僕のベッドは納屋でした。
僕のベッドは納屋でした。
ええ、まあ、わかっていましたけどね。
これが、異世界ファンタジー。現代っ子、初体験。
まあ、どこでも寝られるのが身上ですのでね。気がついたら、草原の中で寝てるって荒技を体感した身ですからね。
よくよく考えると、何で起きなかったのか、とか凄い状況だし……。
ダニロさんに簡単な晩御飯?を貰い。寝床に案内され、簡易的なベッドもどきを作り寝転がる事数分。
一人でゆっくり出来る状況になると、気分がしんみりしてくる状況です。
晩飯?ええ、ご他聞に漏れず、黒くて硬い保存用のパンによくわからないドロリとしたスープ浸して食べましたよ。
これがね、硬くてボソボソしてるんだけど、今の生命線だと思うと凄く美味かった。
これが俺の大好きな数々のラノベなら、食料改善とか、なんか新しい料理作ったりとか出来るんだろうけどね。
……俺には無理です。助けてグー○ル先生!!
でも、本当に何ができるのか。どうすりゃいいのか、考えないと。
この村に居つくってのもひとつの選択肢か?いやでもどうせならもっと冒険してみるってのも手だろう。
精霊様?見たいなのが、信仰の対象のみなのか、本当に存在するのか。
でも、ダニロさんの口ぶりじゃあ、本当にいる事前提で話をしてた気がするし……。
魔法、とかあれば覚えてみたい。うん、これは重要課題だ。
あと、出会った時の弓矢?弓術?も凄かった。
俺がヌルヌルした現代から来たから、見慣れなくて焦ってたってのを含めて考えても、あれは凄かった気がする。
とりあえず、明日はダニロさんについてまわるっぽいから、そこで色々聞いて…みよう……。
◇
「おい、起きろマサト。ほら、水汲みに行くぞ!」
「……うぁ?……水汲み?」
いつの間にか、寝ていたようだ。身体が痛い。柔らかい布団プリーズ。
ほぼ地面にごろ寝したからか、どうにも疲れが抜けてない気がする。
しかしもう少しこう、異世界2日目だし、寝ぼけるとかしたかった気がするけども。気が張ってて、あんまり寝れていないんだろうなって思う。
しかし、ここで頑張って。状況を好転させねば!よし、頑張ろう!!
「よし、今日から当分の間のお前の仕事を説明しとく。朝起きたら、先ずはこの瓶に水を汲んでおけ。
正直、これが一番して欲しい事だ。水を汲みに行く場所は、今から教えよう。そんなに遠くないから、体力のないお前でも何とかなるだろう。ついでに、この村でも男手が足りてない家があるから、そこの水瓶にも頼む。あとは、そうだな――とりあえず、水汲みの場所に行きながら説明しようか……」
水汲みできる場所に案内されながら、説明を受ける。
平たく言うと、どうやらダニロさんは俺をこの村の雑用として使おうと云うことらしい。
ダニロさん自身は、昨日の森の中の見回りや別の場所での狩りなんかを日々行っているらしい。
本来は、弟子みたいなポジションのクルトさんて人がいてその人が行っているそうだ。
現在は、街にこの村で採れた毛皮だのなんだのを売りに行ってて、一ヶ月くらいは戻らないそうだ。
このマルガ村?の若い人たちが数人で出払っているから、雑用としての人手が不足がちだったらしい。
なるほど。男手がいない間に、俺がするりとこの村に入り込み、人気をげっちゅうする作戦か……頑張ろう。
「わかりました。なにが出来るか分かりませんが。雑用兼御用聞きとして頑張りましょう!」
「おう、その意気で頑張れ。なんだかんだで、困ってる婆さん連中もいるだろうから、お前から声かけてやってくれ」
水瓶に水を汲み、昨日の晩とほぼ変わらないメニューの朝食を食べ。
ダニロさんに今日一日の予定を聞く。
ひとまず、今日は森の中に入ったり、狩りにでる予定はないそうだ。
今のうちに個々に村の人たちに挨拶をすませておけ、との事だったので、そうする事にする。
あ、あと、服と靴?を借りた。サイズが若干違う気がするがこればっかりは仕方ない。
でもやっと、パンツ一丁から卒業だ。
何より、布だけど靴があるのがものすごくありがたい。靴って云うよりはサンダル+布って感じだけど。
朝食を食べながら説明の続きを受けた後、朝早い時間帯なら村の共同水場(水瓶に水を汲みに行った場所)で、村の女性達が洗濯等を始めているから、先ずは挨拶に行ってみてはどうか、とダニロさんに云われたので、素直に従うことにする。
でもね、いきなりハードル高いよね。
いや、いきなり村の女性人に声掛けられるほどに、僕ちゃんリアル充実してませんでしたからね。
むしろ人見知りする方ですからね。……ヤバイ、どうしよう。
ソロリソロリと、村の共同水場に足を運びます。
ああああ、ホントどうしよう。このまま行くか、勢いで声かけるか?いやでもファンタジーだし異世界だし。
なんか俺の知らない文化とかあったらどうしよう。
いや、男は度胸!異世界補正で俺もちょっとだけ強気になった、はず…だから、いける、はず!
共同水場に集まってるご婦人方に意を決して近づいて行きます。
よし、話掛けるぞ。先ずはおはようございます、からだ。
そんでもって、今日からお世話になります。雑用とか男手が必要なことがあれば、何でも手伝いますんで気軽に声かけてください。
普段はたぶんダニロさんについて回ってますんで。よろしくお願いします……だ。
あ、でもなんかこう、何人かこっちをチラチラと見てる気がする。
いや、こっちから話しかけると決めた以上、このまま行こう。男は度胸。男は度胸。
「あ、あの!おは――「あー!奴隷のお兄ちゃん!!」……よ、どうも、奴隷じゃないですけど、おはようございます」
うおーん、被ったよ。俺、奴隷じゃないよ。ちびっ子マジかよ……。
此方から話しかけようと意を決した出鼻を挫かれたけど、ご婦人方の視線が一気に此方に向きました。
頑張れ俺、続けろ俺!
「あ、あのおはよう…ございます」
語尾がちっちゃくなる自分、凄く、情けない。帰りたい。
「はいよ、おはようさん。アンタ、ダニロさんが面倒見るって行ってた他所もんだったね。どうしたんだい?」
ご婦人方の中心にいた、ちょっと恰幅のいいおばさんがそう答えてくれる。
ここだ!ここで畳み掛けるんだ!!
「あ、はい。昨日からお世話になってます。マサトって云います。当面、この村に置いてもらう事になりまして……。
ダニロさんに雑用とか、男手が必要なことがあれば手伝うように云われてますんで、何かあれば、是非……お願いします」
「なるほどねえ。そりゃ助かるね。今は男手が足りてないから、なんでも手伝ってくれるなら大助かりさ。色々とよろしく頼むよ」
「あ、はい。よろしくお願いします!」
許された!!俺は今、許されたよ!!これで、あとは頑張ろう。何はともあれ頑張ろう!!
なんかこのおばちゃん、凄くいい人な気がする。
この人に従ってれば、まず間違いない。BOSS、俺一生ついて行きます!
「ああ、頑張りな。アンタの頑張り次第だよ」
この後、直ぐには特に手伝うことは無い、との事だったので。
一旦、ダニロさんのところに戻り話をする。
まあ、後から聞いた話だけど、あらかじめ話を通しておいてくれたらしい。ダニロさん本気素敵!
俺に直接話をしてくれたおばちゃんは、昨日の村長の奥さんでハンナさんって云うらしい。
ちょっと恰幅が良過ぎるのと、年齢が上だけど、今なら俺、抱かれてもいい気がする。むしろ大好きです。
そのあとはダニロさんについて、雑用したり、俺の体力がなさ過ぎるのを先ずはなんとかしろって話になりました。
まあ、水瓶の水汲みとか森歩きを積極的についてって、体力はなんとかするって方向になりました。
あと、狩りにも着いて行きたいって云ったんだけど、素人は邪魔なだけだからそれはダメだって云われました。
まあ、そりゃそうだよねー…。