ飯の時間ずらしたのが居たか。


「まったく、この家の大切な男子である坊ちゃまがどうして剣なんて振ろうとするのです。そういった荒事は家臣団に任せておけばいいのです!」


「いや、だって憧れるじゃん。剣とか魔法でモンスターをズババーってさ……。」


この世界に転生してはや7年。

生まれた家も大きな力を持った地方領主という事もあって不自由無く暮らせたのは実に幸せなことだった。

だが、少々窮屈なのがなぁ……。

個人的には剣と魔法で大冒険をしたいのに何かあると訓練すら止められてしまう。

ははは、跡継ぎ様は大事にされちゃってそんな機会ないってのも解るから仕方がないかー。ははははは――……


「それに、隣の領地の跡継ぎの子は凄い剣が上手で家臣団引き連れてBランクのモンスターを討伐したって……。なら俺も頑張りたいと……。」


「そ・れ・は!! 隣の領主の子が『女性』だからですっ! 坊ちゃまは希少な『男性』なのですからそんな事をする必要はないのです! 必要なのは歌に踊りに礼儀作法です!」


――はははは、は……はぁ。

またこれだ。

これのせいで俺の輝かしい大冒険ライフがぁ! どうなってるだよこの世界ぃ!!


……おかしいと気が付いたのは生まれて結構経ってからだ。

身の回りの世話をしてくれるメイドさん達はともかく、全身甲冑を着込んでいた騎士様から料理人、館に出入りする商人や他の地の領主に到るまで全員女性だったのだ。

あれ、男は? と思ってから意識して探すようになったものの、今まで見かけた事はたったの2度のみ。

教会での祝福と王城への挨拶だ。

異様。これはまさしく異常でとんでもない事。

そう、この世界。男性が滅茶苦茶少なくて貴重な存在として扱われる世界だったのである。

しかもそれに伴ってか男女間の仕事の役割や扱われ方も文化レベルで変わっており、「女は外で狩りに。男は家で他の女に世話されながら待つ。」といった感じになっているのだ。


もう訳わからないよね?


「坊ちゃまは他の男性と違い、女性を見下さずに対等に接してくれる貴重なお方。私のような言葉使いは本来なら男性にした時点で物理的に首が飛ぶのに許してもらっているのですから……。」


「いや、それは言いすぎじゃ……。それに貴方は俺を子供のころからサポートしてくれている大切な侍女衆の一人なんだ。感謝こそすれ見下すだ罰するだなんて……。」


「あぁ、その緩い認識がまた危うい! 正直、冒険したいとか言うその無理無茶無謀な考えよりも危険です! そんなのではこれから先通うことになる国立の学校で獣のような女どもに……!!」


「そ、そんなに危ないならなおさら剣と魔法をだね。」


「駄目です!! その玉のような肌に万が一跡が残ったらどうするのですか!? 我らメイド隊と奥様が磨いてきた絶世の美しさに傷だなんて……考えただけで!!」


あー、あー……。

大切に思ってくれるのは嬉しいけど、やっぱり窮屈だよ、これ。

俺は今回の訓練もしょうがなく諦める事にし、剣をメイドさんに渋々渡す。

流石に領主の子として生まれたのだから冒険者とかは無理だと解っているさ。

だけど兵を率いてモンスターを倒すとかいう方向の冒険もあるんだしそっちに夢見たっていいじゃん。

なんだよ、男とか女とか。

そんなちっぽけな事で俺の憧れと夢は妨げる事なんて無理だかんね!


メイドさんに抱きかかえられて屋敷に連れ戻されながら、俺は心に固く誓う。

絶対に冒険してやる。絶対にだ! と……。








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