俺、また馬に生まれました―― 障害3戦目
「俺、また馬に生まれました」の続編にあたります。
本編はこちら↓
【俺、また馬に生まれましたシリーズ】
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朝が冷え込むようになってきた。
重賞に出走したエースは、惨敗したらしい。
ぽっこりおなかだったもんね。次のレースまで絞られるらしい。
前世の俺は、走るのに適した体形を維持できていたのにと思った。
そう、俺には前世の記憶がある。
前世の俺も競走馬だったのだ。しかも伝説の無敗馬。
いまの俺もすごいのか?って、前世とは違う場所を目指している。
前走のレースはきつかった。
俺はスタミナとパワーをつける必要性を感じた。
調教はノブさんの日もあるけど、あんちゃんが乗る日もある。
軽めの調教で終わらせようとする二人に「まだ走りたいアピール」を繰り返した。
前世では考えられないぐらいの調教をこなしていると思う。
でも、まだまだ足りない。
目指せ!ムキムキマッチョ!
今日は久しぶりにボーイと一緒になった。
俺は気になったことを聞いてみることにした。
「レースの途中に障害の竹生えてくるよね?あれどうやって見つければいい?」
「坊主、コースに竹が生えてくるわけないだろう。」
ボーイは鼻を鳴らした。
「でもいつの間にか増えてるよね?」
「……増えてるな」
「なんで?なんで?」
「……」
ボーイはしばらく黙ったあと、
「調教に行くぞ」
きびすを返していった。知らないんだな。
俺は竹が生えてくる説を推したい。
再び障害レースに出走する日がやってきた。
今度で3戦目だ。ボーイは初勝利まで5戦したって言っていた。
俺は何戦かかるのかなぁ。
パドックが終わり俺はノブさんを背にコースに出る。
今日も竹が生えてくる傾向があるのか、しっかり確かめなきゃ。
砂地と芝の両方を走るようだ。
ノブさんが、その境目を必ず確認するように促してくる。
確かにいきなりだと戸惑っちゃうもんね。
ノブさんにコースを誘導される。ラチに沿って移動していない。
なんかちょっと複雑そうなコースの気がする。
道間違えないように気を付けなきゃね。
スタート地点に向かうノブさんと俺の前に一緒に出走する1頭が立ちはだかった。
にらまれた??
「マル。今日は君に乗ってないけど、よろしくね」
ノブさんが話しかけてる。知り合い。
マルと呼ばれた馬がずんずんと俺に近づいてくる。近いよぉ。
「なんでお前にノブさんが乗ってるんだ?!」
マルの騎手があわてて、手綱を絞る。
「こいつ焼きもち焼いてるみたいですね。レースに影響しなきゃいいけど」
マルの騎手は苦笑いしながら、俺からマルを離してつれていく。
「スーやん。みんなずっと一緒だったらいいけど、人間の事情って馬にはわからないね」
ノブさんは、眉をさげながら俺の頭を撫でた。
カイザーだったときは、騎手なんて誰でもいいと思っていた。
ムチを使わない奴だったらいい。余計なことしなければいい。
誰が乗っても同じだと思っていた。背中に荷を乗せているだけだ―――。
今の俺は、ノブさんやあんちゃんと一緒に走りたいと思っている?
ノブさんが一緒だと障害は怖くない、あんちゃんだとちょっとだけ怖いけど。
俺が勝ったら喜んでくれる人がいる。
カイザーの時も喜んでくれた人いたのかなぁ。
さて、レースに集中しなきゃ。
ゲートに入って開くのをじっと待つ。
マルの視線を感じた。
がしゃん。俺はいつものように飛び出した。
砂地からまっすぐに芝に向かっていく。マルが俺に被せるように寄せてきた。
芝に変わってすぐに、竹の生えたハードルと、威圧感のある生垣2つが連続してある。
竹は固めのブラシ、生垣の先っぽはやわらかいブラシ!!ボーイの言葉を思い出しながらひるまずに超えていく。
マルが、バランス崩した!
すぐに立て直しているようだ。よかった。その隙に横をすり抜ける。後ろから鋭い視線を感じた。
そのままコーナーに入る。コーナーの途中にも生垣がある。斜めに飛び越えていく。
コーナーを抜けると歓声があがる。観客席が近いのかな。
でも、気にならない。
カイザーのときに比べたら、大歓声とは程遠い。
次のコーナーを曲がるとふたたびスタート地点が近づいてくる。
俺の前に1頭いる。今2番手なのかな。
だいたいこの後にいつの間にか竹が生えてきているはず。
今日こそ見落すものか。
生垣2つを飛び越える。
……変化はないな。
油断はしない。
再びコーナーの途中の生垣を飛び越える。
ノブさんが外側に行くように誘導してくる。
砂地に戻るのか?
そこからゴールまで、竹はない。よし。
だけど長い500メートルぐらいありそうだ。
もしかして今から竹生えてくるのか。途中で生えてきたら刺さるかも!!
竹が刺さる想像をして俺は怖くなってきた。竹が生える前に駆け抜けなきゃ!!
必死に走る。俺のスピードは速くない。後ろから抜かれる。1頭、2頭、3頭……。
竹が生える前になんとかゴールできた。
後ろを振り返ると悔しそうな顔のマルがいた。
マルにも竹は刺さっていない。よかった。
俺は5着だった。
検量室前で、おっさんがリンゴではなく、角砂糖をくれた。
しゃりしゃり……甘いんだけどリンゴがよかったなー。
あんちゃんに鼻水をつけてやりたい気分になった。




