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どれくらいモフモフしていただろうか。

どれくらいモフモフしていただろうか。

木陰に腰を下ろしてウサギをモフる。なんかこうしてみると角もいいアクセントになってるのではないだろうか。

モフカッコいい!モフモフモフ……いかん。考えたくない現実から逃げ出してる場合じゃない。


この謎の状態を脱するべく動こう。このまま夜になるとか洒落にならない。

なんだか腹も減ってきた気もするし。


よし、このウサギを非常食兼旅の仲間にしようそうしよう。

非常食とかいってるけども、ウサギなんて捌けないし。ネタとしても痛いだけかもだけど。


しかしこのつぶらな瞳にスンスンと鼻をひくつかせて擦り寄ってくる感じ。イイネ!


そんなことを考えつつ、ウサギを抱いたまま移動することにする。

別段嫌がってないし、連れてってもいいよ、ね。

ウサギの生態系とかよくわかんないけど、まあファンタジーだし。弱肉強食だし。


抱っこしたままの状態で、さぐりさぐり森の中に入っていく。

しかしあれだね。このモフモフシャツの中に入れたら、もっとモフモフするんじゃないだろうか。


シャツの中からモフモフ……良いかも知れない。



……最高でした。ちょうど頭の部分がシャツの首の部分から出てる状態。

ウサギ合体。こう、肌にモフモフした毛が当たって、なんか凄い。もの凄い。



……。


……こんなことしてる場合じゃないのはわかってる。

こんな事してても現状どうなるもんでもない。


でもね、森の中ってダメだわ。引き返そう。

幻想的なのは良い、でもなんていうんだろう。裸足で苔むした地面歩くのって不安しか沸いてこないわ。

あと木、デカいって。

これあれだ、ファンタジーの森だわ。


俺が名前つけていいなら、鎮護の森とかそういう名前付けそうだわ。

……この先に湖とか神殿跡とかあって、伝説のチートとか刺さってて俺様チート伝説爆誕!!


とか、ないかな、……ないか。


そろそろ現状を打開できるなにかがないかなーって思ってるときでした。


「動くな!」


言葉とともに、むしろ言葉より早く足元にヒュッ、スタンッと何かが……矢ですねコレ。

が刺さります。うおお、怖ぇぇ。


動かないようにしつつ両手を挙げ、頭だけでも少し動かしつつ周囲を見回す。

すると気付かなかったけど、右側奥?の変からガサガサと人が出てくる。


そこには目を奪われるようなこの世のモノとは思えないまるで精緻な人形のような美少女エルフ……ではなくて、顔にすんごい傷がある厳ついおっさんでした。


なにコレ、怖い。


「動くなと云ったぞ。お前は何だ?」


思わず、モフモフ合体してたウサギをボトっと下に落としてしまう俺。

ウサギが逃げ出すかと思ったけど、そのまま足元でスンスンと匂い嗅いでるのか逃げ出す様子はない。


コイツ、本当に癒し系だよ。

キミがいてくれれば俺、このおっさんと向き合えるよ。


「……おい、聞いてるのか?見たところ人族のようだが?ここらじゃ見ない格好だな。どこのもんだ?」


「あ、え。いやお―ー僕は決して怪しいものではなくてですね。気がついたら、この近くにいまして。

たぶん、なにか……すごいなにかがあったんだと思うんですが、正直記憶がさっぱりでして……」


「……お前みたいなのを、怪しいと云うんだと思うがな。まあいい。見たところ追いはぎにでもあったか逃亡してきた奴隷だろう。そのまま動くなよ。この森の中じゃあ殺傷は出来んからな。ついて来い!」


必死の言い訳が通じるはずもなく。

ノシノシと近づいてくるおっさん。ついて来いって云ってる割にその手に持ってる縄はなんだろう。

縛られるのかな?そりゃ、そうだよね怪しいヤツをそのままついて来いってのも変だもんね。


「いや、俺奴隷じゃないっス。追いはぎ……そ、そう追いはぎに会いまして!」


「ふん、この辺りに追いはぎが出る訳がなかろう。この辺りにで悪さをしようものなら精霊様のお怒りに触れてその場で真っ黒焦げじゃろ。この嘘吐きが!!」


やべぇ、めっちゃカマ掛けられてた。どうする。正直に話をするにしてもこっちも状況が分かってない状況なのにどうしようもない。どうすれば……。


「や、あの!俺、本当に怪しいモノじゃなくて!状況が俺も分かってなくて!むしろここはどこなのか、俺はどうしてここにいるのか。や、まあこの森に入ったのは自分の意思なんですけど!このウサギは、俺の癒しなんですけど悪いヤツじゃなくて寧ろコイツのおかげで俺はパニックになってなくって!!」


「……現状どう見ても取り乱しておるようにしか見えんが……。まあいい。別に殺したりはせん。ひとまず、わしらの集落まで来い。ただし、まだ身元がわからん以上は縛って連れて行かせてもらうぞ」


一瞬飽きれたような顔になりつつ、すこしだけやさしい口調になるおっさん。

あれ、この人意外にいい人かも?縛られたけど。


「あ、あの、このウサギは……」


足元で静かにしているウサギを目線で指して説明する。

この癒しはたぶん、今の俺の最後の砦。なんていうかコイツがいないとキツイ、気がする。


「ダメだ。この森の中の生き物は全て精霊様のモノだ。ワシ等の意思によっては勝手は出来ん。残念かもしれんが、連れて行くことは出来ん。むしろ連れて行くならお前を密猟者として精霊様に突き出さねばならん」


「…あ、そうですか……わかりました」


さらば俺の癒し。正直、すんごい辛いけども。こう、諭されるように優しく云われると、折角向けられたちょっとばかしの好意?を無碍には出来ません。


所詮は、獣と人間よ。キミと俺はこういう運命だったんだろう。

……ホントにすまん、ウサギ。


自分で勝手に感傷に浸ってるだけなんだけど、最後だろうこのウサギにしゃがみ込んでラストモフモフをする。ウサギのほうも分かっているのかただの条件反射か、此方に擦り寄ってくる。


嗚呼、愛しきウサギよ……。俺は今日からウサギ愛好家としてキミを心に刻もう。

ウサギウサギ、愛しきウサギ。


「驚いた、角ウサギが懐くなんて、なかなかないぞ。お前さん、本当に怪しいヤツだな」


笑いながら、俺を後ろ手で縛るおっさん。いや、たぶん少しは信頼?してくれてるんだと思うけど。


「よし、じゃあ、歩き難いかも知れんがついて来い。こっちだ」


どうみても、犯人が連行されてる体制で歩き出すおっさん。

仕方ない、ここはついていくとしよう。少しでも情報を得て、この状況を改善できる方向に持っていかねば……。



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