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不良衒学少年と電波天使少女の回帰譚  作者: 鍋谷葵
第二章

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第二十四話

 目が覚めるとそこは!

 冷房の効いた俺の部屋。

 本棚に戻すのが面倒で床とかテーブルに置きっぱなしにしている読み終えた本たち、勉強に使った無数のレポート用紙、仕舞うのが面倒でクローゼットに入れずに床に放置された衣類、そしてベッドの上の半袖短パンの寝間着姿の俺。


「当然だよな」


 夏休みに入ってからかれこれ四日。

 俺の生活に幸せな変化はない。

 毎日毎日、気だるい体を昼に起こして、マグカップ一杯の水を飲んで、重たい瞼を必死に開けて顔を洗いに行って、歯磨きをして、インスタントコーヒーと菓子パンを貪る。そして、カーテンを開け、ギラギラと光る太陽を窓越しに見て、外出を諦める。それからぼうっと本を読んで、映画を見たりしていると一日が終わる。とはいえ月曜日には来栖家に行って優に勉強を教えたから四日間引きこもってたわけじゃない。

 でも、ほとんど引きこもりだな、こりゃ。


「暇だなあ……」


 重い瞼を擦りながらここ四日間の記憶を思い返すと、虚しさが浮き彫りになる。しかして、ある種の後悔が俺を外へと導くことはない。

 だって、カーテンの隙間から差し込んでくる光でこれだぜ? 

 ベッドには午前十一時の本気を出していない陽の筋が伸びている。

 本気を出していない上に、窓越しだというのに、その光は熱い。

 ゆえに外には出たくない。

 ということで今日もまた本を読んで、映画を見て、適度に勉強をして、寝て、寝よう。

 思ったのならば速攻でやるべき。躊躇っていては人生がもったいない!

 さあ、目覚めよう!


「あっ……」


 重い体を起こした途端、滅多に震えないスマホが震える。


「……ああ? 水族館に今から行こうって、マジで言ってんのか?」


 久々に連絡ツールとして機能したスマホは、努めて忘れようとしていた事実を突きつけてくる。


「……嫌だなあ。なんでこのクソ暑いに、わざわざバスに乗って。金もかかるし」


 なぜ、神様ではないと示すために水族館に行かなきゃならんのだ。

 あれか、水族館の巨大水槽の中から閉じ込められたお魚さんたちを全部海へ! 自由な海へ! 開放できないのであれば俺は人間だと証明できて、したがって俺は神様ではないと証明できるってわけか? それとも出エジプト記よろしく水槽の中の疑似的な海を真っ二つにしろってか?

 文句が次々と浮かび上がってくる。

 浮かび上がった言葉は口から出ようとする。


「口は禍のもと。言わぬが花だ」


 残念ながら俺の言葉は高価ではないが安くもない。そしてこの厭わしさは俺の価値基準からして、言葉にするほどじゃない。

 言葉にするほどじゃないが本当に怠い。

 だが、契約は契約だ。

 行けと言われれば行かなきゃならない。恨むんだったら過去の自分だ。

 時刻は午前十一時十五分。

 ベッドの上でうだうだ言っていないで退屈な日常に刺激を入れよう。

 今日は、七月二十五日。

 普段と変わらないはずの今日は、ひどく面倒くさい一日になる。

 けれども、それは普段と変わらないテンポで始まっていく。


ご覧いただきありがとうございます。

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