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VIBES LOGIC - 生命の螺旋Ⅰ Fake flower/Real life 悪の華のディストピア  作者: 御園しれどし


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第一章:Fake Flower - 虚飾のパレード

 1. 完璧な朝、完璧な死


 西暦20XX年、聖華市(セイカ・シティ)


 この街に「不快な音」は存在しない。


 空調が奏でる一定のホワイトノイズ、感情最適化AI『バイオス』が推奨する穏やかなBGM、そして市民たちの口元から漏れる、計算し尽くされた愛想の良い挨拶。すべては調和し、すべては美しい。


「おはよう、世界。今日の私は、昨日より少しだけ自由」


 午前8時。SNS『EDEN』のタイムラインに、その投稿が流れた。


 投稿主は、フォロワー120万を抱えるトップモデルのミカ。画像の中の彼女は、遺伝子操作で作られた純白のバラに囲まれ、神々しいほどの微笑みを浮かべている。


 その投稿に「いいね」の雨が降り注ぐ。だが、その時すでに、彼女の心臓は止まっていた。


 現場は、市街地を一望できる最高級マンションの最上階。


 駆けつけた捜査官、日向あかりが目にしたのは、完璧にデコレーションされた地獄だった。


「……これが、ミカ?」


 あかりは思わず声を震わせた。


 豪華な大理石の床に横たわる遺体。ミカが身に纏っているのは、まだ発売前のブランドドレスだ。死後硬直が始まっているはずのその表情は、まるで眠っているかのように穏やかに整えられている。犯人が死後に「補正」したのだ。


 しかし、その完璧な美しさを台無しにする「異物」が一点だけあった。


 彼女の美しい唇は無理やりこじ開けられ、そこには黒々とした泥と、道端に生えているような名もなき雑草の束が、喉の奥までこれでもかと詰め込まれていた。


「音声ログを確認して」


 あかりが指示を出すが、ドローンは無機質な回答を返す。


『――エラー。半径10メートル以内の音響データは、発生時刻前後より完全に消去されています。現在再生されているのは、システムが生成した推奨環境音リラクゼーション・バードです』


 不快な悲鳴も、争う音も、生々しい喘ぎも。


 この街のシステムは、それらを「ノイズ」として処理し、消し去ってしまった。


 後に残されたのは、偽りの鳥のさえずりと、口に泥を詰め込まれた「あだ花」の死体だけだった。



 2. 地下の波形解析師


「警察がここへ来るなんて、最適化ミスか?」


 合成音声の、平坦で冷たい声が地下室に響く。


 そこは聖華市の輝きから取り残された、古びたビルの地下だった。壁一面に配置されたモニターには、幾千もの複雑な波形が走り、スピーカーからは時折、地を這うような重低音が漏れている。


「久世カイさんですね。市民安全局の日向です」


 あかりは、モニターの光に照らされた男の背中に呼びかけた。


 カイは振り返らない。彼は首に巻いた黒いスカーフを指先でなぞっている。その下には、かつて彼から「言葉」を奪った傷跡があることを、あかりは資料で知っていた。


「現場の音は消去されていたわ。でも、あなたなら……『消された音の痕跡』を読めると聞いた」


「痕跡、か。……連中は美しいものしか信じない。だが、音は死なない。物質に刻まれ、空気に震えを残す。問題は、それを聴く魂があるかどうかだ」


 カイがキーボードを叩くと、巨大なスピーカーが「ブーン」という低い唸りを上げた。 『重厚で静かなピアノの旋律』のような、不穏なメロディが部屋を満たしていく。


「日向捜査官。あんた、自分の鼓動の音を聞いたことがあるか?」


「え……?」


「証明なんていらない。ただ、そこに生きること。……今のあんたの言葉には、それがない。ただのシグナルだ」


 カイがモニターの一つを指差す。そこには、カイの端末に届いたばかりの、送信元不明の音声データが表示されていた。


 タイトルは――『FAKE FLOWER / REAL LIFE』。


「死んだはずの男から、歌が届いた。……事件は、まだイントロに過ぎないぞ」


 カイの瞳が、波形の奥にある「真実」を射抜くように光った。

AKE FLOWER / REAL LIFE ー悪の華のディストピア


(Beat: 重厚で静かなピアノの旋律から、徐々に硬いブーンバップ・ドラムが加わる)


(Intro)

Yeah... 美しさに隠した BlueなMemory

不安と歓喜 その狭間で揺れるHeart


咲くことを許されない 運命のシナリオ

耳を澄ませろ これが現代のレクイエム


(Verse 1)

永遠に咲けないLife 拒絶を強いられたFate

開花ハナを急ぐのは 破滅へのState


愛を殺すことと同義 閉ざされたGate

この現代文明 その正体は「悪の華」


見かけ倒しの「あだ花」 虚飾のパレード

だが、あえて咲かせる その理由は一つ


奥底にある 「真実の華」を信じてるからだ


(Hook)

その花は「命」 ただそこに「生きること」

証明なんていらない ただ鼓動が刻むCode


その花は「命」 ただそこに「あること」

ロジックを越えた 魂のバイブス


(Verse 2)

問いかけるぜ その命の震え(バイブレーション)

他人に伝えるために どれだけ自分をDigできる?


信じるとは何だ? 愛されるとは何だ?

その答えをMissingしたままじゃ 何も語れやしない


知識も 物質も 積み上げたCultureも

魂を抜きにしちゃ ただの豪華な墓場ハカバだ


(Bridge)

溢れるノイズ 高速のシグナル

真実を語る舌ベロは 凍りつくサイレンス


これじゃ「精神の自殺」 加速するカウントダウン

言葉が死んでいく 意味が溶けて消えていく


(Outro)

語る言葉に宿せ 生命いのちを

取り戻せ 魂ソウルを焦がす熱量を


心に火を灯せ 命を吹き込め

言葉が再び 脈打ち始めるまで


Yeah, We gotta wake up.

真実の花を咲かすために。


(Beat fades out with a heartbeat sound)

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