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光属性の魔王  作者: 八海クエ
第2章 旅立ち
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第13話 学院門外の戦い

 それは、戦いと呼ぶには静かだった。


 学院の門外。


 街道が開けるその場所に、冒険者たちが集結していた。

 名のしれた高ランク冒険者ばかり。その数、二十三。


 標的は、一人の少女。

 ノクティア=ヴェリタス・アル=セリオン。


「……少なすぎますね」


 レインが、低く呟く。


 ティアは、門に向かいながら、数を数え終えていた。


「いい、レイン。手を出さないでね?」


 それだけ言って、ティアはレインの数歩先を歩く。


 光が、広がった。だが、それは攻撃ではない。

 球状の、結界。


 ちょうど学院の門の外。

 冒険者たちを、丸ごと包み込んだ。


「結界だと!?」「外部遮断か!」「大きい!」


 冒険者たちが、ざわめく。


 本来、結界とは、外部からの攻撃を防ぐためのものだ。

 だがティアの結界は、違った。


 衝撃も、魔力も、恐怖すらも、

 この内側で完結させるためのもの。


 そんな結界の使い方を、誰も、知らない。


「中に! 中に、私も入れてください!」


 結界の外から、シオンが叫ぶ。


「私も戦えます! ティア様、戦わせてください!」


 シオンが、結界に拳を打ちつける。

 小さな拳に、血が滲む。


「……やめなさい」


 レインが、優しくシオンの肩を掴む。


「ここは、英雄の出番ではない」


「ですが——!」


「見なさい」


 レインは、シオンの目を逸らさせなかった。


「これが、私たちの主の戦いだ」


 結界の中心。ティアは、ほとんど動かなかった。

 剣も、抜かない。詠唱も、ない。


 ティアはただ、抑えていた膨大な魔力を解放した。

 身体から光の粒子が零れ落ち、結界内を満たしていく。


 次の瞬間。


 冒険者たちが、全員、膝をついた。


「……っ?」


 息切れ。力の喪失。だが、外傷はない。

 冒険者たちが、次々と倒れる。


 ただ魔力に当てられただけで、動けない。

 それだけの差があった。


「何が……?」


 これほどの差を、経験したことがない。

 だから、理解が追いつかない。


「やめろ……!」


 誰かが叫ぶ。


「降参だ! もう——十分だろ!」


 ティアの表情には、怒りも、喜びもない。

 ただ、平然としている。


「ちゃんと。礼儀、正しくです」


 殺さない。壊さない。

 ただ、戦えなくする。


 その行為が、冒険者たちの心を深く折った。


「……も、申し訳ありませんでした」

「す、すみませんでした……」


 理解したのだ。


「脅威度、王国にとって危険って……」

「そんな、そんなレベルじゃない……」


 結界が解かれた。外の風が流れ込む。


 それからティアは、申し訳なさそうに言った。


「装備品を……あと、お金もすべて置いて行ってください」

「あ、大切な方の形見とかは、そのままお持ちください」


 冒険者たちが、ざわつく。


「……なぜ?」


 ティアは、少しだけ考えてから答えた。


「王国法第18条2項」

「合法的に討伐した相手の所持品等は」

「それを討伐した者に所有権が移管される」


 冷静なティアの表情が、ここで少し不安そうになる。


「私の討伐依頼は、その正当性に疑義があります」

「国王も、調査中とのことでした」

「つまり、討伐依頼が合法的なものか、現時点では不明です」


「ですから、私には正当防衛が成立……しますよね?」


 ティアは腕組みをし、顎を上げる。

 それから、自分に言い聞かせるように言った。


「私は、合法です」


 小声で続けた。


「装備品は、売らせていただきます」

「これからは……路銀も、必要なので」


 冒険者たちは、逆らわなかった。

 ティアの慈悲により、命拾いしたのだ。


 剣。鎧。魔導具。

 地に積まれていく。


「す、すみません。これは、父の形見なので……」


「結構です。そのまま、お持ちになってください」

「きちんと、お墓参り、するのですよ」


 シオンは、ただ茫然と立ち尽くしていた。

 そんなシオンに対して、レインが言う。


「用務員の方に、台車を、借りてきてもらえないだろうか?」

「あれだけの数の装備品だ……」


 我に返ったシオンが、返事をする。


「え、えっと。貸していただけますかね?」

「もう私たち、学校関係者ではありませんし」


 レインは、ニヤリと笑って答えた。


「黒髪の英雄よ」

「あなたは……まだ、退学していないだろう?」



第2章の始まりです。


お読みいただき、ありがとうございます。

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