日常①
『今日であの列車事故から早くも5年がた津ことになります。事故のあった○×駅では約5000人の人達 が祈りを捧げました。この事故では400人以上の死傷者や、数名の行方不明者をだしました。また◎▲電鉄による………』唐突にテレビは闇へと落ちる。谷中純生はため息をついた。スポーツニュースを見たかったのだがあいにく今日はこればっかりである。谷中純生。35歳。若くして警部まで昇進したが
顔がいかついわけでもなく、どちらかというと丸顔の男だ。彼の周りには缶ビールがいくつも転がっている。彼は5年前のことを思い出していた。彼はホームで待っていた。その日は楽しい日になるはずだった。彼にしては珍しく下見などもしていた。が………彼の思いは簡単に壊された。
燃え上がる列車。悲鳴。苦しみの声。燃え上がる人々。彼は何もできなかった。ただただ見ているだけしかできなかった。
まただ。また夢を見てしまった。5年前の出来事は今でも彼を苦しめ続けていた。どうやら昨日はそのまま寝てしまったらしい。起き上がって時計を見る。そろそろ家を出なければならない。でもコーヒーくらいは飲んでいきたい。結婚祝いにもらったコーヒーメーカーをかけ玄関に新聞を取りに行。やはり1面は列車事故の記事だった。彼は新聞を読もうと開ける。
ポトリ。
何かが落ちる。
深紅の封筒。