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千の時 side蓬

 新の手の甲にあったのは、先ほどまで自分にあったはずの火傷に見えた―――。




 否。

 形も赤味も全て同じで、間違いなく私が負った火傷だ。

 ゆっくり視線を手から新に移せば、辛そうに歪んだ表情が視線を合わせる事を避けている。


「……新? これって……」

「聞かないでくれないか」


 逸らされた視線、拒絶の言葉。

 それら全てが私の考えた通りだと肯定させた。


「そんな事できる訳ないじゃんっ! これ私が負った火傷だよねっ!?」

「―――いや、俺のだ。少なくとも今は」


 かっと体の血が昇り、体に鳥肌が走る。

 俯いた視線を戻すように下から手を振り上げた。

 パンっと小気味良い音が店に響いた。

 驚いた眼がこちらを向く。


「ふざけんなっ!! 私が負った傷は私が治すっ! 例えそれが誰であろうと奪うのは許さないっ」


 体中が熱い。それでも鳥肌は一向に収まらない。

 興奮して一気にまくし立てた所為か、呼吸が荒くなる。

 驚きの表情でこちらを見ている新を睨みつける。



 その時、何故か前にもこんな事があった気がした。


 怒った私。

 驚いた視線。

 そこに零れる赤い……血。


 それらが断片的に脳内を過ぎる。

 あれはいつ? その視線は誰?


「蓬!?」


 くらっと目の前が暗くり、体が傾く。

 新が咄嗟に倒れそうな私を支えようと肩を抱いた。

 片手で許容量を超えている頭を抑え、次々と脳内を過ぎる、まるでTVの砂嵐の中にある様な映像に捕らわれた。




『……千っ!! 時千(とせ)!!』

『大……丈夫です……貴女に傷が残らないのならば』


 時千と呼ばれた少年が腕を押さえている。

 押さえている指の下から、ぽたりと落ち続ける血。


 パシッ!

【私】が少年の顔を打った。


『馬鹿っ! 私の傷は私のなのっ! だから時千が吸い取るのは許さないっ』

『それが俺の、……の役目』

『そんなの知らないっ!!』




「蓬!? おいっ! 蓬!しっかりしろ」

「あっ……」


 焦りの声と揺さぶられた体が現実へと引き戻す。

 今のは一体何だったのか。白昼夢?


「大丈夫か、蓬?」


 新に支えられたまま、新の顔を見上げた。

 先ほどの少年に似ている。これは偶然? それとも……。


「蓬?」


 心配気な顔でこちらを見ている新。

 その頬にそっと手を沿え答えた。


「大丈夫だよ。―――時千」

「っ!? なんでその名前を」


 「大丈夫だよ。新」と言ったつもりだった。

 口からでた名前は記憶の中だけの少年の名だったのに新は知っている。

 なんでって? それはこちらが聞きたいよ。

 彼は誰? そして新は何?

 混乱する思考は何も言葉に出来ない。

 戸惑うような新が問う。


「蓬……まさか……」


「蓬!?」


 ガランガランッ!!

 何もかもを壊すようなカウベルと共に颯が飛び込んできた。

 新から慌てて体を起し離れる。

 そんな一瞬も颯は見逃さず、眉を潜めた。


「―――何があった?」

「何も……ちょっと立ち眩みしたところを新が支えてくれたんだけど……やかん引っ掛けて火傷させちゃった」

「解った」


 こういう颯の行動は素早い。

 つかつかっと足早に近づいてくると以前のようにお姫様抱っこされ、居住スペースに続く入り口へと向かう。

 抵抗しても無駄なのは颯の表情から読み取れる。小さく諦めのため息を零し、大人しくその腕の中へ体を預けた。


「新、すぐ戻る。そこの氷で冷やしておいてくれ。そのまま帰られたら蓬も気にする」

「……解った。お言葉に甘えて借りるよ」


 ああ言われてしまえば帰りにくくなる。それを解ってて敢えて口にするんだから性質が悪い。

 機嫌が悪そうな表情を盗み見、一体いつから店の中を見てたのか気になったが触らぬ神になんとやら。

 ベッドに寝かされ、大人しく寝てろという言葉に従った。

 ずっと緊張していた体はすぐに意識を夢の彼方へと誘った。

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