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俺、また馬に生まれました

俺、また馬に生まれました―― 障害3戦目

掲載日:2026/08/27

「俺、また馬に生まれました」の続編にあたります。

本編はこちら↓

【俺、また馬に生まれましたシリーズ】

https://ncode.syosetu.com/s7414k/

朝が冷え込むようになってきた。

重賞に出走したエースは、惨敗したらしい。

ぽっこりおなかだったもんね。次のレースまで絞られるらしい。

前世の俺は、走るのに適した体形を維持できていたのにと思った。

そう、俺には前世の記憶がある。

前世の俺も競走馬だったのだ。しかも伝説の無敗馬。

いまの俺もすごいのか?って、前世とは違う場所を目指している。


前走のレースはきつかった。

俺はスタミナとパワーをつける必要性を感じた。

調教はノブさんの日もあるけど、あんちゃんが乗る日もある。

軽めの調教で終わらせようとする二人に「まだ走りたいアピール」を繰り返した。

前世カイザーでは考えられないぐらいの調教をこなしていると思う。

でも、まだまだ足りない。

目指せ!ムキムキマッチョ!


今日は久しぶりにボーイと一緒になった。

俺は気になったことを聞いてみることにした。

「レースの途中に障害の竹生えてくるよね?あれどうやって見つければいい?」

「坊主、コースに竹が生えてくるわけないだろう。」

ボーイは鼻を鳴らした。

「でもいつの間にか増えてるよね?」

「……増えてるな」

「なんで?なんで?」

「……」

ボーイはしばらく黙ったあと、

「調教に行くぞ」

きびすを返していった。知らないんだな。

俺は竹が生えてくる説を推したい。


再び障害レースに出走する日がやってきた。

今度で3戦目だ。ボーイは初勝利まで5戦したって言っていた。

俺は何戦かかるのかなぁ。

パドックが終わり俺はノブさんを背にコースに出る。

今日も竹が生えてくる傾向があるのか、しっかり確かめなきゃ。

砂地と芝の両方を走るようだ。

ノブさんが、その境目を必ず確認するように促してくる。

確かにいきなりだと戸惑っちゃうもんね。

ノブさんにコースを誘導される。ラチに沿って移動していない。

なんかちょっと複雑そうなコースの気がする。

道間違えないように気を付けなきゃね。

スタート地点に向かうノブさんと俺の前に一緒に出走する1頭が立ちはだかった。

にらまれた??

「マル。今日は君に乗ってないけど、よろしくね」

ノブさんが話しかけてる。知り合い。

マルと呼ばれた馬がずんずんと俺に近づいてくる。近いよぉ。

「なんでお前にノブさんが乗ってるんだ?!」

マルの騎手があわてて、手綱を絞る。

「こいつ焼きもち焼いてるみたいですね。レースに影響しなきゃいいけど」

マルの騎手は苦笑いしながら、俺からマルを離してつれていく。

「スーやん。みんなずっと一緒だったらいいけど、人間の事情って馬にはわからないね」

ノブさんは、眉をさげながら俺の頭を撫でた。


カイザーだったときは、騎手なんて誰でもいいと思っていた。

ムチを使わない奴だったらいい。余計なことしなければいい。

誰が乗っても同じだと思っていた。背中に荷を乗せているだけだ―――。

今の俺は、ノブさんやあんちゃんと一緒に走りたいと思っている?

ノブさんが一緒だと障害は怖くない、あんちゃんだとちょっとだけ怖いけど。

俺が勝ったら喜んでくれる人がいる。

カイザーの時も喜んでくれた人いたのかなぁ。


さて、レースに集中しなきゃ。

ゲートに入って開くのをじっと待つ。

マルの視線を感じた。

がしゃん。俺はいつものように飛び出した。

砂地からまっすぐに芝に向かっていく。マルが俺に被せるように寄せてきた。

芝に変わってすぐに、竹の生えたハードルと、威圧感のある生垣2つが連続してある。

竹は固めのブラシ、生垣の先っぽはやわらかいブラシ!!ボーイの言葉を思い出しながらひるまずに超えていく。

マルが、バランス崩した!

すぐに立て直しているようだ。よかった。その隙に横をすり抜ける。後ろから鋭い視線を感じた。


そのままコーナーに入る。コーナーの途中にも生垣がある。斜めに飛び越えていく。

コーナーを抜けると歓声があがる。観客席が近いのかな。

でも、気にならない。

カイザーのときに比べたら、大歓声とは程遠い。

次のコーナーを曲がるとふたたびスタート地点が近づいてくる。

俺の前に1頭いる。今2番手なのかな。

だいたいこの後にいつの間にか竹が生えてきているはず。

今日こそ見落すものか。

生垣2つを飛び越える。

……変化はないな。

油断はしない。

再びコーナーの途中の生垣を飛び越える。

ノブさんが外側に行くように誘導してくる。

砂地に戻るのか?

そこからゴールまで、竹はない。よし。

だけど長い500メートルぐらいありそうだ。

もしかして今から竹生えてくるのか。途中で生えてきたら刺さるかも!!

竹が刺さる想像をして俺は怖くなってきた。竹が生える前に駆け抜けなきゃ!!

必死に走る。俺のスピードは速くない。後ろから抜かれる。1頭、2頭、3頭……。

竹が生える前になんとかゴールできた。

後ろを振り返ると悔しそうな顔のマルがいた。

マルにも竹は刺さっていない。よかった。


俺は5着だった。

検量室けんりょうしつ前で、おっさんがリンゴではなく、角砂糖をくれた。

しゃりしゃり……甘いんだけどリンゴがよかったなー。

あんちゃんに鼻水をつけてやりたい気分になった。

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