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第11話 魔女の日常

 近頃、外が何やら騒がしい。この地に暮らし始めて、何百年?何千年?

 ……細かなことなど覚えていないが、とにかく、あまり馴染みのない騒がしさだ。


 昔は私以外に誰もいなかったと思うが、今やあらゆる種族が棲みついて、勝手に争っていらっしゃる。私にゃ関係ないし、特別興味もないけれど。


 私はこう見えて結構忙しいのである。世の中にあるおもしr…… 興味深いことを追求し、日々研究しているのだ。

 最近はというと、スライムの実験にハマっている。本来彼らは自我や知能など持たず、大したスキルや能力もない。動く植物といえばイメージがつくだろう。そんな、この世のカースト最底辺のような彼らが、ある時とても愛おしく感じてしまった。きっと私は長く生き過ぎたのだろう。

 私は彼らに、できる限りの能力を授けてみることにした。


 始めに授けたのは、『自我』と『知能』。私自身の細胞をチョチョイとやって、ちっちゃーな脳みそを作った。まあ言わば私のクローンみたいなものだ。と言っても、この崇高な私のまんまコピーとまではいかず、いや程遠く、幼い子供程度のものが限界だった。だがこれで、ようやく意思疎通ができるようになった。

 そこからは個人的に便利そうな能力を授けていくことにした。


 まずは『掃除』だ。あらゆる物質を取り込み、消化できるという便利な能力である。これで、少々やんちゃに戯れ合っていた不要な物質たちが、一気に片付いた。最高だ。

 

 続いて『洗浄』。掃除に近いが、こちらは物質に付着する汚れのみを除去してくれる。衣服の洗濯はもちろん、床や壁なんかもピカピカである。


 そして『炊事』。腹が減ったらそれを満たすという単純作業がどうも面倒だったが、彼らに私の完全無欠栄養食レシピを授け、定期的に用意させている。長生きの秘訣はここにある。(絶対に嘘)


 あとはちょっとした擬態化や簡単な魔法なんかを叩き込んでいった。すでにスライムとしては存在し得なかった、最上位家政婦スライムと言えるだろう。

 おかげで毎日ストレスなくたのs…… 研究に勤しむことができているというわけだ。


 今やその個体が細胞分裂で増殖し、100体以上はいる。ちょっと増え過ぎたので、必要な数体を残し大部分は近くの森林に住まわせている。

 念の為、奴らの生活区域に結界をかけ私以外にはスライムたちの姿が見えないようにしている。(はた)から見ればただの何てことない森に見えているはずだが、念には念を、守るべきルールを設けた。

 

 ・許可なく勝手に増えないこと

 ・あまり目立つような動きはしないこと

 ・万が一他種族と接触しても(おそらくないが)普通のスライムを装うこと

 ・私のことは絶対に口外しないこと。


 以上を原則として釘を刺してある。


 そして最近私が取り掛かっているのは、ある程度攻撃や防衛もできるようにということで、体内から放出する猛毒を研究中だ。あらゆる毒を分析・調合し、いい感じのヤバいのが出来上がれば、彼らの中に仕込もうと目論んでいる。


 そして本日!なんだか調子がいいみたいで、いつもより調合がスムーズに進んでいる。お鍋の中で毒同士が互いを高め合い、素晴らしい香りを漂わせている。今すぐにでもこの綺麗な鼻が引きちぎれそうだ。


 と、その時、その可憐な香りに刺激され……。


 「うふぇっっっくしょぉぉぉぉんんん!!!!!」

 

 全身が浮かび上がるほどのくしゃみによって、毒入りお鍋は大爆発。そこらじゅうに猛毒が散乱してしまった。


 あーあ、また失敗。今のは惜しかったのになぁ。

 爆発によって巻き起こったいやーな感じの毒ガスが、窓から外へ出ていってしまった。今日の風は南向き。南にいる方々ごめんなさい。そのうち自然に消えると思いますので。


 さすがの私もちょっと目眩がするので、今日はもう寝ますね…………。

 おやすみなさい…………。

 

 

 どこぞやの魔女の日常であった。



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