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125. 血に渇く巨剣

 まるで火山の火口のような荒涼な世界が広がり、暗雲立ちこめる空には黄金色の光をまとったレヴィアが、ゆったりとはばたきながら辺りを睥睨している。


「やった……か?」


 戦乙女(ヴァルキュリ)が見当たらないということは、消し飛んだということだろうか?


 しかし――――。


 その直後、想像もできない事態が起こった――――。


 世界が息を呑むかのような静寂(せいじゃく)の中、灼熱の輝きが収まりかけたその瞬間、なんと戦乙女(ヴァルキュリ)の姿が空に浮かぶレヴィアの背後にいきなり出現したのだ。


「へっ!?」


 時空を(ゆが)めるような転移魔法(テレポート)か、それとも光の速さを超える動きか――――。


 その手には、真っ赤に光り輝く巨大な剣が握られていた。剣の(やいば)は、生きているかのように(うごめ)き、血を求めて(かわ)いているようだった。


 世界の摂理(せつり)さえも凍りついたかのような緊張が、大気を支配する。


「レヴィア様逃げてーー!!」


 慌てて叫ぶも時すでに遅し。戦乙女(ヴァルキュリ)の剣が閃く――――。


 その一撃は、まるで運命の糸を断ち切るかのように、真龍の体を真っ二つに切り裂いた。


「ぐぉぉぉぉ!」


 重低音の悲痛な咆哮が響き渡る。大地を揺るがし、天を()くその声には、怒りと悲しみ、そして深い無念が込められていた。


 世界の終焉(しゅうえん)を告げる魔笛(まてき)のように、焼け野原に広がっていく声に俺は凍り付く。体が震え、心臓が狂おしい(くるおしい)ほどの速さで鼓動を打つ。


 真っ二つに切り裂かれた真龍の巨体は、破れた(たこ)のように、ゆっくりと墜落していく。その姿は、天からの堕天使(だてんし)を思わせるほど悲痛(ひつう)で美しかった。


「あ、あぁぁぁ……」


 目の前で繰り広げられる現実が、にわかには信じられない。頭の中が真っ白になり、思考が停止してしまう。


 この星で最強の存在の一端を担う真龍が、あの可愛らしいおかっぱの少女が、敗れ去ってしまったのか……。レヴィアとの思い出が、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。彼女の笑顔、優しさ、そして力強さ。それらが全て、この一瞬で失われてしまった。


「そ、そんなぁ……」


 喉から絞り出すような声が漏れる。レヴィアが負けてしまったら、もはやヌチ・ギを止められる者などいない。世界の運命(うんめい)が、一瞬にして決したような感覚に襲われる。希望の光が、目の前で消えゆくのを感じた。


 これで全てが終わりなのか。俺たちの希望も、未来も、全てが……。心の中で、必死に否定しようとする。これは夢だ、悪い夢なんだと。しかし、現実は容赦なく、その残酷な真実を突きつけてくる。


「あ……、あぁぁ……」


 俺は湧き上がる涙を拭きもせず、その凄惨な光景をじっと見つめ続けた。悲しみと絶望が、胸の中で渦を巻いている。世界が色を失っていくようだった。


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