非日常①
…………はずだった。あの殺気。あの男なら必ず俺を殺していたはずだ。けれども俺は生きている。あたりを見回すとそろそろ11時を少し過ぎようかという時計と日めくりカレンダー、そしてベッドとよくわからないが心拍数とかを計測する機械。どうやらここは、病院のようだ。よく見てみるとカレンダーは8月30日と書かれていた。誰かがいたずらでもしていない限り2日もねていたのだろうか?
カツン カツン
靴音がする。2日前の恐怖が鮮明に浮かんでくる。まるで俺の病室を目指しているかのようにこっちに重い足取りで向かってきた。音は次第に大きくなり確実に近づいてきていた。きた。音が止まる。やばい。このままでは殺されてしまう。扉が
ガラッと
音を立てて開いた。そこには女が立っていた。拍子抜けする。その女の顔をよくよく見るとすごい美人だ。長い黒髪を持ち明るい系の服を着ている。けれどもその瞳は冷たささえ感じさせるものだ。女は困惑する俺に向かい当たり前のように声をかける。
「目が覚めたの?まったく。なんだその顔は。こっちはいろいろと浪費して助けたというのに。」
いきなり目覚めたてのけが人に愚痴である。緊張の糸が一気に緩む。
「でそんな俺を助けてくれたのは誰なんですか?」
「ん……基希山律子。今は『第2面』にいるけれど実際は『第4面』くらいまでは行ってるかな?一応ここでは『青』の所属ってことになってる。年齢は秘密。こんなもんでいいかい?」
不思議ワード全開でそんなこと言われてもわかるわけがない。
「『第2面』?『青』?それってなんなんですか?」
「なに!?知らないのか?お前の父親はこっちの世界の住人だというのに。それも『世界の最下層』に最も近かったというあの男の息子がな。」彼女は皮肉気に笑いながら説明を続ける。
ってえ…………俺の父親が?こっちの世界の住人!?俺の父親は警察官だった。6年前俺が14歳の時にある事件で人質を守るために死んでしまった親父が…………。こうなったらとことん聞こう。女はポケットからある立体を取り出した。