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ヤンデレ王子に命令されて、悪役令嬢を魔改造してみた  作者: 工藤 でん


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12.あたくしの名にかけて

 会議が終わるのをしばらく待っていると、さっきの受付のお姉さんが私を呼びにやって来た。

 あの魔法の杖の持ち主がやって来たと報告したところ、会議室に呼べということになったらしい。


 魔法局の偉い大人が集まってる会議に、学生が一人で乱入するの?

 うわー。やだー。絶対やだー。アメくれてもやだー。


 絶望的にものすごく嫌な顔をした私を見て、マリアガさんが一緒についていくと言ってくれた。というか、二人一緒じゃなきゃ会議室には行きませんわ! とワガママを通してくれた。なんか、ワガママの手慣れ感がすごい。


 会議室には十人くらいの偉そうな人たちが円形に配置された席についていた。その真ん中に、私の魔法の杖がある。

 あったー! やっと見つけた!

 

 だがすぐに杖に駆け寄ることは、もちろんできなくて。


「どっちがこの杖の持ち主なの……ふーん、そっちの細っこい方」

「あんな若い子にこの杖が使えるかね」

「無理でしょうなあ。なにせ出力が馬鹿でかいから」

「学生ではこの杖の制御など不可能だ。所持をしていたとしても使用はできないだろう」

「……ということは」


 なんかいきなり、不穏な雰囲気なんだけど。何かしら私は疑われてるの? あんな子供にあの杖は使えないんだろう。本当に本物の杖の持ち主なのかよ、とか。

 長い白髪のおじいさんが、私に胡乱な視線を向けてきた。


「君、この杖はどこで手に入れた」

「もらいました」

「誰から」


 ……ここでルドルフ殿下の名前って、出していいものなのか?

 マリアガさんに目をやると、小さく顔を横に振ってる。やっぱ名前だしちゃダメなんだ。殿下に責任が全部いっちゃうから。

 責任を殿下に押し付けちゃった臣下は、もう臣下ではないよね。そうだよね。


 かといって嘘もつけない雰囲気だし。怖い大人に冗談は通用しなそうだし。

 どうしよう。こんな状況に陥ったことないから、対策法が全然わからない。

 黙っていると、別のおじさんがイライラしたように声を出した。


「誰からもらったかと、聞いているんだが」

「……はい」

「言えないのか」

「……」

「言えないということは、どこからか君が盗んできたものだと思われても、仕方がないんだぞ」


 なんだそりゃ! 

 言いたいけど言えない事情がこっちにはあるんだよ! それすらもあなたたちに伝えられないんだよ!

 で、誰からもらったか言えないと、泥棒扱いになるっていうの?


 そもそもね、その杖が出所を探らなきゃいけないような、大層な杖だってことも知らなかったんだから。ちょっと出力高いよって、渡されただけなんだけど。どっちかっていうと、騙されてたのは私なんだけど。

 何と言っていいかわからずに顔色だけ白くなったり赤くなったりしている私を見て、マリアガさんが一歩前に出てくれた。


「あたくし、ローエンハイド公爵家長女、マリアガルテ・フォン・エスト・ローエンハイドと申します。その杖の持ち主、セレフィのバディです。あたくしの発言をお許しいただけますか」


 ローエンハイド公爵家、という名前に会議室がざわめいた。私は存じてなかったが、ローエンハイド家は有名な家のようだ。ルドルフ第四王子様の婚約者候補を出せる家が、有名じゃないわけがない。私が無知なだけだった。

 眼鏡のおじさんがこほんと咳をして、マリアガさんにうなずいた。


「発言を許可しましょう」

「ありがとうございます。

 あたくしはこの春から魔法学校に転入いたしまして、ここにいるセレフィとバディを組みました。出会った頃から、そちらにある魔法の杖を使っていたと証言いたします」

「この、難しい杖をか」

「たしかに扱いは難しそうでした。コントロールはゴミ……んんっ、コントロールはつけにくいが出力は一級品であると、セレフィは話していました。実際にこの杖の最大出力をこの目で見たことがあります。地形が変わるほどの威力でした」

「なんと」

「本当に、実際に使っているのか」

「ですから、その杖がセレフィの魔法の杖であることは、あたくしの名にかけて証言いたしますわ」


 ほう、と会議室に声が漏れた。

すごいぞ、ローエンハイド家の名前! さすが名門一流貴族! 知らんけど。

家名とマリアガさんの説明で、私の杖だって説得力が増したぞ。


 一人の女性が手を上げた。銀色の長い髪をした綺麗な女性だ。緑色の鋭い目を私に向けている。


「どうやら本当にこの杖を使っていたらしいが。

 私たちの方でもこの杖について調べを進めていたんだがね。作成された年代は約三百年前。材質は絶滅した『祝福の王樹』からできている。かすれているが、なにかしらの効果がかけられているようだ。それを調べようとしたとたんに杖の反発にあって、調査用の魔道具が壊れた。あの魔道具、高いのに」


 銀髪の女性は肩をすくめた。高いのに、と言った割に気にしてなさそうだった。そこまで話すこともなかろう、と苦情を入れたおじさんを、銀髪の女性は一瞥しただけで黙らせた。若いけど、どうやらすごく偉い人みたいだった。


「ただでさえ高価な材質で、しかも判別不能な効果付き。君の魔法の杖は、魔法史博物館で保管されててもおかしくないような代物なんだ。それは知ってたのか?」

「知りません……」

「少なくとも、魔法学校の一生徒が使うようなモンじゃない。そもそも生徒がこれを手に入れられるとも考えられない。

 だから、これを君に託した人物を、我々は知りたいわけだが」


 おーい、殿下。聞こえてますか。……ルドルフ殿下!

 あんたねえ。お気軽な様子で、私になんてもの渡してくれてたんだよ!


 ねえこの杖、博物館級の代物なの?!

 この杖の出所を想像したら、今くらっとしたよ。これって殿下がどっからか持ってきたんだよね。

 第四王子のルドルフ殿下が持ち出してきた、すんごい素材の古い魔法の杖でしょ。博物館級のとんでもない杖でしょ。


 ……そんなん、王室の宝物庫にあるやつじゃん。


 そりゃ有識者のなかでザワザワするわけだわ。本来なら魔法史の研究対象とかになる杖じゃない。なんで魔法学校の一般生徒が使ってんだって話だよ。

 でも言えないんだよ。臣下としてはルドルフ殿下の名前出すわけにはいかないんだよ。

 そこんとこなんとか、分かってもらえないかなあ。


 会議室の大人たちが私を凝視している。


 ……分かってもらえないよねえ。


 そんな中、マリアガさんは果敢だった。

 私を庇うように前に立つと、凛として会議室の重役に言い放った。


「あたくし、セレフィに杖を託した人物を存じております。ですが、ここでお名前を挙げることをはばからせていただきます」

「それは、どういう意味かな」

「そのままの意味です。僭越ながら申し上げますと、魔法局の方々であっても、詮索しない方が後々になって意義のあることにつながると考えます」

「……ここで本来の杖の持ち主を特定してしまった方が、リスクがあるということか」

「ええ。特にセレフィに何かあった場合、持ち主の激しい怒りに触れることが予想されます。

そうなりますと、何らかの理屈と手段でもって、ここにいるお偉い方々のどなたかが、今現在座っていらっしゃる椅子を外される可能性はございますわ」


 会議室の気温が一気に下がった。

 魔法局の人事に口が出せる立場の人はそういない。それができる立場の人物、魔法学校からやってきた杖。

 察しのいい人は具体的に名前が挙がるだろうし、そうでない人でもなんかヤバいなとは思うだろう。


 長い沈黙の後、銀髪の美女の「よし、解散にしよっか」の一言で、会議は終了した。




銀髪の美女から杖を手渡された時、「今度それ使うところ、見せてくれるかい。開発部に興味がありそうな奴がいるんだが」とねだられた。


許可が降りれば、と答えておいたけど。この杖の威力って、誰かにホイホイ見せてもいいものなのでしょうか、ルドルフ殿下。



 

 

やんごとなき方のお名前は秘匿しましょう

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