第四話 昔の、記憶。
遅くなりました。すみません。一、二話よりは、長いと思います。
異世界に行き来する日々が、ちょっとずつ楽しく感じている頃。ある異変が、起き始めた。内容は三つ…。一つは、夢に「息子を助けて…。」と不気味の悪い声が聞こえてくる。二つ目は、右手首の所が最近、ものすごく痛い。そして、三つ目……、
「お兄ちゃん。今日の晩ご飯は何?」
「っ!?」
妹が、俺のことを「お兄ちゃん」と呼び始めた。それ以外は、冷徹な声で今までどうりなのだが…怖い…ものすごく怖い。急にそんなふうに呼ばれ始めたら、怖いじゃんか!うれしいが、やめてほしい…。
「きょっ、今日は、ヂヂミだ。あと、餃子。」
「わかったわ。今日は、八時半だから。」
「了解。」
「行って来るわ。お兄ちゃん……。」
ひっ!なんか、振り返る瞬間が怖かったぞ!
「ガチャン。」
扉が閉まった後、俺はご飯の準備をし始めた。そういや、最近あっちに行ってないな。どうしているだろうか?試験やら何やらで、行けなかったからな。明日、行こう。試験休みだしっ。今日は、寝よう。うん。そうしよう。 俺は、ご飯を作りながら、そんなことを考えていた。
----------------------------------------
「もうっ!勇者様、なぜ来てくれないのでしょうか!?」
「落ち着いて、フェル姉さん。」
「そうですよ。もっと、落ち着きなさい。フェル!」
「ううっ…。」
フェルは、顔がパンパンに膨れ上がり真っ赤だった。だが、二人が落ち着けと言ってくれたお掛けで、普通の顔になりかけたが、すぐ、涙目になった。
「ひっく、うっううう。」
「ほんと、何であの勇者が好きになったのか、わからないわ。どこにでもいる、普通の人じゃない。元は。」
「好きになってなんか、ないですっ!」
「はいはい。ナトリー姉さん、わかりながら、からかわない。」
「でも、本当のことでしょう?フェルって、好きな人に一定時間会えないと、こうやって泣くでしょう?」
「そんなことありません!私は、泣いてません!!」
「……はぁ。(いつになったら…。)」
この三人は、相変わらずである。だが、勇者が来ていないからか、少し不安なようだ。
----------------------------------------
(しかし、あの時は、びびったなあ。ほんと。)
あの時とゆうのは、竜帝剣ラピス・ラズリをもらった、翌日のこと。朝早くに、旧校舎に行った日だ。教室に、入り席に座ると和輝が声をかけてきた。
『なあ、泉。』
『うん?どうした?』
『お前、何でリストバンドしてんだ?』
『えっ!?いっいや。これは……。』
『泉?』
なんとか、誤魔化して難を逃れたが、いつかばれるだろうなあ…まあその時はそのときか。俺は、いろいろなことを思い出しながら、眠りに落ちた。
次の朝、雨が降っていた。今は、五月下旬。もうすぐ六月だ。そういや、あっちは雨が降っているのだろうか?そんなことを思いながら、妹に書置きをした。「出かけます。帰ってくるのは、明後日ぐらいです。ごはんは、冷蔵庫に入ってますが、なくなったらコンビニで買うかしてください。 泉」と書いた。まあ、あやふやなところがあるが、大丈夫だろう。これで、明後日までは、あっちに滞在できる。数日、あっちに行かなかったからなあ。俺は準備をして、出かけた。
「行ってきます。」
----------------------------------------
「おはようございます。」
「あっ!勇者様!!」
「ええっ!?」
急に、フェルが走ってきた。ありえないスピードだ。っといっても、人間の限界スピードぐらいだ。それを、息が少し切れるぐらいなんだから、すごい。
「今まで、何で来てくれなかったんですか!?」
「えっ?いやっ、中間試験だったんだ。」
「…中間試験?学校に行っているのですか?勇者様。」
「うん。そんなんだ。だから仕方が無くて……。」
「そうですか。そのようなら、許してあげます。」
ふう。危ない。なぜか、怖かった。妹には劣るけど…。ってか、何を許すんだ。最近こっちに来ていない事かな。
「さっ、城へ。皆が、待ってます。」
「あっあの、一つ聞いていいか?」
「なんですか?勇者様?」
「魔王退治は、どうなったんだ?」
「ああっ、それでしたら、大丈夫ですよ。魔王は、行方不明ですから。」
「えっ?そうなの?」
「はいっ。ですから、しばらく平和ですよ。」
なにっ!?勇者として呼ばれた意味なくなった!!ってか、妹!何、やってるんだ!?行方不明って……。どうしてるんだろう?
----------------------------------------
アルシアナ大陸。魔王城。
「魔王陛下は、どこに行かれた!?勇者が、召喚されたと言うのに!」
「まったくだ。やはり、あんな小娘を即位させるんじゃなかった!」
「見た目は小娘だが、魔力は我らより上。侮ってはいけぬ。」
「なんとしても見つけ出すのだ!」
魔王の家臣達が、怒りと不安をいり交えて、話し合っていた。そこに、魔王のメイドが口を挟んできた。
「家臣様たち、ここは、私が指揮をとらせて頂きます。」
「なんだと、お前ごときに、指揮などとれるか!」
「そうだ、いくら魔王陛下のお側にいるからといって、特別なわけ無いであろう!」
「それでは、力ずくでも、解らせてあげましょう……。私の力を!!」
一秒後、戦闘が始まった。四対一。後者に勝ち目が無いはずだが。数分後、横たわっていたのは、四人の家臣たち。勝ったのは、メイドのジェリスだった。
「ただの、メイドとは思ってはいけませんよ!…魔王様、どうかご無事で……。」
そのころ、魔王瑞希は…、
「ここね…。」
アルビア王国に、来ていた。
「必ず、勇者がいるかどうか、どんな人か突き止めてやるわ!」
と、言ってからアルビア王国の城門に向かった。だが怪しい格好をしていたため、門番に捕まったのであった。
----------------------------------------
「どうかしたんですか?勇者様?」
「えっ?…なんでもないよ。」
だって、緊張するよ。王族と朝食だもんなあ。こんなことなら、食べて来たらよかった。ナイフとフォークって、確か右がナイフで左が…。
「勇者様は、どんな暮らしをされているのですか?」
「えっ?多分、ここの人達と何ら変わりはないと思う。」
「私達と!?」
「ちっ違う!えっと、城下町の人達だよ。」
「勇者様は、平民なのですか?」
「…そうなるな。」
王族とかじゃないからな……。うん、あってる。
「へえ。平民なんですね。」
「ナトリーさん?」
俺は、一応皆をさん付けしている。年上には…あっあれ?フェルって確か、年上だよな。どうしよう。完璧に年下扱いしてた……。
「だから、王族の作法とか知らないのですね。」
「?」
だから?なにやら、知ってそうな口ぶりだよな。
「さっきから、一口も食べていませんじゃありませんか。」
「そうなんですか?勇者様?」
「えっ?それは、あまり空いてないからで……。」
なっ!?ばれてる!…じゃあ、ナイフとフォークの使い方がわからないのも、ばれてるんじゃ…、
「ばれてますよ。」
「なっ!?」
この人、心、読めるのか?もし本当なら、すげーな。
「私、読心術をちょっとかじった程度ですが、勇者様の表情や仕草を見ていればわかりますよ。」
「……すごいですね。」
「勇者様がわかりやすいのですよ。」
「うっ……。」
「クスクスッ。」
「ふっ、二人だけで盛り上がらないでください!!」
そんなこんなで、朝食は終了。その後フェルに食事は、自分の部屋に持ってきてもらうように頼んでおいた。昼の間で、剣の練習。相手は、フェル。弟君は強そうなので却下。だが、フェルも予想以上に強かった。
「いきますよ~!勇者様!」
「えっ!?いやっ!ちょっと!!」
朝見せた超早い足と、まだ不慣れそうに見える剣さばき。フェルは、強い。並みの兵士よりは。
「さすが、勇者様。これをかわすとは。」
「へっ?俺、何かやった?」
「してましたよっ!!私の一撃をかわしましたよね!!?」
「えっ?ごめんな。考え事してた。」
「勇者様!?」
やっぱりフェルは、からかいがいがある。でも、考え事してたのは、本当だから。
「フェルは、強いな。」
「そんなことないです。勇者様のほうが・・、」
「でもほら、かすったし・・・。」
「勇者様?どうされました?」
(あれ、変だな。かすっただけなのに。)
そう、思いながら、俺は倒れた。俺の名前を呼びながら、慌てるフェルが、見えた。
長い、夢を見た。
『なあ、泉。おれの友達になってよ。』
『いいよ。今日からおれは、お前の友達だ。』
『ありがとう。泉君。この子、友達いなかったの。』
『やめてよ。母さん。おれは、ラズリー。ラズって呼んで。』
『よろしく。ラズ!おれ、この世界が好きだよ!』
『おれも!!』
幼い頃の、記憶。その後、俺達はいろいろな所を走り回り、遊んだ。遊び疲れた後、俺達は草原の丘に寝転んだ。
『ねえ、おれたち、ずっとこうやって遊ぶのかな?』
『なあに、言ってるんだ!そうに決まってる。』
『うん、そうだよな。』
『だな!』
一緒に、笑い転げた。そこで、夢から覚めた。目を開けると、そこにフェルがいた。
「勇者様、大丈夫ですか?」
「フェルか。大丈夫だ。」
「そうですか。よかった。」
しばらく、沈黙が流れた。
「そういや、フェルってさっき俺のこと名前で呼んだだろ。」
「えっ!」
フェルが、びっくりした顔で俺を見た。
「聞こえてらしたのですね。」
「ああ。」
フェルの顔が赤くなっていく。そして、急に顔をふせた。それを、見ていた俺は自然と笑みがこぼれた。
「やっぱり、フェルって面白いな。」
「どういう意味ですか!?勇者様!」
フェルは、顔を膨らました。本当に面白いな。と、クスクス笑っていたら、また怒られた。……こんな風に、すごしていたのか?昔、この世界で。
「ラズリーか……。」
「えっ?今なんと?」
俺はそう、つぶやき寝た。…あとで、フェルに質問攻めにされたが、全部無視した。
読んでくださってありがとうございます。
設定
ラズリー:夢の中に出てきた、少年。詳細は不明。
この中の試験休みは六月下旬のことです。