墓参り 3
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夜――
ふと、灯台の炎が弱くなってきたのを感じて、千早は書き物をする手を止めて顔を上げた。
すると、視界の端に、静かに控えているユキの姿が映る。
部屋の隅に、息を殺すようにして座っているユキを見て、千早はまだ起きていたのかと目を見張った。
そして、そう言えば下がれと言っていなかったことを思い出す。
筆をおいた千早は、ユキに油を持って来させようかと考えてやめた。
障子越しに見る外はかなり暗い。部屋の中もぐっと冷えていた。あのように部屋の隅にいたら寒かろう。
「ユキ」
呼べば顔を上げた彼女が、しずしずと近づいてくる。
手を伸ばして彼女の指先に触れれば、やはり冷たくなっていた。
千早はひとつ息を吐いて、火桶の側に寄るように彼女に命じる。
ユキは戸惑いを浮かべながらも、素直に火桶のそばまで寄った。
「そこで少し温まってから部屋に戻れ」
「……はい」
ユキは恐ろしいほどに従順だ。
千早の命令に決して「否」を唱えることはない。
最近、それが少々面白くないと思うのは何故だろうか。
彼女に否と言わせてみたくて仕方がない自分は、ひねくれているのかもしれない。
(この女が断りそうなことと言ったらなんだろうか)
温かいのが気持ちいいのか、表情が柔らんだユキの横顔を見ながら考える。
ずいぶん長い間、寒い部屋の隅にいたのだろう。
血色がなくなっている頬を見ながら千早はにやりと笑った。
「ユキ、訂正だ。今夜はここで、俺の懐炉がわりになれ」
さあ、さすがにこれには否と言うだろう。
どんな顔で拒否を示すのかと、愉快な気持ちで眺めていると、ユキはぱちりぱりりといつものように緩慢に瞬きをして、こくりと首肯した。
「はい」
千早は、絶句した。
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