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始まり
「がらっ」という音で沈黙の世界は破られた。列車をつなぐ扉から誰かが入ってきた
といっても僕は背を向けているので見えない。振り向けない。まるで大きな手で体を抑えられた
かのように体は少しも動いてくれない。カツンカツンカツン誰かの靴音だけが近づくこと
それだけしかわからない。体中から嫌な汗が吹き出し体が震える。
「キミ、こっち側のにんげんだろ?」
誰かが話し出す。やたらと響く威圧感さえある声。間違いない。こいつとはかかわってはいけない。
男はこっちを無視して話し続ける。
「答えてもらわないと困る。僕にもやるべきことはたくさんあるんだ。キミがどうなろうと、
問題はない。これは組織の許可を得てやっているんだ。そんなわけで死んでくれ『魔術師』。」
巨大な音が起き僕の体は列車の窓ガラスを突き破りホームへと叩きつけられる。
肺の空気が一気に出され、意識が薄れていく。そんな中で目に飛び込んだのは、
男。 黒いスーツを着た男が笑っていた。
列車は炎を上げ燃え上がった。悲鳴、助けを求める声。そんな声を聞きながら僕は死んだ。