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あ  作者: 幽
3/9

2回目の挑戦

下校を知らせるチャイムが鳴るやいなや

教室を飛び出し、門番を置き去りにし、誰よりも早く正門を駆け抜ける


あの空間で、できるだけ長くいたいのだ

帰宅の時間を限りなく短縮する

これが一番手っ取り早い

少し無理にでもペースを上げて、いつもの道を走る


そんなこんなで家につき、着替え、間髪入れずに外に出る

昨日は土手を降り川沿いを進んだのだが

今日はむしろ逆、山間部に向かって漕ぐ


実は授業中に階段のない、つまり自転車でも通行可能なルートを模索していたのだ

更には、ストリートビューで街の雰囲気も、曲がり角の目印となるものまで把握済み

一切抜かりのない準備、完璧


自画自賛だが実際、デジタル上での景色と実物を

ここだったのか〜 と照らし合わせながら進むのは

山はって完全暗記に走ったものがてすっとにそのまま出たような気分、爽快だ

迷うことなく順調にたどり着くはずだったのだがーーー


「フー、はあ、はあ きつすぎだろ」


想定外だった。ここまで急な坂だったとは

当たり前だが、デバイス上で確認しただけでは、かなりの玄人でない限りロードの様子がわからない

つまり実際にその地に赴かないと

坂の険しさ、道路の幅、混み具合なんて分かるはずもないのだ


リサーチが甘かったか

先程自分を自画自賛したがために、穴があったら入りたい


だが救われたことに昨日よりも5分ほど早く着いたのだ

簡単に説明すると

昨日は平坦がお多いが遠回りで最後には階段という名の砦があるルート

今日は逆に心臓が破裂しそうだが、最短となるルート

そんな感じだ


隠し通路の入口を前にして立ち止まる

やはりここに入口がある、と言われなければ気づかないレベルで

周りの雰囲気に溶け込んでいる

あたりを見渡して、黒い連中の気配がしないか探る

一通り確認した後、慎重に板を外し

できるだけ急いで自転車ごと通路に入り、板を元に戻す

とりあえず一安心

自転車に備え付けたスマホのライトを付け足元だけ照らす


たしかに暗いのは暗いのだが

一度でも行った所には慣れるらしく、昨日のビビリ具合が嘘のように

ぐんぐんと通路を抜ける

出口を出て、あたり一面の草原を目にし

昨日の光景が夢なんかではないことを実感する


さて、あらかじめ決めたことを実践してみよう

まずは、スマホの使用可能かどうか


画面の上の方にX印がついている

どうやら電波は、繋がらないらしい

電波の範囲を探るべく画面を見ながら少し歩き回る

程なくしてかすかだが電波を示す記号へと変わった

その境目とは、通路の出口だった


恐らくここが現実と異空間の境目なのだろう

1つ目はこんなところでいいだろう


2つ目はもう実質完遂したようなもので、自転車をここまで運ぶことだ

だがこれはでかい事実だ

単なる足と自転車では捜索できる範囲はかなり変わる

これによって、次の作戦の立て方も変わるからな


行き先は決めている

こんなにも特徴のない場所を当てもなくフラフラするのは時間の無駄

なので川を目指すことにした


ビルや家が一切合切無いわけで、行く手を阻むものがなく

思うがままに大地を縦横無尽に駆けるのはいささか気持ちが良かった


川が視界に入る

澄んでいて、底まで透けている

あまりの綺麗さに

手で水温を感じ、掬って飲んでみたいと思うほどに

ただじかで触るのは気がひける。

実はまだ1つ重大な秘密をあかしていなかった。

秘密とは両手のこと

俺の両手は呪われてる

この手は、一言でいえば触れた生命に死を与える

物体も例外ではない

風化をはやめ、後には粉々になって塵とかす


身の回りのものを触れると崩れ

人なんてもってのほか、うっかりじゃ済まされない

たが物体越しにはこの能力は無効果される

つまり常に手袋をつけて生活すればひと安心

でもやはり手袋自体も摩耗が早くなるわけで

何度も買い替える始末


だが即死チートではない。確かに生命力の弱いもの、病気で衰弱しているものには一撃必殺だが

即座に接触を避ければ、水分を奪い、痩せるだけで死ぬことは免れることは多い。

でも即死ではないわけで、確かに命を奪えることにかわりない。


そのため極カ他人との接触を避けるため今は1人暮らし。

まあ、正直一人で趣味に没投したい系、孤独大好き人間である俺には願ってもない環境だ。

控えめにいって最高


話を戻そう。今目の前に川がある。

現実世界で素手で触れば、

汚染され最終的には黒くなる。徹底的に。

だがここは異空間だ。

ここなら能力は無効かもしれない。

はたまた予想外の化学反応を起こすかもしれない。

どうなるかわからないが

そしたら手のこと気にせず自由に過ごせるかも、、、

少し期待を抱く


黒い手袋をぬぎ、恐る恐る手を水面へ伸ばし


ちょん


と、つけてみる


淡い期待は即座に裏切られ

水を入れた鉢に墨汁を落としたように、濁る


あわてて手を引っ込める


「ダメかぁ」 


落胆する。

まあ電波が届かないだけで、ライトなどの機能は使えるし

俺の呪いも適用される

この空間は現実の延長線上みたいなもんで、意外と現実と同じ法則で成り立ってるのだろう

それがわかっただけでも良しとしよう

そうしたいのだが


はあー


自分の手を見つめ、ため息をつく


みんなと同じことが、普通のことが

この手のせいで、できないもどかしさを感じたことがあった。

いっそ切り落としてしまいないと思うほどに。

いつも醜い自分の手を見て絶望する

こんな手に産まれて善ぶ日など絶対にこないとそう思っていた。

そう思っていたのだが、そんな日は突然におとづれるのだ


遠くのほうから自分目がけて突進してくるものが見える

黒い連中ではなく、俺の脳内図鑑にはのってない、なにか別の生命体

いうなれば モンスター


瞬時に逃げようとハンドルを手にとったが

思ったよりも速くて自転車でも逃走不可能だと悟る

近付くごとに敵の状態が把握できるようになる


どこか鯨っぽい体形をし 、禍々しいオーラを放っている

そして低空だが飛行

木でやり済ごすのは無理だと見た

だが、速いが体格差は俺が上

この速度を正面で受けきるのは、かなり厳しい

ならば初手は避けに徹っして重い一撃をかわす、後に反撃 これだ。

筋道は見えた


持ち前のドッジでの必ず最後まで残る回避技術を活かし、敵が二度目の攻撃をしかけるために

スピードを落とした所を拳でめいいっぱい殴る。


敵は後方に飛んだが

しばらくして再起し、何事もなかったように攻撃をしかけてきた。


「くぅっっ、一撃では仕留められないか」


殴ったときの反動で思ったより手の甲がヒリヒリするが

反撃に備え、構え直す

暫く、避けては殴り

かわしては、蹴りを続けたのだが


「くっっ 思ったよりしぶとい」


体格だけで判断し

俺なら勝てると思ったのだが

それは前半だけ

殴ったときの反動で次第に体力が削られる

耐久戦は分が悪いぞ

なんせ敵は衰えを知らない

むしろ速さが増してる気さえする


フー 落ち着くんだ俺

考えなくては

思考を放棄すれば

それこそ本当に俺の負け

実力以前の話だ


思い出せ敵の攻撃パターンはとても単純

ただ突っ込んでくるだけの脳なし

敵の仕組みさえ理解してしまえば怖いものなんてない

先程の水中に水を入れたのを思い出す


俺の呪いはこの空間も例外なく発動する

ならば、この未確認生物にも効果があるはずだ


これまでただ殴っていたのを辞め

思考を変え、取り押さえてみる

もちろん素手で


予想は的中

始めバタバタ抵抗してたのが

手に水分を奪われるたびに、みるみる弱くなり、ぴたっと動きを止めた

だが念には念を

消滅仕切るまで抑え続けた

元のサイズの半分になったぐらいだろうか

何か光るものが見えた

サファイアのような青い宝石のようなものが

見えた瞬間


パッン


と破裂音とともに、敵が水の塊に入れ替わり

なす術無く全身が濡れた

そして敵は跡形もなく消えていた


勝てたという高揚感よりも

助かったという安堵

今起きた現象への戸惑い

何よりも疲弊した体が休息を求めていた


俺はその場でドサッと腰を下ろす


「つっ、疲れた〜」


たかが一匹にここまで手こずるとは

ゲームではたとえ道具がなくても

ゾンビやスライムなら

果敢に突っ込むもんだが

現実はうまくいくもんじゃないな

下手したら死んでたわけだし


それにあの敵どう見ても

モブキャラだろ

もちろん体格が強さに比例しない事はよくある事だ

だがもしもこの広大な大地に

匹敵する魔物がいたら

もしもそんな敵に出くわしたら

俺は何ができるだろうか

言うまでもなく

手も足も出ないだろう


自分に置かれた状況と位置を理解する

次にはそれ相応の武器がいるだろう

この空間を生き抜き、調査するというのなら


今日何もできることがないと悟った俺は

ハンドルを手に取り

逃げるのではなく、むしろ今後に向けて万全を期すという意味を込めその空間を後にした

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