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第9話 決着

 劉備が前線へ出たと聞いて、ハンやグラッケンは驚いていた。


 「治癒魔法が使えるとはいえ、劉備さんはまともに戦える術を剣術以外には持ち合わせていないはず……。皆さんの治療や援護に向かったのでしょうか……。」

 「ホッパーやヘンリー、ヒューゴたちが一斉にかかって苦戦してるってことは、あのシェリカってのは相当なバケモンのはずだ……。旦那は大丈夫なのか?」


 ハンとグラッケンが心配そうに話していると、グレースがやってきた。


 「今の劉備さんならきっと大丈夫……。」

 「グレース、お前は何か聞いているのか?」


 グラッケンの問いに、グレースは数日前の出来事について話した――。


 

 「白い花!?そりゃどういうことだ……?」

 「それって基本属性のどれにも当てはまっていないですよね?」


 「はい……。イリスの種から基本属性以外の色の花が咲くなんて……、昔読んだ本でもそんな記録は見たことがなくて……。」

 「俺もそんな話は聞いたことがないな……。基本的に5色に分かれるもんだと思っていたが……。それで旦那は結局何の魔法に適性があったんだ?」

 「それが……」


 グレースは少し戸惑ったような表情で続けた。

 「そのあと基本属性の魔法を一通り試したのだけど、結局どれも扱うことができなくて……。」

 

 「あれだけの治癒魔法を行使できるのに、基本属性がからっきしだとは……。」

 グラッケンは少し驚いた様子だった。

 

 「それって珍しいことなんですか?」

 「まあ基本属性の魔法が使えねぇってのは無い話じゃ無いんだが、劉備の旦那がってのは違和感がある気がしてな。そもそもマナを利用してる時点で俺たちの常識とは違うのかもしれないが……。」


 「だけど、劉備さんが扱える魔法がなかったわけではなくて……。」

 「どういうことだ?」


 グレースは少し間をおいて口を開いた。

 「劉備さんは唯一、『光魔法』の行使ができたの……。」


 「光魔法だと……!?」


 「光魔法って扱える人が限られてるんじゃなかったですか?」

 「はい。遥か昔に強力な光魔法を扱う者が、この世界を救ったという話が御伽話にもあるのですが、それ以外ではかつて天界に住んでいたという天使族や、その末裔と言われている一部上位の聖職者など、限られた者にしか扱えない魔法と言われています……。」


 「まあ御伽話や天使族の話ってのはどこまで信憑性のあるもんかわからんところがあるがな……。」

 グラッケンがそう言うと、グレースが少しだけ不満そうな顔をしている。

 

 「そ、それにしても光魔法……、それが白い花の原因ってことなんでしょうか。」

 ハンが話を戻しつつそう呟くと、グレースが賛同するように答えた。

 

 「私も同じことを考えていました。あくまで憶測ですが、白い花の開花は、光魔法への適性を示すのではないかと。」

 「たしかにそれが一番しっくりくるかもしれないな。それで旦那は光魔法を自由に扱えるのか?」


 グラッケンの問いに、少し表情が曇ったグレースが答える。

 「正直、特訓の時間が十分じゃなくて……。」

 「旦那とはいえ、そう簡単にはいかねぇか……。あの人の素質を信じるしか……」


 劉備さん……。

 

 非戦闘員であるハンたちは、戦場の皆を信じることしかできないことにやるせなさを感じていた――――。

 


 劉備とシェリカはどちらも譲らず、激しい攻防を繰り広げていた。


 「へぇ、人間にしちゃいい動きするねぇ。ちょっとは楽しめそうじゃないか!」

 「私は楽しむ気などないのだが。」


 そう言った瞬間、劉備はもう一本の剣を抜き不意を突いた。

 しかし一瞬の反応でそれを弾くシェリカ。

 「双剣使いか。今までは手加減してくれてたのかい?」

 

 「さすがに動きが人間離れしておるな。其方が私の世界にいれば良い将軍になったであろうに。」

 「なーに訳わかんねぇことを。その余裕ぶっこいた態度もムカついてきたね。」

 

 次の瞬間、シェリカの身体から膨大な雷が漏れ出し、周りの地面が(めく)れ上がる。

 「そろそろ決着をつけようじゃないか人間。」

 「うむ、その強さに深く敬意を払って、討ち伏せよう。」


 「ほざけ!!!!」

 膨大な魔力を纏ったシェリカが劉備目掛けて飛びかかった。


 「りゅ、劉備さん!!!あれはまずい……!!……くそっ!!」

 ホッパーたちは身体を起こそうとするが、まだ身体が言うことを聞かず起き上がれない。

 

 劉備は動きを止め目を閉じている。

 「諦めやがったか!随分と潔いなぁ!おい!!」

 シェリカは渾身の雷を纏った拳を、劉備へと炸裂させる、その直前だった。


 劉備が目を開いた瞬間、全身から眩しく光る魔力が放出され、激しい爆風と煙で辺りは覆い尽くされた。


 「劉備さん!!!!」

 大きな爆発音がホッパーたちの叫び声をかき消す。


 煙の渦が巻き起こる中、静寂がしばらくその場を包み込んだ。

 相当な爆発音だったためか、各戦場から両軍が集まってきていた。


 そして、薄れてきた煙の中から一人の影が姿を現した。


 「…………勝どきを上げるのだ!!!敵将シェリカ、この劉備玄徳が討ち取ったり!!!」



 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 劉備の掛け声により、その場にいたハーフリングたちが一斉に歓声を上げた。



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