まっくろせかい
第2話です。不定期に更新します。
「何?なんなの...?次から次へと...え?」
晴川は後退りしスマホから離れる。だが音はだんだん大きくなってゆく。
晴川は恐怖で混乱し、窓を開ける。
「外っ逃げなきゃっ...ああ.....何なんなんだよこれぇ......」
晴川は2階の窓から身を乗り出す。とんでもなく大きな音がスマホから鳴り響いている。耳が裂けそうだった。
『オシマショウ』『オシマショウ』
「あぁあああぁああ!」
晴川はバランスを崩し、落下する。
「いやぁああぁ!?」
だが地面に衝突する前に車のボンネットに受け止められた。
「ぎゃっ!」
「危ねぇ!」
車の中から男が出てくる。
「お前大丈夫か!?」
男は晴川に近づく。
晴川は車の上でのたうち回っている。背中を強く打って痛いようだ。
「おい!?大丈夫じゃないだろこれ!とりあえず救急車呼ばないと」
玄関から晴川の父親と母親も飛び出してきた。母が晴川の部屋に行った時にはすでに晴川は窓から落ちていた。
「おい!どうなってる!娘は大丈夫なのか⁉︎」
「いや知らねーよ!なんかあっても俺のせいじゃないからな!」
暫くして救急車が来た。スマホの音は止まっていた。
晴川は暗い空間で目が覚めた。だが手足が動かない黒いモヤに覆われている。口元にもモヤがかかり声が出せない。
(どこ...ここ......)
見渡す限り黒い世界。
目の前では血に濡れた少女がいる。全身に包帯が巻き付いて手には大きな口のついた箒を握っている。
暫く何か喋ったように見えた後、少女の首が切れて落ちた。そして奥から何かがこちらに手を差し伸べる。それが体に当たる。
「っ!?」
晴川はそこで目が覚めた。全身が汗ばみ息切れがする。
(今の夢……?なんだったんだろ……)
外は暗く時計は夜中の2時をさしていた。
「え〜それで、僕が料理作ったんだけど」
重久が料理を持ってくる。そこには美味しそうなカレーライスがあった。だが誰も食べようとしない。皆弧暮が持っていたもう一台のスマホに夢中だった。
「ほら、食べないの?」
「メール送ったけど既読ついたのは一件だけ....」根間が呟く。
「ちょっと〜冷めるよ〜」
「電話もやってみよう!」
「楓花にかけてみるよ。説明めんどいからみんないったん静かにして!」
(食べないの?)
重久は一人カレーを食べ始めた。
「ダメだ....出ない...」
晴川は電話に出ない。他の人にも繋がらない。
「メールはできるけど通話だけできない...何か原因があるのかな...?」
「もう一回かけてみよう!何回もすればきっと....」
「あ.....料理できたから先食べない...?」
白金の提案に根間が乗る。
「そうね、来たばかりで弧暮ちゃんも疲れてるでしょ?スマホは明日に回して今日はご飯食べましょ」
少女達は席に座る。
「重さんって料理上手いんだね。意外」
弧暮が感心する。
「さっきからひどくない?」
「でも重さんって彼女に料理作らせて自分はゴロゴロしてるタイプに見えるし」
「菱川まで重さんって...というか彼女って僕は女だよ」
「知ってるけどさ、なんか重さんの優しいけどあんまり甘やかさない感じって女の子惹きつけそうじゃん」
「そうなの?」
「うん」
暫くして食べ終わり、根間は食器を洗う。
弧暮は重久に連れられ用意された部屋に行く。
「そういえば重さんっていつココに来たの?」
「一年前。最初に根間で次に僕。そのあと菱川に白金」
「ふーん」
しばらく歩いていると思い出したように重久はスマホを取り出し画面を見せる。
「バッテリーについて教えてあげよう。スマホ出して」
弧暮は自身のスマホを見せる。
「そういえば私上限80パーになってるんだけどこれ何?」
「バッテリーはね、その人の具合を示してるんだ。僕や根間が変身してるうちに分かったんだけど、変身中じわじわ減ってくし、怪我したら一気に減るし。逆にゆっくり寝たら残量が回復するんだよね。多分0になったら死ぬ。」
「上限が下がったのは多分怪我だと思う。白金は片目潰れてるから君みたいに残量90パー上限なんだ」
「私80パーなんだけど....」
「ここにくるとき足怪我してるでしょ。ここにくるときあった傷は全部包帯に巻かれてある程度治るんだ。その代わり残量減るけど」
「へ〜。じゃあ私だいぶヤバい?」
「うん結構ヤバい。気をつけないとすぐ死んじゃうから気をつけてね」
弧暮は青ざめる。
「ところで足どうしたの?80パーまで下がったんなら結構重傷じゃないの?」
「これ?確か車に轢かれて足ミンチ」
「聞かなきゃよかった....」
2人は部屋の前までくる。店を改装しただけなので扉は手作りだ。
「はい鍵、どうせ誰も入らないしいらないと思うけど。詳しい部屋の説明は書き置きがあるから。おやすみ」
「おやすみ〜」
弧暮は部屋に入った。部屋の中は元店だっただけあってかなり広く、弧暮ははしゃいだ。
家具売り場から持ってきたであろうベッドの上に飛び乗り寝転ぶ。横の本棚には沢山の本が詰まっていた。
弧暮はそこから無造作に本を一冊手に取り開く。『大口の悪魔』という本だった。寝ながら本を取れるのは便利でいい。
本の内容はホラー小説で、人喰いの化け物が音もなく街の人々を食べていくストーリーだった。本物の化け物に襲われたあとなので、大して怖くもなかった。
読み終わった頃には時計は夜の2時を指していた。
「ヤベッ早く寝よ」
弧暮は部屋の電気を消して布団を被った。
(帰れるよね....大丈夫だよね.......)
そんなことを考えているうちに弧暮は眠った。
どうでしたか?今度から挿絵とかも時間あったらチャレンジしてみたいです。感想を書いていってくれたら嬉しいです。