プロローグ
――ひとつの大地が其処にはあった。
人や動植物、モンスターと呼ばれる異形。果ては精霊や神と呼ばれる高位生命体が住む世界。
神話と呼ばれる数々の寓話や御伽噺のような世界がそこにはあった。
私達の知る世界とは異なる価値観や法則で支配された世界。
――俗に云う、剣と魔法の世界である。
神々の時代・人の歴史の始まり……等、様々な時代を経てこの世界のは成り立っていた。
民族や種族での争乱があり。相容れないモノ同士が争うあう。
様々な大地の中で国が興り、滅亡する。
そんなどこにでもあるような毎日がこの世界にはあった。
世界が始まり幾星霜。
正確な歴史を振り返るほどの文明もない時代。
様々な種族間での争いが絶えず、未だ人類には未踏の大地が各地に存在する時代。
冒険者と呼ばれる存在が活躍する時代。
――そんな時代に、ひとつの事件が起こる。
いつの時代の誰が使ったのかも分からないずっとずっと前の魔法に引っかかった一人の男がいた。
はるか昔に行われた召喚魔法である。
その魔法は、刻を越え、時代を越え、世界を越えた。
ただし、ものすんごく時間を越えすぎてしまい。その魔法を使ったであろうモノも覚えていない所の騒ぎではないくらいずっと昔。
幸か不幸か何の前置きも前振りもなく、召喚の対象は自宅で安眠を貪っていて、いきなり次元を越えるという摩訶不思議な現象に遭遇するという意識をしなくてすんだのだった。
まあ、要するに。
そのような経緯で、この物語は始まる訳だが。
ぶっちゃけ、そんなこと。本人の知る術のない事なのである。
これは、そんなひとりのおっさんが、この世界に定着するまでのお話なのである―…。