表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ王子に命令されて、悪役令嬢を魔改造してみた  作者: 工藤 でん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/18

8.あなたのファイヤが必要です

ただ今戦闘中!

「セレフィ! この魔法障壁はどれくらい保つ?!」

「まだ平気だけど、フリージングウルフが仕掛けてきたらわかんない!」

「あいつの足止めもセレフィがやってんだろ。さすがのセレフィも魔力欠乏おこすよ!」

「アイスウルフがすごい数で……倒しても倒してもキリがない」

「ボスが死ぬかあきらめれば、アイスウルフは引くよ。フリージングウルフを何とかしないと」

「どうにもなりませんの? 何か手はありませんの?!」


 マリアガさんも男子たちもわたわたしている。今は私の魔法障壁がみんなを守っているけど、私が倒れたら魔法障壁も消えてしまう。さらに、私はフリージングウルフに身体拘束魔法をかけている。拘束はできているが、暴れ狂って抵抗がすごい。魔力がじわじわ削られていくのがわかる。しかも遠いところで身体拘束魔法をかけてるってのに、こんこんと冷気がここまでやってきているのだから、とんでもない力を持つ魔物だ。


 どうにかしないと。

 

 男子たちはクライムレッドバイソン討伐の時に、かなり魔力を使っていた。現在の魔力で束になってかかっても、フリージングウルフにダメージを与えられるかどうか。かと言って、このまま持久戦に持ち込むのも悪手だ。狼一族は執拗で執念深い。私たちの魔力と体力が尽きるまで、諦めることなく攻撃してくるだろう。

 今も次々とアイスウルフが体当たりしてきている。私の魔法障壁に体当たりされる度に、私の身体に衝撃が走っている。いままで気にもならなかったのは、私の魔力が豊富にあったからだろう。つまり、私の魔力も尽きようとしている?


 まずい。本当にまずい。

 私はルドルフ殿下から渡された魔法の杖を握りしめた。汗でぬめっているのが自分で分かった。


 私が死ぬということは、魔力過多症のルドルフ殿下も無事では済まないということだ。殿下も子供の頃より体力もついて、魔力を発散する力量も備えてきてはいるが、それでも余分な魔力を取り除かなければ命に係わる。

 今日は夕方までにダンジョンを終わらせて、いつものようにルドルフ殿下の魔力を取り込む予定だったのだ。こんなところで私がどうにかなるわけにはいかない。ルドルフ殿下の元に行かなくてはいけない。


 フリージングウルフの弱点は何か。

 当たり前に分かってるのは火、火炎だ。火魔法の使い手の男子はかなり疲弊している。もう魔力も残り少ないんだろう。額には汗が浮いていた。

火魔法はアイスウルフにも有効だから、かなり数を減らしてくれているのだ。ありがたいが、残りの魔力をぶつけてもフリージングウルフを倒すには至らない。風魔法、水魔法の使い手もいるが、フリージングウルフを倒せるような使い手ではない。

 

 まてよ。

 火魔法いるじゃんか。

ふわふわの赤い髪が目の前にある。マリアガさん、属性は火で攻撃魔法に適性ありだよね!

 ファイヤかましてるの見たことあるし!


「マリアガさん、手伝って!」

「あ、あたくし?」

「マリアガさん、フリージングウルフにファイヤ撃ってくれないかな」

「あたくしがやるんですの?!」

「やるの! マリアガさん、今日は魔法一回も使ってないよね? 魔力は十分だよね?!」

「そうですけど……あんな大きな魔物、あたくしのファイヤで倒せるような魔物ではないのでは?」

「私が補助する! マリアガさんのファイヤが必要なの!」


 私はルドルフ殿下の魔法の杖を掲げて見せた。くすんだ古い杖だ。マリアガさんには常々「平民にお似合いの汚い杖ですわね」と言われている。ルドルフ殿下からもらったとか絶対言わんほうがいいな、と毎回思っているが。


「この杖、コントロールはゴミですが、出力だけは一級品なんです。最近コントロールもなんとかなってきたので、私と一緒に火魔法撃ちましょう。マリアガさんの魔法に私の魔力全部乗っけますから」

「そんなことできるんですの?!」

「やったことないですけど、やらないと勝ち目ないんです!」

「そんな、何の保証もない……」

「このまま何もしなければ、ここで死ぬことは保証できます!」


 マリアガさんの顔から血の気が引いた。本当に死に直面しているとようやく理解したようだった。お嬢様は状況判断がニブくて遅い!


 私は男子たちと相談する。私の全力でマリアガさんに魔力を乗っけるということは、私の魔法障壁がなくなるということ。魔法障壁がなくなった瞬間に、近くにいるアイスウルフが一斉にとびかかってくるだろう。男子たちにはそれを防ぎきってもらう。

 タイミングがずれると、文字通り痛い目に合う。ぶっつけ本番の作戦である。


 私はマリアガさんを抱えるようにして魔法の杖を構えた。マリアガさんは私の握った杖の上のほうを両手で握った。こうしてみるとマリアガさんは細い。細いくせになんでこんなに胸と腰は豊満なんだよと、関係ないことを思う。

 大丈夫、私は冷静だ。


 男子たちからも準備オーケーと合図があった。

よし、やるぞ。

 私はまず、フリージングウルフの身体拘束魔法を解いた。


 白い巨体がぶるりと身震いした。解放されたフリージングウルフは光る双眸をこちらに向けた。すさまじい冷気が押し寄せてきた。

 怒りに身を任せたフリージングウルフは飛び跳ねるようにしてから、咆哮を上げてまっすぐにこちらに駆けてきた。白い巨体が躍動している。すごく速い。すぐにたどりついてしまう。


「ま、まだですの?」

「まだ! 敵から目を離さないで」


 マリアガさんの震えが伝わってくる。寒さと恐怖のせいだ。私だって怖い。男子たちがアイスウルフを私たちに近づけないよう、背後を固めてくれている。彼らだって怖いはずだ。


 フリージングウルフがみるみる近づいてくる。怖い。すごく怖い。食われる。嫌な想像が頭をよぎる。

でもこの杖のコントロールは完璧じゃないんだ。外さないくらい近づかないと。

 巨体が地を蹴る音がすぐそこまで近づいてきた。光る青い眼は明らかに私たちを獲物として捕らえていた。私たちを血祭りに上げる欲望が吹き寄せてくる。フリージングウルフにとって私たちは、抵抗する腹立たしい敵であり、餌になる肉でしかないのだ。

血塗られた口が私たちを狙って大きく口を開けた。鋭い牙がギラギラしながら獲物を仕留めに迫っていた。


 私は魔法障壁を解除した。同時に全力で声を上げた。


「今です! ファイヤー!!!」


 マリアガさんの魔法が杖を伝うのが分かる。私はそこに自分の魔力を全力で乗せた。

私は魔力を全開放するという経験を初めてした。自分の中に当然あるものが全てなくなるというのは、とても不思議な体験だった。



 最後に見たのは視界を埋め尽くす炎。それがいつまでも続いたように感じられた。

 

 暴れ狂う炎をまぶたに焼き付けたまま、魔力を使い尽くした私は、そのまま意識を失った。



セレフィ、人生初の魔力欠乏ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
冷気と共に軽トラが突っ込んで来る感じ!で読んでました! 無事倒せたんでしょうか?皆怪我はない?セレフィちゃん魔力がカラになって命に別状は? 色々心配ではありますが、“チーム焼き肉”の皆に一言。 『皆自…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ