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第四話:接待麻雀 in 厳島神社 漂流中

一馬や雀悟が到着する前日に、道万凶之介は、白虎流派の道場を訪れていた。

八刀斎「不思議よのぅ。白虎流派でも青龍派でもないお主が、柳田虎之助のことをそれほどまでに気にするとは。人徳よのぅ」

凶之介「柳田さんは、もとは白虎流派なのか? 何で青龍派にいたんだ?」

「雀武帝親衛隊の発足と同時に、白虎流派から雀武帝親衛隊への出向を命じられたのだ。雀武帝特別ルール 十二の役の一つである『白虎』と引き換えにな。いらんわ、あんな手役。そして、雀武帝親衛隊へ配属された途端に、青龍派への所属になった。訳が分からん。白虎流派にとっては、何の利益(メリット)も無い」

「たらい回しにされて、怒っていたんじゃないか?」

「そうかもしれんのぅ。人一倍権力の腐敗を嫌っておった。『覇裟羅』の思想が強い奴じゃった。考えを見透かされて、忌み嫌われたのかも知れん」

「白虎流派の全員が『覇裟羅』じゃないのか?」

「そうではない。『覇裟羅』は、突出した悪が芽生えた時に自然萌芽するのだ。まだまだ、これからだよ」

「突出した悪って何だよ?」

「気付かんのか? 今自然に包囲網が出来ておるだろう?」

「!」

「中立の筈の、雀武帝親衛隊まで巻き込んでおる。皆が嫌な予感がしておる証拠だ」

「頓証寺の坊主が『天承の世の恨みが、天正の世で、天翔によって晴らされる』とか、言っていたが?」

「今、一番動き回っているのが青龍派だ。乱世の鍵は、青龍派が握っておる。お前はどちらにつく気じゃ?」

「玄武龍派では、青龍派だが、まだ分かんねぇよ」

「確かめてみるが良い。『封印戦』に参加させよう」

「ありがてぇぜ!」こうして、凶之介の参加が急遽、決まった。


翌日、青龍派が白虎流派の道場に到着した。その翌日に、鎌田軟骨が大暴れし場を乱した。不破輝雷美の乱入もあり現場は騒然とした。

『封印戦』の当日の朝のことだった。輝雷美に、親衛隊本部より伝令が届いた。白虎流派と、青龍派の親善試合に介入を促す内容だった。

輝雷美「もぅ~! うっるさいわねー!」

伝令「これも、雷獣師範代から直接の伝令です。心してお引き受けください」

「分かったわよー!」輝雷美が嫌々ながらに介入した。


【厳島神社】現在の広島県(ひろしまけん)廿日市市(はつかいちし)にある、松島市(宮城県)、天橋立(京都府)とともに日本三景の一つに数えられる。古くは、平安時代に平清盛によって社殿が整備されたことでも有名。1996年にユネスコの世界文化遺産に登録された。干潮時には、大鳥居まで歩いて行ける。


蠣崎は、5m四方もある筏を用意していた。その上に座卓と麻雀牌を用意し、海上での麻雀を企画していた。一馬は別の船でついて行った。昼食も、お茶も茶菓子も万全だった。

蠣崎「さぁ、麻雀が終わるまでに何処に流されるか、潮流以外には分かりません。夕方までには岸に戻れる予定ですが、お約束できません。岸に戻れるまでお楽しみください」

一馬「なんとも、長閑(のどか)な麻雀だ」

氷月「本当に、あたいと碧ちゃんで大丈夫なの?」

碧竜「久しぶりの麻雀です」

蠣崎「お相手するのは、二ツ橋征一郎(せいいちろう)征子(せいこ)です」

一馬「だろうね・・・」

氷月「わっかりやす~い」三人とも、二ツ橋征二が白虎流派と通じていることを悟った。

「・・・」蠣崎たちは無表情だった。


蠣崎「【漂流戦】は、兎に角和了(あが)れば、ポイントになります。半荘一回で、ポイントの多い人が勝ちです。同じポイントの場合、上家取りになります。放銃による減点はありません。錯和(チョンボ)以外に減点要因は特にありませんので、安心してお遊びください」

「気が楽ね~」

「ルールが緩そうで、重圧がありません」

「初心者は、面子を四つと雀頭一つ作ることが大変です。和了っても、両面待ちにしてもポイントが付くことは嬉しいことです。兎に角和了(あが)りまくって、楽しんで頂きます。我々は、ほぼ空気になるのでご安心ください」

「碧ちゃんには、負けないわよ」

「私も、全力で戦います」

「俺は、寝てるよ。何かあったら、起こしてくれ」一馬の緊張は緩んだ。沖合に出ないように、大鳥居が見える範囲内で漂流しながら麻雀を打った。戦意も悪意も感じられない緩い麻雀だった。


【漂流戦】 初心者歓迎企画・接待戦ルール

[+1ポイント付くもの] 和了、ドラ(1つにつき)、両面待ち、一発、裏ドラ(1つにつき)、親であること

[+2ポイント付くもの] 面前自摸、立直、役牌、平和、断么九、三面待ち以上

[+3ポイント付くもの] 対々和、混一色、七対子、鳴いた三色、鳴いた一気通貫、二翻までの何かしらの手役

[+5ポイント付くもの] 面前三色同順、面前一気通貫、三翻以上の手役

[-1ポイントの減点要因] 錯和(チョンボ)二回、悪口、放屁(おなら)邪魔矻(じゃまポン)、マナー違反、など


一馬「役牌の扱いに対して、ドラや一発の扱いが低いな」

潤之介「ドラや一発の刺激は、初心者には毒です。楽しい麻雀を知って頂くのが『漂流戦』の目的です」

「なるほど、それは健全だ」


【1局目】東1局  ドラ:5

 親:征一郎   南:碧竜    西:征子    北:氷月

氷月「ん~? これは、和了でいいのかな?」

 234一二三⑤⑤⑥⑦⑧北北   自摸:北

征一郎「お見事です。面前自摸(+2)、役牌(+2)、和了(+1)でプラス5ポイントです」

「こんなのでいいの? 何でも和了(あが)れば、いいの? 助かるわ」

「初心者に、麻雀を楽しんで頂くためのルールです」

「あたい、『双子の天使』得意よ」

「スゴイです! あんな難しい役を・・・」

一馬「一回、和了ったことが、あるだけだろう」

「ぷ~。それでも得意だもん。あの役は、あたいのものよ」

「分かった、分かった」一馬は、氷月を(なだ)めた。


【2局目】東2局  ドラ:③

 親:碧竜   南:征子    西:氷月【+5】   北:征一郎

碧竜「(ポン)」  (ポン)999

その五巡後に和了った。

123七八⑥⑥⑦⑧⑨  (ポン)999  自摸:九

征一郎「お見事です。和了(+1)、親(+1)、両面待ち(+1)でプラス3ポイントです」

「済みません。すぐに追いついてしまいます」

「い~よ~、次はあたいが和了るもん」


【3局目】東2局一本場  ドラ:東

 親:碧竜【+3】  南:征子    西:氷月【+5】   北:征一郎

氷月「ん~。一馬、どっちを切るの?」

一馬「ひとりで考えなさい」

「ぷ~」氷月は、頬を膨らませることが多くなった。こうすると要求が通りやすいと学習してきた。

「こっちね。⑤を切った」

二三四②③④⑥⑦⑧234東

碧竜「私は親ですが、これはいりません 東」

「ロン! やった!」

一馬「おい、おい、それは東切りだろ~」

「だって、三色が無くなっちゃうかも知れないでしょ? 碧ちゃんから出たし」

「まぁ、そうか・・・(楽しそうだし、いいか・・・)」和了(あが)りきった事で、文句も言えなかった。

征一郎「お見事です。三色同順(5)、和了(1)、ドラ(2)の+8ポイントです」

「やった~!」

「ドラで、振り込んだのが痛いです」

「大丈夫です。放銃によるペナルティーはありません」

「それは、助かります」お茶を飲みながら、大福を食べながらの長閑な麻雀が続いた。


【4局目】東3局  ドラ:白

 親:征子   南:氷月【+13】    西:征一郎   北:碧竜【+3】

碧竜「(ポン)④④④」

(ポン)西西西」

「自摸です」

伍伍伍⑧⑧⑧白  (ポン)④④④  (ポン)西西西  自摸:白

征一郎「お見事です。対々和(3)、和了(1)、ドラ(2)の+6ポイントです」

「碧竜は、相変わらず、対々和に何もつかないな」

「癖になってしまいました」碧竜は照れた。

「まだ、あたいの勝ちよ」


【5局目】東4局  ドラ:三

 親:氷月【+13】   南:征一郎    西:碧竜【+9】   北:征子

氷月「ん~、立直!」

三四伍③④⑤⑥⑦⑧⑧345 

一馬「(い~のが、入ったね)」そして、順当に二巡後に⑤を自模った。

「やった~! これ、何点?」

征一郎「お見事です。立直(+2)、面前自摸(+2)、和了(+1)、三色同順(+5)、断么九(+2)、三面待ち(+2)、平和(+2)、ドラ(+1)、親(+1)で、プラス18ポイントです。一発と裏ドラを除けば、このルールで考えられる限りの最高得点です」

「やった~! あたいは、三色同順得意なの」

「スゴイ、スゴイ」一馬は、普通に感心した。


【6局目】東4局一本場  ドラ:中

 親:氷月【+31】   南:征一郎    西:碧竜【+9】   北:征子

碧竜「これは、もう追いつけそうにはありませんね~」

氷月「なんでも、和了っていいわよ~」

そして、征一郎が静かに和了った。氷月の勝ちを確定させるためだけの和了だった。

一二三六七八③④⑤9   (ポン)西西西  自摸:9

征一郎「失礼しました。和了だけです」


【結果】

一位:氷月【+31】  二位:碧竜【+9】  三位:征一郎【+1】 四位:征子

氷月「あ~、楽しかった」

碧竜「ルールが緩いので、何時間でも続けられそうです」

征一郎「麻雀人口が増えれば、何よりです」

一馬「いいのかね? こんな緩い麻雀で?」

「構いません。普通に戦っても、我々では一馬さまには勝てません。雀悟さまと二人揃われると厄介です。こちらに一馬さまを釘付けにさせて頂きました」

「だろうね。向こうもそれなりに強いが?」


蠣崎「存じ上げております。師範代達には、より厳しいルールで戦って頂きます。【封印戦】は、超インフレの過酷なルールになります」

「ほぉ、それは興味深いな」

「玄武龍派から、道万凶之介さまもおいでだそうです。参加されるかも知れません」

「不破輝雷美もいるしな。タダじゃ済まないだろう」

【封印戦】は、麻雀界の常識を覆す超インフレ麻雀であり、刺激を求めすぎた者たちの最後に行きつく先だった。


〔第五話: 封印戦 超インフレ麻雀〕に続く


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