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ヤンデレ王子に命令されて、悪役令嬢を魔改造してみた  作者: 工藤 でん


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3.二者面談

話がある、というので。私は放課後マリアガさんと、クラスで面談していた。

机を正面からくっつけて向き合う、という二者面談の仕様だ。気軽な世間話とは思えずにいきなり憂鬱になる。しかも放課後はルドルフ殿下の魔力譲渡もあるのだ。先程遅れるとは伝えたものの、ご機嫌を損ねてないか気がかりだ。王宮では食べられない、菓子パンとか買っていこう。


 しかし、私にはマリアガさん改造命令も出てるしな。授業中や短い休み時間だけで、マリアガさんの改造は不可能に近い。彼女が何考えてるかも把握したいし、良い機会だと思うことにする。


私はマリアガさんの、じとっと据わったライムグリーンの眼を真正面から見た。

 ……いやだもう、いますぐ帰りたいよう。


「セレフィ、正直に答えてほしいことがありますの」

「はあ」

「あたくし、クラスで浮いてません?」

「浮いてますね」

「分かっているなら、あなたなんとかしなさいよ! あたくしのバディでしょう?!」

「バディの仕事は人間関係改善まで含みません」

「じゃあ、せめて何が原因か教えなさい!」


 居丈高に言い放っているが、マリアガさんも不安なんだ。

 社交界ではいかに自分のポジションをトップで維持できるかが、重要な事案だろう。公爵令嬢で派手好きなマリアガさんだ。貴族の集まるパーティでは、同年代のトップを維持しているとお見受けする。


 ただし、それは社交界での話。ここは王立魔法学校だ。魔法学校内でのマリアガさんの立場は、トップとは程遠い。


 魔法学校は名前の通り、魔法の能力が最も重要視される学校である。さらに魔法というのは、様々な魔法を織り交ぜて魔法効果を上げていくことも多い。だからこそ別分野の魔法の理解と連携が必要になってくるのだが。

 当然バディとの相互理解は基本だし、主張も譲歩もお互いの魔法を見ながら徐々に出していくものだ。


 だけどなあ。マリアガさんだもんなあ。


「マリアガさんは今日の実習『魔法戦術実践』、どう思いました? 逃げ惑う一角ウサギの角をいくつ取れるかの授業ですね。何個取れたか覚えてます?」

「忘れたくても忘れられないわ! 一個よ!

 他のバディは十個以上取っていたのに、あたくしたち一個しかとれなかったのよ! あなた、本当に使えないわね!」

「闇雲にファイヤ魔法かましていたマリアガさんに言われたくないのですが。

 では、この実習の意義はわかってますか?」

「意義って……魔法コントロールの精度を上げること、かしら」

「それは、この前の動体射撃の方が意味合いは近いですね。

 今回はバディの連携をとる実習です。二人でいかに効率よく敵を屠るか魔法を駆使して考えろという」

「え?」


 マリアガさんは意外そうな顔をして私を見てきた。そうじゃないかと思っていたが、やっぱり分かってなかった。転入生とはいえ、もう少し魔法のことを勉強してきてほしい。


「私、実技始まる前に相談したじゃないですか。私が足止めをなんとかするんで、マリアガさんは角取りに専念してくださいと」

「なんであたくしが角取りしなくちゃいけないんですの? 先生の作った魔法人形(ゴーレム)のウサギとはいえ、角をもぎ取るなんて気持ち悪いじゃないの。そんな下賤の作業、平民のセレフィがすればいいでしょう。あたくしが屠ったウサギからあなたが角をもぎ取れば」

「結果、一個です。このままでは、この試験は落ちます」

「うー……」

「こんな風にですね、自分の意見しか採用しないマリアガさんの言動は、クラスでとても浮くんですよね。さらにここは魔法学校です。『魔法の下において我らが生徒は平等である』という理念は生徒の中で浸透している。そこへ身分を主張してやれることもやらない人となると、ますます近寄りがたくなる。

 正直に言うと、次のバディ決めでマリアガさんと組まされるのは絶対嫌だと、みんな考えてると思いますよ」


 マリアガさんは黙ったまま私を睨みつけてきた。公爵令嬢として盤石な立場にずっといたマリアガさんだ。そりゃあもう、大変に不服なのだろう。魔法学校という特殊な環境が彼女に初めての挫折を与えてしまった。決して私の言葉が不遜だったからではない……と信じたい。


 マリアガさんが無言なのは、不服だが私の話もあながち間違ってはいない、くらいには理解しているからじゃなかろうか。それくらい、クラスメイトがマリアガさんに投げかける視線は冷ややかだった。口惜しさと挫折感からか、マリアガさんのライムグリーンの瞳にうっすら悔し涙が溢れてきていた。

 いや、これくらいのことで泣くなって。


 マリアガさんは震えそうな声で私に問いかけてきた。


「どう、したら、いいんですの」

「……まあ、徐々に歩み寄ることですかね」

「どうやったら、歩み寄れますの」

「んー……否定しないで相手の話を聞くとか」

「あたくし、これまで否定したことなどありませんわ!」

「『嫌ですわ』『お断りします』『どうしてそんなことをしなくてはいけませんの?』『あたくしではなくあなたがやるべきではありません?』」

「!」

「マリアガさんとバディ組んでから、言われた言葉の数々です。なかなかの否定っぷりです」

「それは……!」

「投げかけられた方は印象に残ります。平民は慣れてますからしょうがないと思うところですが、貴族の方々は分かりかねます。クラスの半数は貴族の方々ですから。

あと、身分の主張は、平民・貴族両方から嫌われます。なんせここは平等を謳う魔法学校ですからね」


 目を見張るマリアガさん。やべ、ちょっと直接言い過ぎたかな。私、オブラートに包むとか苦手なのよ。本音を漏らしすぎたかも。

お願いだから、これを不敬罪とか言って云々するのはやめてよね。やんごとなき方の後ろ盾があるとはいえ、面倒ごとは避けたいんだ。


 なんとか言い訳して挽回しよう、とした時。

コンコンと、教室のドアがノックされた。

 覗き込んできたのはルドルフ殿下の護衛さんの一人、ヴィクターさんだ。若そうな顔を活かして、わりといい年なのに魔法学校の制服着せられて潜入している近衛騎士である。ヴィクターさんはマリアガさんには丁寧にお辞儀をして、私にはハンドサインを寄越してきた。……あ、いかん、行かなきゃ。


「ごめん、マリアガさん。私、急用ができた」

「急用ですか」

「ちょっと呼び出されて。どうしても行かなくちゃいけないんです」

「あのドアにいる方、ですの?

あの方……セレフィの恋人?」

「違います。私、彼氏なんていません」

「隠さなくてもよろしいのに。あの立ち居振る舞いからして、庶民ではないわよね? あなた、身分違いの恋をしているの?」

「違いますってば。あの人は私を呼びに来ただけ……」

「それって、デートのお誘いじゃないの! ここはいいから、早く向かいなさいな」

「マジで違うからね? なんでそんな食いつきがいいんですか」

「他人の恋愛模様は乙女の好物ですわっ!」


 ドアが、ガンと叩かれた。ヴィクターさんがいら立っている。だって、緊急だもんね、やばい。


「マリアガさん、申し訳ないけど、話はまた今度」

「構いませんわ。明日、デートの内容教えてちょうだいね。どこに行ったのか、何をしたのか」

「だから、デートじゃないからね!」

「まあ、照れちゃって。セレフィもお可愛いところがありますのね」

「あれは彼氏じゃないんです!」

「あたくし、恋する乙女は全力で応援してましてよ。身分違いという障害を乗り越えて、精一杯頑張りなさい」

「ちーがーうー!!!」


 これ以上反論する時間も惜しくて、私はカバンをひっつかんで教室を出た。マリアガさんは、脳内がお花畑の人だった。全ての事柄が恋愛的な意味合いに変換される、特殊脳な持ち主だ。この手の人は、お花の話以外、話聞かねー。


早足の私をヴィクターさんが追いかけてきて、私の頭を軽く小突いてきた。ヴィクターさんを指す『あれ』呼ばわりが聞こえたのだろう。うっかりだよ、大目に見てよ。

 小突かれた頭をなでながら、私は男子寮に急いだ。

 

ヴィクターさんが出したハンドサイン。

『発熱』

 ルドルフ殿下が、急な魔力上昇のため発熱したのだ。

 魔力過多症だが日常生活に支障なし、とルドルフ殿下の病状は公表されているが、決して安定しているわけではない。発熱だって度々ある。その都度私は呼び出されているのだ。微熱程度ならいいんだけど。


今から余分な魔力を取り込んでもしばらく熱は下がらないんだろうなあ。人間の体はそんなに単純にできてない。

今夜護衛さんたちは、殿下の発熱が治まるまで、つきっきりで看病することになる。私も解熱するまで付き添いだ。男子寮に女子部屋なんてもちろんないので、隣室の物置で寝袋にくるまっての仮眠となる。すっげ、寒いんだ。夜食が出ることだけが救いかな。


 しかし、どうしてマリアガさんに呼び出された日に発熱するかな。殿下、タイミング悪いよ。


不安な悪役令嬢……からの、次回は暴走令嬢です

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― 新着の感想 ―
あちらを立てればこちらが立たず…… 体が二つ欲しいですね、セレフィちゃん。誰か彼女を癒してくれる人はいないのでしょうか? 頑張って!( *´д)/(´д`、)
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