非日常③
それから数日後俺はめでたく退院したわけなのだが………。希山さんの赤いスポーツカーに乗せられて早くも2時間がたっていた。運転してもらっている希山さんには悪いのだが、そろそろ本気で疲れてきた。これでも俺は運動部に所属していたらしくとりあえず肉体的には大丈夫なのだが、精神的にとても疲れる。なんせ病院を出てから希山さんは一言もしゃべろうとしない。そんな無言が2時間も続いている。な、何かしゃべろう。
「そういえば希山さん。木山さんが言ってた『青』って説明まだでしたよね?」
「そうだったか……」
希山さんはめんどくさそうに答える。
「現在この第2面に到達しているのは、地球上でたった10万人ほどだ。そしてこっちの世界に来たものは基本的にどこかの組織に入るものだ。この世界を占めている5大組織の一つが『青』というわけだ。ちなみにそのほかには世界に完全な平穏が必要と考えている『白』。何をやってるかよくわからない『黒』。軍事力に力を注いでいる『赤』。そして完全な中立、沈黙をつづけている『緑』。この5つの組織以外にもギルドと呼ばれる100人以下の組織もあるし、組織に所属しないフリーと呼ばれる奴らもいる。だが組織に入れば、研究資金などの援助といった待遇があるので組織にはほとんどの人間がはいいているよ。」
話を聞いている間にどんどん車は進んでいく。
「もう気づいてるかもしれないが、ここはモンスターがうごめく未知の荒野があるわけでもなく、透明になれるマントなんてものもない。基本的に第1面つまり日常側の世界だ。組織は一般社会の中に紛れ込んでいる。たとえば『青』は国内シェア№1のメガネ会社なんだ。笑えるだろ。なんも知らない第1面の人間が払った金がこんな世界に行きついているなんて。」
彼女は皮肉気に笑っている。それが事実ならばものすごいことだ。
「それじゃあ、世界的に有名な魔術師たちってこちら側の人間ってことなんですか?」