俺が魔王ってマジで?
ん? なんだここは。俺は確か••••••そうだよな。家でゲームをしていたはずだが。
そして、俺の目の前にいるのは••••••あ、見覚えがある、勇者だ。俺がやってたRPGゲームの勇者様だよ。
「えぇ!? 勇者ぁぁ!?」
「ど、どうした魔王、何をする気だ!?」
「え、魔王?」
待て待て待て、なぜ俺は魔王に? てかよく見るとこの勇者剣を俺に向けてるじゃねえか!
明らかに敵対したそぶりから察するに、本当に魔王なのか? 俺が?
いやいや待て待て。仮にゲームだとしたらステータスが!
「あ、出てきた」
このステータスメニュー便利だな。ステータス! って念じるだけで出ちゃうもんな。
さてさて、俺の称号は••••••魔王。
「えぇ!? 魔王!!??」
「な、なんださっきから! うるさいぞ魔王!」
「あぁ、ごめん」
おい待て、なぜ魔王の俺が勇者に叱られてるんだ。
というかなぜ俺が魔王に。
これはアレか? アニメとか漫画でよく見る魔王に転生しちゃいましたー。みたいな?
「いや納得できるかボケェ!!」
「お、おい魔王?」
「なんだ勇者」
「お前、気でも狂ったのか?」
「うるせぇ! 誰がバカだよ」
「いやそこまで言ってねえよバカめ」
「今言っただろ!」
全く。なぜ転生してすぐ勇者に罵倒されにゃならんのだ。
「と、とにかく! お前はこの勇者アーディスが倒す!」
え? 勇者お前固有名詞あったんだ。ゲームだと主人公の名前はプレイヤーがつけるからな。
その前に、俺転生してすぐだし! 生後5分みたいなもんだし! 勇者と戦うなんてごめんだよ。
「あー、今はそんな気分じゃないから帰って」
「ふざけているのか!? 自身の罪を忘れたか!」
罪? 罪? あー、罪か。魔王って何かしたっけか。
ストーリーを思い返してみると、本当に魔王って何したんだ?
特に理由もなく、魔王と勇者だからという理由で戦っていた気がする。
「俺の罪って、なんだ?」
「はぁ!? お前は魔族やモンスターに指示を出し、国民や兵士の命をいくつも奪っただろう!?」
というが、結局それも魔王領に侵入したブルゴス王国の兵士を、追い返す為に近づいたら攻撃され、やむを得ず交戦し、殺してしまった。
というのが、ストーリーで明らかになって、結局魔族が被害者という認識が、プレイヤーの中では一般的だったはずだ。
勇者が、というか主人公が悪役のRPGとか珍しいよなぁ。
「おい、何を考え事をしている!」
「あー、悪い悪い。いや何、思い返してみると、悪いのはこちらではなく、そちらの方ではないか?」
「は、はぁ!? 何を言っているんだ!?」
「そもそも魔王領に侵入したのは人間の方だろう? こちらはそれを対処したまで。
結果的に死んでしまったのは事実だが、侵入したのはそちらだ、文句は言えんだろう?」
「ぐっ、だ、だが! 国民を殺したのは」
「少なくとも、こちら側で殺すように指示した覚えはないが?」
確か、魔王側の視点で描かれた時、ゲームでは魔王がそんな指示を出し、ブルゴス国民を殺した。という描写はなかったはずだが。
「シラを切るつもりか!?」
「だからね、俺は何もしてないんだ!」
「魔王の言っていることなど信用出来るものか!」
「その魔王への絶対的信頼のなさはなんなんだ!!
俺はやってないぞ。絶対に認めてやらないからな」
「認めなくても良い。俺は、皆の仇を取って世界を救うだけだ!」
「だーかーらー! その仇自体そもそもないんだって! いや、世界を救うも何も、俺ら何もやってないじゃん」
「行くぞ! 覚悟しろ魔王!」
あ、ダメだこいつ全然話聞かない。
「だー! もう分かった! そんなに言うなら魔王なんてやめてやる!」
「は••••••?」