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第六話:『覇裟羅達(Basarians)』結成!

しばしの休憩を挟んで、封印戦は後半に突入した。

当然それぞれの思惑は異なっていた。

八刀斎「(この親を死守! 役満を一発は決める!)」

輝雷美「(ジリ貧ね。親が回って来るから、そこで決めるわ!)」

雀悟「(少なくても、勝負手を二回は決めなければ逃げ切れないだろう・・・。一回は親で。二回目は何処だ?)」

凶之介「(ラス親がある。そこまでは相手の勝負手を散らすぜ!)」

この恐ろしいルールのもとでは、勝負所はどこでも作れた。


休憩が終わり、それぞれが卓についた。八刀斎が口火を切った。

「今さら隠しても仕様がないので確認しておく。雀武帝親衛隊の輝雷美さん」

輝雷美「何かしら?」

「我々、白虎流派と青龍派は、朱雀派対策のために、同盟関係を結ぼうとしておる。玄武龍派と青龍派は既に同盟関係を結んでいる」

「それが、どうかしたの?」

「雀武帝親衛隊は中立の立場の筈だ。この勝負の結果如何(けっかいかん)では、あなた方は今後の戦いに巻き込まれるが続けるか?」

「あたしは、構わないわよ。(パパ)が何といおうと、朱雀派は嫌いだし」

「好き嫌いの話ではない。室町幕府が亡びたのも、比叡山の焼き討ちも全ては朱雀派の暴走だ。問題を全て力づくで片付けておる。そのやり方に、諸大名は危惧を抱いておる。誰しも、無駄な戦には巻き込まれたくはない。『私闘制限の詔』は、その解決策の筈だ」

「武田家は、すんなりと受け入れたんじゃないの?」

「すんなりと受け入れたと日本全国に喧伝されたが、それは嘘だ。言うなれば、勝者の特権という奴だ。結果は武田家にとって悲惨なものだった・・・」

「負けたのだから、仕方ないわね」

「是非もない・・・」

雀悟「来年早々に、朱雀派が伊賀の里を急襲するだろう。確かな情報だ」

凶之介「そんな方向に向かってんのか?」

「あまり言えないけど、雀武帝親衛隊も朱雀派とは、仲が悪くてね~」

八刀斎「言えない話ならば、無理にしなくても良い。このままお主が参加すれば、朱雀派と事を構える場合には協力してもらうことになるかも知れんが良いのか?」

「そうなれば、あたしは親衛隊から独立して参加するわ。そのかわり、あたしが勝てば全員に言うことを聞いてもらうわよ」

雀悟「何か、カン違いしているかも知れないな・・・」

「してないわよ~」輝雷美は勝負に勝って、全軍の総大将を鎌田軟骨にして、全員を鉄砲玉にして朱雀派に突っ込ませる考えだった。

「今、止めなければいけないのは朱雀派の暴走だ。全国統一を邪魔するつもりはないが、勝ち方に問題がある。この成功体験の連続はマズイ」

八刀斎「同感よ。仮想敵として朱雀派を想定し『覇裟羅』を結成する。異存はないな?」

「御意!」卓内の三人は、同意した。

雀悟「それでは、改めて指揮権争奪『封印戦』の再開だ!」

「おぉ!」道場内が盛り上がった。


【9局目】南1局  ドラ:中

 親:八刀斎【65】 南:輝雷美【20】 西:雀悟【93】 北:凶之介【72】

輝雷美「槓!」   暗槓「東南西北」

南1局  ドラ:中南

「きゃ~、やった~! W自風牌扱いだし、現物もあるからドラ5確定でしょ?」

「あぁ、そうだ。W南で合計7翻だ」八刀斎が苦々(にがにが)しげに言った。

輝雷美「また槓!」   暗槓「東南西北」 暗槓「東南西北」

南1局  ドラ:中南北

「きゃ~、やった~! W自風牌扱いだし、現物でドラ8、現物4確定でしょ?」

「あぁ、そうだ。現物4枚、W南(+4)、ドラ(8)で16翻確定だ(ヒトのラス親で、この娘は~~~・・・)」八刀斎が本格的に追い込まれた。

凶之介「しかも、暗槓二回かよ。2達で和了翻数が1.5倍じゃないか・・・暗槓2つで24翻確定って何だよ、このルールは!」

輝雷美「立直!」次巡、

「槓!」 暗槓「白白白白」

「!」そして直ぐに自模った。

凶之介「ひとりで、麻雀すんなよ」

「ゴメン遊ばせ~」

南1局  ドラ:中南北西   裏ドラ:白伍二六

伍伍六七 暗槓「白白白白」 暗槓「東南西北」 暗槓「東南西北」  自摸:八

〔立直(1)、面前自摸(1)、面前混一色(3)、三槓子(2)、三暗刻(2)、三元牌(1)、W南(4)、達成槓ドラ(12)、現物(6)、裏ドラ(7)、2達(×1.5)〕【合計39翻×1.5=58.5→59翻】


輝雷美「復活したわ! さぁ、親よ!」

「! (死んだ(パタイ)と思っていたわ、生きておったか・・・)」八刀斎が苦い顔をした。雀悟は背筋が凍る思いだった。

「(何て、破壊力だ・・・)」


【10局目】南2局  ドラ:白

 親:輝雷美【79】 南:雀悟【93】 西:凶之介【72】 北:八刀斎【65】

凶之介「また、字牌がドラかよ。この局も荒れるぜぇ~」その通りだった。

雀悟「(ポン)白發中」

「三元牌のドラ増殖かよ!」

「槓!」   暗槓「東南西北」

「少し、落ち着けよ!」雀悟は、聞く耳を持たなかった。

南2局  ドラ:白中

凶之介「今度は、お前か! 三元牌だけで+8翻じゃねぇか!」

「自摸!」 二三四伍六七八 暗槓「東南西北」 (ポン)白發中  自摸:八

「手がつけらんねぇな!」

〔混一色(2)、W南(2)、三元牌ドラ(6)、現物(2)、W達成(4)、2達(×1.5)〕【合計16翻×1.5→24翻】


雀悟「だいたい、並んだな」

凶之介「お前だけ、一人抜けているよ」

「誤差の範囲内だ」

輝雷美「あたし、立派に戦えてるわね~」

八刀斎「最後まで、何があるか分からないのが、このルールだ」


【11局目】南3局  ドラ:北

 親:雀悟【117】  南:凶之介【72】  西:八刀斎【65】  北:輝雷美【79】

凶之介「もう、字牌のドラはいいよ」

八刀斎「親が残っている者が有利よのぉ」当然ながら、毎回誰かが和了する筈もなかった。珍しく流局になった。特別裏ルールの適用である。

親:一二四伍六七七八八九九④④  

南:六七八234③④⑤⑤⑥⑦⑦  

西:778899東東東西西西白  

北:三四伍345③④⑤⑨發發發  

八刀斎「全員が聴牌か。流局時の裏ルールは、向聴数は関係ない。王牌のドラ数のみが一番多い者に加算される」

凶之介「頼むぞ~、乗ってくれよ~」

輝雷美「これって、手の広い方が有利なの?」

雀悟「このルールでは、普通の正着打(セオリー)があてにならないからな~」

凶之介「ドラ表示牌の16枚全部対象なのか? このルールらしいな!」

八刀斎「では、参る!」

南3局  ドラ(〇):北35八六②⑧南   裏ドラ(●):四七一東發2③④

親:一二四伍六七七八八九九④④  ●●〇〇〇〇〇●●(+18翻)

南:六七八234③④⑤⑤⑥⑦⑦  〇●〇●〇〇〇

西:778899東東東西西西白  ●●●

北:三四伍345③④⑤⑨發發發  ●○○●●●●●

八刀斎「親のドラが9枚じゃ。二倍となる。しかし、親流れじゃ」

凶之介「くっ~」

輝雷美「あと、ひとつ~? くっやしー!」


そして、運命のオーラスを迎えた。

【12局目】南4局[ALL LAST]  ドラ:⑤

親:凶之介【72】  南:八刀斎【65】  西:輝雷美【79】  北:雀悟【135】

雀悟「(おっと、この牌の偏りは! 楽に勝たせてはくれないね・・・ドラが中張牌(チュンチャンパイ)なのが救いだ。裏ドラの存在も危険だ。この中で立直をかけそうなのは・・・)」雀悟の千里眼は荒場を知らせてくれた。

「(全員が、起死回生の勝負手だ!)」

雀悟  33344466七七⑥⑥⑨

八刀斎 22⑤⑥東東東南南西西西北

輝雷美 二二二四四伍伍伍八八八九⑨

凶之介 1⑤東西北白白白發發中中中


≪八巡目≫

雀悟  33344466七七⑥⑥⑨  ⑥→⑨≪聴牌≫

「誰からでも、出れば和了(アガ)る!」

〔断么九(1)、対々和(2)、三暗刻(2)、蝶々の舞い(2)、 豊穣の海(2)〕【確定9翻】

待ちは両面でも何でもよかった。しかし最終形で敢えて双碰(シャンポン)待ちになるようにした。それは、牌山が教えてくれたからだ。


八刀斎 22⑤⑥東東東南南西西西北  北→ 槓「東南西北」

22⑤⑥東東南西西北  槓「東南西北」   北→ 槓「東南西北」

22⑤⑥東西北  槓「東南西北」 槓「東南西北」 南→ 槓「東南西北」

22⑤⑥     槓「東南西北」 槓「東南西北」 槓「東南西北」 ⑨→⑨≪聴牌≫

凶之介「? 三回槓の成立で和了らないのか?」

「済まんな、小四喜では足りん」


南4局[ALL LAST]  ドラ:⑤②⑧⑥

〔小四喜(12)、三槓子(2)、三暗刻(2)、W南(6)、ドラ(2)、達成3回(×2)〕【確定24翻×2→48翻】→113

「何だよ! 整ってんのか? 危ねぇ、じじぃだ!」

「・・・」身の縮まるような一瞬だった。大四喜の聴牌になったので、誰から出ても逆転だった。

〔大四喜(24)、三槓子(2)、三暗刻(2)、W南(6)、ドラ(2)、達成3回(×2)〕【確定36翻×2→72翻】→137


「ドラは、筒子ばかりかよ! 偏ってるな~」喋っているのは、凶之介だけだった。


輝雷美 二二二四四伍伍伍八八八九⑨

「あたしの番ね。一気に和了るわよ!」

二二二四四伍伍伍八八八九⑨ 八→ 槓「八八八八」

二二二四四伍伍伍九⑨ 槓「八八八八」 伍→槓「伍伍伍伍」 

二二二四四九⑨    槓「伍伍伍伍」 槓「八八八八」 二→ 槓「二二二二」

四四九⑨       槓「二二二二」 槓「伍伍伍伍」 槓「八八八八」 九→⑨

四四九九       槓「二二二二」 槓「伍伍伍伍」 槓「八八八八」 ≪聴牌≫


南4局[ALL LAST]  ドラ:⑤②⑧⑥二伍1

〔清一色(6)、対々和(2)、三暗刻(2)、三槓子(2)、 ドラ(8)〕【確定20翻】→99

「(ん~、これだけ派手なのに、足りないわね~)」


「もぅ、回って来ねぇのかと思ったぜ!」凶之介の不幸は、達成槓と槓が合計8回成立してしまっていたことだった。おまけに三元牌はどれも手中にあった。ド迫力の聴牌だったが、封印戦においては破壊力に欠けた。

凶之介 1⑤東西北白白白發發中中中 南→ 槓「東南西北」

1⑤白白白發發中中中 槓「東南西北」 中→ 槓「中中中中」

1⑤白白白發發 槓「東南西北」 槓「中中中中」 發→⑤

1白白白發發發 槓「東南西北」 槓「中中中中」 ≪聴牌≫


南4局[ALL LAST]  ドラ:⑤②⑧⑥二伍1③①①

〔大三元(12)、対々和(2)、三暗刻(2)、混一色(2)、 混老頭(2)、親(×1.5)〕【確定20翻×1.5→30翻】→102

「(達成しないと、迫力にかけるな~)」


その後、凶之介が七を掴んだが「白」を切って降りた。場がザワついた。

「えっ? 降りんの?」

「ここは、勝負だろう!」

「何考えてんだ?」一瞬、雀悟や八刀斎を焦らせたが、ふたりとも顔色は変えなかった。

「(届かぬか・・・)」

「・・・」輝雷美は無言だった。そして次の自摸で、輝雷美も「九」を切って降りた。

「(届かぬのであろう・・・)」

「・・・」これで、雀悟と八刀斎の一騎打ちとなった。雀悟は涼しい顔で⑧を自摸切ったが、八刀斎が顔色を変えることはなかった。

そして、同巡に八刀斎が6を掴んで、雀悟に振り込んだ。

「ロン! この場では、勝たせて貰います!」

「うむ!」潔い受け入れ方だった。


雀悟「ここに、対朱雀派を仮想敵とする『覇裟羅達』(Basarians)を結成する。勘違いして欲しくないのは、飽くまでも朱雀派の暴走を止めるための組織である! 我々は、政治判断する組織ではない。以上!」

「御意!」

八刀斎「我々白虎流派は、非常時において、『白虎龍派』と名乗り、青龍派の指示に従います」

「うむ、力を貸してくれ」

「御意!」白虎龍派は、門弟一同が八刀斎とともにひれ伏した。


雀悟「(しかし、忍び集団の結束は必要だ!)」

一馬は既に、黒脛巾組とともに伊賀に走っていた。


〔第六話:『覇裟羅達(Basarians)』結成!〕終わり

(第四部:天正伊賀の乱編)第一話:背徳の系譜」に続く


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