零
八月二八日。夏休みも終わりあんなにうるさかったセミの声が、
気がつくとしずかになっていた。天気予報でももう暑さの山は、越えた なんて言っている。夏休みにはしゃぎすぎたため、起きるのが少々つらい
今日も目覚ましがいつもの六時半に鳴り響いた。背伸びをするが、まだ眠い
あくびをしながら階段を下り、顔を洗い、なんかいろいろやり、いつもの時間
に家を出る。僕が通っているのは、電車で6駅ほど離れた駅から徒歩5分ほど
のところにある中の中ぐらいの成績の学校だ。駅に着くといつものように
たくさんの人であふれていた。
七時三十分発の急行に乗りこむ。同じ制服を着ているグループが目につく。
青い名札なのでたぶん後輩だろう。大きな声で昨日会ったバラエティーの話を
している。列車は大きな街へと向かい進み続ける。風景が住宅街からビル街へと
変わっていき列車のスピードが徐々に下がってくる。もうすぐ降りる駅だ。
列車がホームへと入っていく。停車する。………………………………………………
扉は開かない。音が消える。後輩たちの声や、隣の音漏れしていたはずの、男の
つけているイヤホンからも…………………無音が広がる………………………………
無音の世界が唐突に終わりを告げる。日常が消え非日常が始まる。