表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光属性の魔王  作者: 八海クエ
第2章 旅立ち
19/19

第19話 後始末

 馬車の車輪は、止まったまま。

 結界の内側だけが静かだ。


 外の森は、まだ戦いの名残みたいにざわめいていた。

 風が枝を鳴らすたび、血の匂いが薄く広がる。


 結界が解かれた。


 盗賊の振りをした冒険者たち──全員に治癒が施され、傷もない。

 レインが武装解除された冒険者を跪かせ、一列に整えている。


 冒険者を丁寧に扱っているようにも見える。

 ただ、つまらない物体を整理しているようにも見える。


「本当に、誰も……殺さないのですね」


 シオンが小さな声で言った。

 レインは、ちらりとシオンを見て答える。


「お嬢様には、意図があります」


 その言い方には、善悪がない。

 ただ「目的」の存在が示されただけ。


 ティアは、森を見ていた。

 逃げていった乗客たちの姿は、もう見えない。


 馬車の荷台には、乗客の誰かが残していった小さな包みがある。

 逃走の間際、慌てて掴もうとしたのだろう。布の端がちぎれている。


 ティアは、その包みを拾い、布を整えた。

 それから振り返り、地面に並べられた冒険者たちに伝える。


「あなたたち”盗賊”の襲撃に巻き込まれた人々にも」

「大切なご家族があります。大切な物もあります」


 レインの手が止まる。


「これは、誰かが必死に守ろうとした物です」


 レインが、メモとペンを取り出し、何かを書き留め始める。


「あなた、お名前は?」


 冒険者のリーダーは、一瞬、躊躇してから答える。


「ミシェル・ガルバドス……Sランク冒険者です」


 偽名ではない。名乗りに、揺るぎない誇りが混じっている。

 ティアは、優しく、小さな笑顔を見せて続ける。


「今回の武装解除が、完全に王国法に則って行われたこと」

「ガルバドスは、この包みを、その名にかけて所有者に返却すること」


 ティアの身体から、光の粉が溢れる。


「署名していただけますね?」


 レインは、同じメモを2つ書き上げた。

 ティアは、その双方に、署名をし、ガルバドスの署名を促す。


 ガルバドスは、また躊躇しつつも、署名を終えた。


「一部は、あなたがお持ちになってください」

「もう一部は、こちらで保管します」


 解除された武装をチェックしていたシオンが何かに気づく。

 胸当ての裏──内側に縫い付けられた小さな印。


 それは、紋章でも、家名でもない。

 見た者にだけ分かる「管理番号」のようなものだった。


 シオンが、ティアに耳打ちをする。


「アウレリウス王家、第一王子です」


 王位継承権第一位の人間が、ティアを排除しようとしている。

 ティアは、迷わず即座に、シオンに指示を出した。


「シオン=アカリ。命じます。エミリア王女殿下を守りなさい」


「御意に」


 少しの間もおかず、シオンがその場から走り去る。

 レインも、それに付いて走り出しながら、伝える。


「ちょっと彼女一人では……行って参ります」


 ティアは、表情を崩さすにそれに答える。


「さすがです、レイン」


 その場には、跪いた冒険者たちの列と、ティアだけが残された。

 ティアが口を開く。


「解散です。お立ちなさい」

「ごきげんよう」


 また、ティアの身体から光の粉が舞う。

 冒険者たちは、ティアから目を離すことができないでいた。


「私を見るのを、おやめなさい。不敬です」

「まだ、あなたたちには、私を見る資格がございません」


 冒険者たちは、恥いるように目線を逸らす。

 それから立ち上がり、それぞれに帰路についた。


 最後に、ガルバドスが振り返って、問う。


「あなた……様の、目的は?」


 ティアは、それに即答する。


「仲間と共に。仲間のために、生きることです」


 政治とは、公式な権限の及ばないところにまで、

 大きな影響力を築いていくことなのだろう。


 ティアの周囲には、ただ光があった。



やっと書けました。続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ