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第21話 両隊の帰還

 「テティ。」

 魔河童族(リバーインプ)長ハノメが、部下と思われる者へ耳打ちをしている。

 

 「それじゃ留守は任せたよ。」

 他の魔河童たちへそう言葉をかけ、ハノメはわずか数人の部下と共にシェリカ隊に同行した。



 同じように来た道を戻ったが、やはり道が悪く村にたどり着くまでにかなりの時間を要した。

 

 シェリカ隊が村の中へ入ると、何やら騒がしい。

 妖狐(テウメッサ)族の縄張りは比較的近かったのもあり、少し前にシレノス隊が戻っているようだった。


 「おぉ戻ったか!全員無事そうだな。」

 騒がしい方へ行くとヘンリーたちシレノス隊の面々が出迎えた。


 「皆さんお疲れ様でした。姉さんもサラも無事ね。」

 「セレーヌ、この騒ぎは何だ?」

 「それが……。」



 セレーヌによると、妖狐との戦いでシレノスが右手首を失い、また妖狐の族長ルナールが瀕死状態だったため連れ帰り、他の妖狐たちも含め劉備の手当てを受けているらしい。

 シレノスの手首は問題なく再生され、ルナールたち妖狐族も手当ては無事に済んだが、意識が戻るなりルナールが大暴れしたらしい。


 「ケイロンさんとシレノスさんで抑え込んで、今は静かにしているのだけれど、さっきまで大変だったわ。やっと落ち着いたから、これから話をするみたいね。ところでそちらは……?」

 「あぁ、こいつが魔河童族長だ。大将のとこに連れて行かなきゃな。」

 

 「もう雑な紹介だなぁ。はじめまして、魔河童族長のハノメです!以後お見知り置きを。」

 「あら、あなたが。想像していたよりずっと紳士ね。私はセレーヌよ。」


 そうしてルナールと話をしているという劉備のもとへ、ハノメも連れて行くことに。

 

 ハン達が広場へ行くと、劉備がルナールと向き合い座っていた。少し後ろでケイロンとシレノスがいつでも動けるように控えているようだ。

 

 「劉備さん、今戻りました。」

 「おうハン、シェリカたちも無事に戻ったか。ご苦労であった。」


 劉備が笑顔で出迎える。

 近くへ寄ると、ルナールの足元の地面が所々(えぐ)れている。相当暴れたのだろう……。

 

 「私は他種族とは馴れ合わん。ましてやトップが人間だと?笑わせる……。」

 ルナールがブツブツと不満を漏らしている。


 「我らにすら敵わなかったというのに、何を言うかと思えば。」

 「貴様ぁ……、今一度その手を失いたいようだな。次はその身体を真っ二つにしてくれる!!!」


 シレノスとルナールが煽り合う。


 「シレノスも煽るな!ややこしくなる!」

 ケイロンがシレノスを諭す。


 「ははは!元気で良いではないか!ではルナール、其方は何を望む?」

 劉備はまっすぐな眼差しでルナールに投げかけた。


 「……我々は確かに敗北したが、弱き人間と共存など断じてありえん。どんなハッタリを使ってここにいる者たちを取り込んだのかは知らんが、我々妖狐は騙せんぞ?貴様の力を示してみよ!絶対的な力を。」


 「そうか力か。実力行使というのは、どうも性に合わんのだが……。」

 「フンっ。ただ死ぬのが怖いのであろう?これだから人間は。だが出来ないのなら、我々が求めるのは"死"だ。か弱き人間と共存など、ただの生き地獄であるからな。」


 「テメェ……、負けた雑魚が何偉そうに吠えてんだ?お望み通り私が叩き潰してやるよ!おい犬っころ!!」

 「もう姉さん……!」

 「それじゃ意味ないでしょう……!」

 ブチギレたシェリカが飛びかかろうとするのを、セレーヌとホッパーが止める。


 力で認めさせる。確かに今まで劉備が避けてきたところではあるが、劉備が何も言わずに立ち上がった。


 「わかった。其方たちに死なれては本末転倒なのでな。して、1対1でよろしいのか?」

 「貴様の力を見るのだ。当然1人でかかってこい。私が相手をしてやる。」


 劉備はルナールが1頭で良いのかという意味で聞いていたが、劉備を舐めきっているルナールにはその意味が伝わっていないようだった。


 「ははは!それはもっともであるな。では場所を移そう。」


 そうして一同は、普段の訓練を行う演習場へ場所を移し、いよいよ劉備とルナールが向かい合った。

 劉備の戦いを一目見ようと、村の住人達もこぞって野次馬をしている。


 「ただ倒せば良いのか?」

 「倒せるのならな!私は本気で殺すつもりでかかるぞ?誰も止めることは許さん。」


 ルナールは、終始冷静な劉備に腹を立てているようだった。

 しかし数で大きく劣る自分達にとって、トップとの一騎打ちはこの上ないチャンスとも考えていた。


 「良かろう。皆も手出しは無用である。……では始めよう。いつでも良いぞ?」

 「グルァ……いつまでも平静を保ちよって……。人間が調子に乗るなぁ!!!」


 痺れを切らしたルナールが、真正面から劉備に飛びかかった。

 劉備の治療によって、その動きはすでに全回復しているようだった。


 ルナールの痛烈な爪が劉備に襲いかかる。

 しかし劉備は、一切防御や回避の動作を見せず、その場に立ち尽くしている。


 「動きに付いてこれないようだな。死ねぇぇ!!!」


 ルナールの攻撃が劉備に当たる瞬間だった。

 劉備の身体に触れることなくルナールは弾き飛ばされた。


 「!?」


 

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