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128. 神殿からの挑戦

 レヴィアは厳しい表情を崩さず、さらに言葉を重ねる。


「そうじゃ、お主がミスれば旦那が死に、我々全滅じゃ。必死に見抜け! あ奴はまだ戦闘に慣れてないから、きっと付け入るスキがあるはずじゃ」


 ドロシーの(ひとみ)に涙が(にじ)んだ。(ふる)える声で彼女は答えた。


「わ、私にできる事なんですか? そんなこと……」


 その姿を見て、俺の胸が痛む。ドロシーにそんな重責を負わせてしまって良いのだろうか? 


 しかし、レヴィアの眼差(まなざ)しは揺るがなかった。彼女はドロシーの目をじっと見つめ、熱を込めて言った。


「……。お主は目がいいし、機転も利く。自分を信じるんじゃ!」


 その言葉に、ドロシーの表情が僅かに和らいだ。しかし、まだ躊躇(とまど)いは消えない。


「信じるって言っても……」


「できなきゃ旦那が死ぬまでじゃ。やるか? やらんか?」


 レヴィアの言葉は厳しかったが、その眼差(まなざ)しには温かな(はげ)ましの色が宿っていた――――。


「死ぬ……」


 ドロシーはキュッと唇を結ぶ。そう言われたらもう選択肢などなかった。


 深く息を吸い、覚悟(かくご)を決めたように頷く。


「わ、分かりました……」


「ヨシ! では神殿でスタンバイじゃ!」


 ニヤッと笑ってサムアップするレヴィア。


 ドロシーは涙を(ぬぐ)いながらうなずいた。



      ◇



 神殿に転送されたドロシーは、大理石造りのがらんとした大広間をキョロキョロと見回した。壁沿いに幻獣の石像がズラリと並び、魔法のランプが揺らめいて不気味にその影を揺らしている。獅子(しし)麒麟(きりん)といった神獣たちの目が、まるで生きているかのように闇の中で光を帯びていた。


「そこに画面があるじゃろ?」


 レヴィアの声が神殿に響きわたる。


 確かに広間の中央に大きな画面が何枚か並び、宙に浮く椅子がゆらゆらと揺れていた。画面からは青白い光が放たれ、まるで異界への窓のよう。それぞれの画面には、この世界の様々な場所が映し出されている。街並み、森林、荒野――――そして戦場。


 ドロシーは駆け寄ると画面をのぞきこんだ。彼女の瞳に画面の光が映り込み、神々しい輝きを帯びる――――。


『はい、戦乙女(ヴァルキュリ)が見えます。どうやら……レヴィア様を探しているようです』


 ドロシーの声には緊張が滲んでいたが、それでもしっかりとしたやる気が感じられた。


「よし! その画面は自動的に戦乙女(ヴァルキュリ)を追尾しとるから、奴の動作をしっかり見るんじゃ。ワープする前には独特の姿勢を取るはずじゃから、それを見抜いて声で旦那に伝えるんじゃ!」


『は、はい……』


 戸惑いのにじむドロシーの返事に、俺は不安を覚えずにはいられなかった。



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