りそう
番外編です
いつからだろう。こんなに頭が痛いのは。
「また学校休んだのか」
黙れ。
「いいでしょ別に、僕はアイツらよりずっと賢いんだから」
「そういう問題じゃない。もっと人と関わって...」
黙れ。
「僕もう一回寝てくる」
重久は部屋のドアを開けて鍵を閉めた。
ベッドの上でヘッドフォンを付けスマホを弄る。
部屋には大量の本とプリントに埋もれた制服、鞄があった。
時計はまだ8時を指していた。ベッドから起き上がり机の上に置いてあった菓子を食べる。
父はもう仕事場に出て行っただろう。重久はパソコンを立ち上げてゲームをする。
「つまんね」
ふと漏れた言葉。重久は閉じてベッドにうつ伏せになった。
パッドには新着の通知があった。アニメだ。
水曜日午前に更新されるそのアニメは重久の毎週の楽しみとなっていた。
美しい少女達が煌びやかな衣装に身を包んで飛び回る。ストーリーは幼児向けの内容だったが重久にはそれで十分だった。
素晴らしい20分はあっという間に過ぎて、また頭痛の絶えない世界に戻ってきた。
壁に掛かっている写真が目に入る。赤子の頃の自分と...父母が写っていた。
母は物心つく頃には死んでいた。病気だったらしい。
重久は大きな欠伸をして布団に潜り込んだ。
布団の中から手を伸ばして抱き枕を掴み布団の中に引き入れ、強く抱きしめて眠った。
「ん.....」
爆音とともに目覚めた。今は午後2時。放送の音ではない。父もまだ仕事に行っているはずだ。
スマホだ。スマホから音が鳴り響いている。
「あれ....何これ...」
画面一杯に表示された『オシマショウ』の文字。
『オシマショウオシマショウオシマショウオシマショウオシマショウオシ 「えいっ」
重久はなんの躊躇もなく押した。
「え?」
重久は同じところにいた。家の2階だ。
スマホの画面は妙なアプリだけになっており、部屋内は小綺麗に片付いている。家具は半年ほど前に掃除した際と同じ配置になっていた。
窓の外にはいたはずの人の姿がない。
困惑した重久は一旦部屋から出ようとドアに手をかけた。
リビングの方から床の軋む音が聞こえる。
床が割れる音だ。人が歩いて出せる音ではない。
重久は裏返った声が出てしまう。
手で口を押さえる。だが音が部屋の前に近づいてくる。
ドアから離れ、部屋の端で息を潜める。
ドアが突き破られ巨大な腕が伸びてくる。体を掴まれて壁に叩きつけられる。
「あがっァ....だ.....」
手に締め付けられる。骨が軋む音が鳴った瞬間。
腕の力が抜けた。腕の根本は無くなっていた。
「大丈夫!? 怪我してない!? 」
赤いドレスに赤い宝石の付いた杖。美しい少女が目の前にいた。
腰が抜けへたり込む。
夢にまで見た理想の存在がいる。
座り込んでいる重久に少女は手を差し伸ばした。
どうでしたか?
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