非日常④
「確かに世界的に有名な奴らはこっち側の人間だ。例えば………そうだな、『法の書』を書いたといわれているアレイスタークロウリーや、奴から生まれた黄金系統の魔術結社をつくったウイリアム・ウェットスコット、『賢者の石』で有名なニコラスフラメルなどがいる。があっちの世界で有名な彼らもこっちの世界では落ちぶれもの。どこにでもあるようなありきたりのことしかできなかった。だからこそあちらの世界に出で行くことを選んだんだ。」
そんな話をしているうちに車はあるビルの前で停車した。
「まだ言ってなかったが、今日このビルに来たのはほかでもない、お前を『青』に入れるためだ。私と一緒に行動を続ける以上組織に入ってもらっていた方が何かと便利だ。書類を書いたりするだけならいいのだが、大掛かりな儀式が必要となってくるのでな。すまないが1時間ほどかかると思うが、まあ大丈夫だ。」
そういって希山さんは堂々とビルの中に入っていく。
どうやらこの会社にいる人は全部こちら側の人間らしい。ジーパンとTシャツといったとてもラフな格好で入ってきた俺たちを怪しんでいる様子はない。それになんとなくなのだが、こちら側のにおいというか、こちら側の雰囲気というか理解不能な力を感じる気がする。希山さんが受付で話を通すと俺はある1室に通された。そこでスーツを着た女性が持ってきた書類に目を通しながらどんどんと埋めていく。名前、服部 新。生年月日、19XX年7月14日。…
書類を埋めると希山さんとともにエレベーターに乗せられる。エレベーターが上昇を始める。液晶表示が通常ではありえないほどの速度で数値をたたき出す。すでに5分以上もものすごい速度で上がっていく。どこまで行くのか不安になってきたところでようやくエレベーターは上昇をやめ、鉄の重い扉が開いた。
ザザザザザザザッザザザッザザザッザザッザザザザッザ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
扉の先には海が広がっていた。今にも沈みそうな夕日が赤く燃え志津か波音が幻想的な世界を作り出している。海の上には水晶だろうか、透明な足場があり無限に広がっているように見える世界から均等な間隔で12本ある。そのうちの1本に俺たちはいた。足場の先には円形の面があり、そこには直径10メートルを超えるかというくらいの大きな水晶でできた傷一つない大きな玉があった。俺はその美しさに思わず言葉を失ってしまう。おそらくこちらに来る前の俺はこんなに美しい光景を見たことはないだろう。それほどまでにその光景はすさまじかった。
希山さんが中央に向かって歩き出したのでそれにならう。そこで目に入ったのが水晶の隣に立っていた1人の老人だった。老人の顔には醜いやけどがあり特に目のあたりの皮膚は周りと色が変わっている。俺ほどまでの傷を負っているのなら絶対に見ることはできないのだろう。そう思っていた。だがちがった。
「おお。久しぶりだな希山。確か前にあったのは半年ほど前にお前が弟子を連れてきたときだったかな?」