第二話 俺の、物語。
第二話です。
「ど…どうしたんですか?勇者様?」
俺は、ひどく落ち込んでいた…。そのわけは、さっき聞いたことである。
『名前は、野ノ原 瑞希と言うらしいです。』
…そう。魔王の名前が、妹の名前なのだ。まだ、瑞希と言うらしいです。と言ってくれたら、希望が持てたかもしれない・・・のだが、名字まで丁寧に言ってくれた。
「………は……な…い。」
「今、なんと仰いましたか?」
「勝てるはずがないと言ったんだ!!!!!」
少女は耳を塞ぎながら、驚いていた。無理もない。勇者が魔王の名前を聞いた瞬間、弱気になったのだ。こんな勇者、世界初だろう・・・。
「…なぜ?」
「えっ?」
「なぜ、勝てないと仰るのです……か…?」
「!?」
そう言った少女の目から大粒の涙が、流れていた…。
「えっ?あっ…、えっ?」
「うううっ、どうっして?おやっさしい、勇者っ様だったら…。」
「ええ?あっちょっと!?」
女の子に、泣かれるのは初めてだ……。対応に困ってしまう…。よくある漫画の主人公達も、同じような場面に直面したとき、すごく困っていた気がした。…なるほど、こんな気持ちだったのか。
「ううっ、うわぁぁんんんんっ!」
「泣くなよっ!おいってば!?」
数分間続いた…。やっと泣き終わり、
「すみません…。お見苦しいところを…。」
「いやっ、いいんだ。俺も悪かった…。」
俺も、急に弱気になっったのが、いけなかった。よくよく考えれば、俺が瑞希を倒せば、今の立場逆転するんじゃないのか?下僕を卒業できるじゃないか!!そう思ったら、なぜか、やる気が出てきた。
「それじゃあ、気を取り直して、自己紹介とするかっ!」
「はいっ!」
少女の声が涙声から、はきはきした声へと変わっていた。
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「なんですって!?」
「はい。ですから、アルビア王国が勇者の召喚に成功しました。」
ここは、アルシアナ大陸。魔王軍の領地である。
「なんてこと…前魔王の時代は、勇者なんていなかったのに…。」
「どういたしましょう?魔王陛下。」
魔王陛下と呼ばれたその少女は、漆黒の暗闇のような髪と瞳、それに赤と黒の模様しかないドレス姿をしていた。そう彼女が、野ノ原 泉の妹であり、この世界の魔王。野ノ原 瑞希である。
「その勇者のところへ、リリを送りなさい。」
「しかし、勇者は召喚されたばかり。もっと下級悪魔のほうがよろしいかと…。」
「いいえ、勇者を甘く見てはだめ…。勇者として召喚されたのなら、私と同等か、それ以上の素質があるわ…。」
「魔王陛下がそう仰るのなら。」
そう言うと、使いの悪魔は、去っていった。すると、執事の悪魔がハーブティを持ち歩きよってきた。
「よろしいのですか?」
「何が?」
「瑞希様のお兄様かもしれないのでしょう?」
「その為に、実の兄を下僕扱いにしておいたのよ。抵抗しないために…できれば、戦いたくないわ…。」
「ふふっ。」
「何が面白いの?」
「やはり、瑞希様はお優しいのですね。とても魔王陛下には見えないですわ。」
「からかわないでっ。本当の気持ちよ…。」
「このことを、他の悪魔が聞いたら驚くでしょうね。魔王が、勇者と戦いたくないなんて。」
「勇者が、兄だったらの場合よっ!」
「はいはいっ。ふふっ。」
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「はっくしゅんっ!!」
「風邪ですか?」
「いんや。」
誰かか、俺の噂を!?…ベタすぎるな…。もしかして、悪寒?妹がすごく怒ってたりして!…いっ今、何時?
「五時か…っていつまでかかるんだ?そのアルなんとかって国…。」
「アルビア王国ですよっ!もうすぐですよ。それにあなたが、いるからなんかしれませんですけど、転移できなかったからこんなに、時間かかっているのですよ!」
少女は、顔を膨らませた…フグみたいにパンパンだ…。そういや、少女の名前は…、
「名前なんだっけ?」
「もう、また忘れたんですか!?」
「えっ?ん…ああ。」
「ひどいです!!聞かれるの、三回目ですよ!」
忘れているふりをしている俺である…。本当は、覚えている。
『俺は、泉だ。よろしくっ!』
『私は、フェルノーラ・アルビア。アルビア王国の第二王女です。』
『おっ、王女!?』
最初はびっくりしたが、勇者を呼び出すのだから王族で当然かと思い直した。王女だからと敬語にすべきかと思って話したが、王女はタメ口のままでいいと言ってくれた。やさしい…。妹とは大違いだ。
「んでさ、フェル。」
「覚えてるんじゃないですか!?」
「えっいや、ごめん…。」
「別にいいですよ。」
王女さんは、皆から「フェル」と呼ばれているらしい…。
「さっきの話だけど…、」
「別に、勇者様の所為じゃありませんよ。転移できなかったのは、何らかの理由があるんですよ、きっと!」
励ましてくれるなんてっ!いいやつっ!どうせならフェルが妹ならよかったのに!そんなこと考えてるうちに、着いてしまった。
「ほらっ、着きましたよっ!」
「すげー。」
俺が見たのは、シンデ〇ラ城よりでかいかもしれない城と、門から城門まで続く大通りで賑やかに騒いでる市場みたいな場所、噴水がある公園などがある、円形状の町だった。
「さっ、勇者様。行きましょっ!お父様が待っています。」
「えっ、あっはいっ!」
俺達は走り、門へ向かっていった。ここから、俺の、勇者としての物語が始まったのだ。
読んでくださって有難うございます。(*^0^*)




