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第7話 獣人族の実力

 シェリカの雷を纏った爪の斬撃を、ホッパーは剣で受け止めた。


 「へぇ、ガキんちょのくせにやるじゃないか。」

 「ガキんちょじゃないって言ってるだろ……!」

 「あはは、受け止めるので精一杯か?」


 次の瞬間シェリカの蹴りがホッパーの横っ腹を(えぐ)る。

 「ぐふっ……!?」


 ホッパーは蹴り飛ばされうずくまる。

 「戦闘経験が違うんだよ、お前らあまちゃん種族とはな。」


 するとそこへ数名のハーフリングたちが集まってきた。


 「おい!なんでも一人で背負い込もうとするな!格好つけやがって。」

 「ヘンリーの言う通りだ。昔から何でも一緒にやってきたじゃないか。」


 「お、お前ら……!」

 集まってきたのはヘンリーとヒューゴの部隊だった。

 

 「小さいのがまたちょこまかと。」

 シェリカの身体を纏う雷が強くなる。


 「久々にあれ、いくぞ!」

 ヘンリーが声を上げる。


 「よし、頼む!」

 ホッパーの掛け声でヘンリーが地面に手を置く。


 「粘土円蓋(クレイドーム)!!!」

 ヘンリーが声を上げた瞬間、シェリカを覆うように丸い土の壁が現れた。


 「ヒューゴ!」

 「わかっている。小滝連射(カスケード)!」


 ドーム型の土壁の中で、大量の水が勢いよく放出された。


 「な、なんだこりゃ!?」

 

 「仕上げだ!風投剣(ウィンドスター)!!」

 ホッパーが叫ぶと、水の中に大きな渦が出現し、細かくシェリカの身体を切りつけた。


 「よっしゃ!決まった!!」

 ヘンリーが声を上げた直後、ドーム型の土から膨大な電気が溢れ出し爆発が起きた――。

 

 「好き放題やってくれるじゃないか……、こんな子供騙しをくらうとは……」

 爆煙の中、擦り傷だらけのシェリカが身体中から蒸気を上げ、激しい剣幕で現れた。

 

 「くそっ……この程度じゃ倒れないか……。」

 ホッパーたちが次の作戦に動こうとしている中、シェリカが超スピードで一人一人に一撃を繰り出す。


 「オラ!オラァ!!オラァァァァ!!!」

 三人は瞬く間に蹴られ、激しく吹き飛んだ。


 「次はどいつだぁぁ!!」――――。


 

 その頃、第五部隊のホイットニーとハイルがセレーヌと対峙していた。

 

 「厄介だなぁあの動き。ハイルちゃん、どうにかならない?」

 「ん~、僕の専門分野じゃないですが……。ってかホイットニーさんまだ何もしてないじゃないですか……。」


 セレーヌの軽やかな身のこなしに、ホイットニーとハイルは攻めあぐねていた。

 

 「もう降参したらどうかなぁ?私、正直姉さんやサラみたいに戦いが好きなわけじゃないのよねぇ。」

 「申し訳ないですが、それだけはお断りです。……では、泥濘地獄(マッドヘル)!」

 

 ハイルが地に手を置くと、地面がセレーヌの足を巻き込みながら急激に沈み始める。

 

 「あら。」

 一瞬戸惑ったセレーヌの隙を突こうと、ホイットニーが素早く切り掛かる。

 しかし、足の動きを封じられながらも、セレーヌは巧みな剣裁きでそれを受け止めた。


 次の瞬間、ホイットニーは低く姿勢を落とし、動けない足目掛けて剣を振った。

 

 「悪くはないけれど……」

 するとセレーヌの足の周りに、高速で回転する風の渦が出現し、泥ごとホイットニーの攻撃を吹き飛ばしてしまった。

 

 「うそん……!?」

 「ごめんね、私には効かないみたい。」

 

 「今のはちょっと惜しかったですね。でも顔、泥まみれですよ。カッコ悪いですね。」

 「当たり強いよねぇ、ハイルちゃん……。」


 そんな二人を横目に、セレーヌは妹のサラを気にかけていた。

(「あの子ったらどこへ行ったのかしら。また好き勝手行動して……。」)――――。



 セレーヌが心配していた通り、三女のサラは隊を離れ一人で行動していた。そこへハンナ率いる第四部隊が現れる。


 「ちょっとそこのあなた。こんなところで何してるのかしら?もしかして一人?」

 ハンナはサラに剣を向ける。


 「……別に何も。」

 

 「……そんなわけないでしょ!あなたたちから攻めてきたのよ!?」

 「姉さん落ち着いて……!」

 いきりたつ姉をピノが(なだ)める。


 「もういいわ、この子は私が止める。ピノ、あなたは隊を連れて他部隊の援護に行きなさい。敵一人に1部隊で相手をするのは効率が悪すぎるもの。」

 「姉さん一人で?それは危険だよ!僕は残るから、皆んな僕らが戻るまで他部隊の援護にまわってくれ!」

 

 そうして第四部隊は隊長と副長を除き戦線の中心へ戻った。

 

 「仕方ない、二人でやってすぐ終わらせるよ!ピノ!」

 「わかってる!」


 その瞬間ピノはものすごいスピードでサラへ飛びかかった。しかしサラは表情ひとつ変えずに受け流す。

 「へぇ、このスピードに反応できるんだ。」

 「……でも、うちのねえねより早いかも。」


 ピノはすぐに体勢を整え連続で攻撃を浴びせる。

 そのとき、サラの体重移動が微かに乱れたのをハンナは見逃さなかった。


 「ここだ!」

 ハンナがすかさず切り掛かる。しかしサラは柔軟に身体を捻り回避、そのままハンナの顔側面に右足が炸裂。ピノもろとも蹴り飛ばした。


 「ぐぁっ……!!」


 「……動きは、悪くないと思う。」

 うずくまる二人を見ながら呟くサラ。

 

 「なっ……なんなのあの動き……。」

 「読めないね、あの動き……。かなり強いよこの人。」


 「……まだやれる?」

 サラが変わらず無表情で呟いた。


 「いつまでも舐められて……、起きなさいピノ!」

 「お、落ち着いて姉さん!敵の挑発に乗っちゃだめだ!」


 「まだまだ相手してあげるわ!!覚悟しなさいもふもふ娘!」


 「……もふもふ娘?」

 首を傾げるサラに、ハンナとピノは勢いよく飛びかかった。


 

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