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Level.84 ??

Level.84 ??

 広い広い魔界の中でもその中心にそびえる魔神を迎え入れるための魔神城。その中央の大広間に3人の影があった。

「まさかあのガルテ総統がやられるなんてね…。」

「ワイバーンダークナイトの中でも随一の小竜を操っていて武器無しでもそれなりの強さがあったはずなのですが…。所詮は聖獣になり損ねたワイバーンを操るだけの方だったようですね。」

「そう言ってやるなよ、ベルゼブブ。ガルテ総統が報われないじゃないか。」

「人界の冒険者とかいう奴ら、侮れなくなってきたねぇ…。」

 ベルゼブブと呼ばれた男性はメガネを掛け直すように鼻に掛かっているブリッジをクイッと押し上げ"ふんっ"というと、その場から去ろうとした。他の2人はそんなベルゼブブを止める様子もなく、"じゃあね〜"と言うくらいであった。

「まずは俺が行って様子見して来ようじゃないか。」

「サタンが行けばすぐに人界なんて手に入れられそうだなぁ…、俺も一緒に行っちゃいけないわけ?」

「そう簡単に壊せないように女神が目を光らせてるんだよ。俺ら2人も行ったら2度と人界に手を出せなくなる。」

「女神かぁ…厄介だなぁ…。魔神様の復活を食い止めてるのも女神だろう?」

「ああ。だけど、ベルゼブブが人界に"不和の種"?とか言うのを撒いて、少しでも瘴気を濃くさせて魔神様復活の栄養になってもらおうとしてるんだろ?」

「その予定だけど。ベルゼブブのことだ、それよりも他にもキメラやホムンクルスの大量生産とかしてるみたいだし?期待はしてないけどな〜」

 そう話しているのは金髪は金髪でも片方は魔界の月の光に照らされて輝く金髪でもう片方は茶髪に近い金髪だった。双方の目が新緑の緑色と深海のような青色に輝いていた。

 2人とも容姿が整っており、その顔がアンニュイに憂いを帯びている様子に魔界の女たちは騒いでいた。

「じゃあ、先に俺、サタンが行ってこよう。人界に簡単に潜入して見せるさ。俺の、変身能力でね。」

「仕方ない。俺は魔界の女たちと時間を潰すしかないか…。俺の楽しみも取っておいてくれよ?」

「それは保証できないな。それじゃ、また。」

 そう言って魔神城大広間からサタンはカツカツと靴を鳴らしながら去っていった。

 大広間に残ったルシファーという人物は柱の影に隠れていた女を手招きした。すると手招きされた女はスルスルッと大広間の床を滑るように移動してルシファーの足元にピッタリとくっついた。彼女の頭を撫でならルシファーはにやりと口角を上げた。

「さぁ…、今度はどうする?冒険者たち。」

 魔神城から不敵な笑みが響き、バサバサッと蝙蝠たちが飛び立っていった。

 ――――――

 ふわふわとしたまどろみの中、レイニーは目を閉じて何かの流れに身を任せていた。

「(ここは…どこ?夢の中…?)」

 レイニーはゆっくりと目を開けてキョロキョロとあたりを見渡してみた。白く濁ったモヤがかかっていてレイニーはふわふわとした浮力に身体が流されていき、次第にその先が真っ暗闇で不安な気持ちが湧き上がってきた。どうにはその闇に向かわないよう、反対方向に向かって手で漕ぐようにしてみてもその行動は意味をなさず、少しづつ闇に近づいて行った。

「(嫌だ、行きたくない!)」

 レイニーが泣きそうになってぎゅっと目を瞑って両腕で顔の前でクロスして防御の姿勢を取っていると、ふとレイニーの背中や肩に暖かい感触があった。レイニーがそっと目を開けるとそこには顔は見えないが、光を纏った人影が7人とレイニーの背中を押していた眩い光に包まれた女性のようなシルエットの人物が手を翳した。するとレイニーを飲み込みそうだった闇を少しづつ押し返していった。

「(すごい…!闇が遠くなっていく!)」

 レイニーは周りにいた7人や眩い光の人を見てお辞儀をすると、パクパクと口を開けてお礼を言おうとした。だが、レイニーは声を出すことが叶わず、8人にお礼を言うことができなかった。

「(うーん!夢の中だからか、もどかしい!)」

 そんなことを思っていると、レイニーの周りにいた7人が円陣を組むように手を合わせていて、レイニーのことを手招きしていたので、レイニーもその輪に混ざって手を重ねた。その瞬間暖かな光がレイニーの手を包み込んだ。

 そしてそこでレイニーは目を覚ました。

「!今の…夢…?」

 ちゅんちゅんと家の外で小鳥が鳴いているのを見て、レイニーはそっと先ほどの夢で最後に円陣を組んだ時の自分の手を見た。

「何これ…?」

 するとその自分の手の甲には、雷のようなマークが刻まれており、レイニーは今までタトゥーなども掘ったことがないので、レイニーはすぐに先ほどの夢が関係しているのかもしれないと思った。ベッドから起き上がって試しにその手の甲に魔力を貯めていくとその雷のマークはぼんやりと輝いた。そして光が凝集し、ピュンッと部屋の外目掛けて一筋の光が伸びていった。その方向を見ても部屋の壁があるだけでレイニーはその光が指す先に何があるのかわからなかった。レイニーが部屋を出る頃にはその光は消えてしまい、手の甲のマークも消えてしまった。

 夢であったことと起きてからの不思議な現象についてレイニーはザルじいに話してみた。

「本当に不思議なことが起きたのう…、手の甲のマーク…うーむ…、その夢は何かをレイニーに伝えたかったのかもしれんのう。」

「私に伝えたいこと?」

「ああ。人間にはたまに予知夢を見ることがある。レイニーはそんな予知夢に似たものを見たんじゃないかの。」

「予知夢か…。あの闇、魔界とか…?だとしたら私のそばにいた7人と眩い光の8人目の人影は…」

 レイニーがぶつぶつ言いながら考察していると、ザルじいは苦笑いをした。

「もうすぐ朝ごはんができるぞ。」

「あっ、ごめん!今手伝う!」

 レイニーは椅子に座って考え事をしていたため、直ぐに立ち上がってザルじいの手伝いをした。

 朝食の後、今日も冒険者業をするため、部屋で防具に身を包んでいると、玄関のベルがカランコロンと鳴ったので、レイニーはすぐに武器の雷光の槍を持って1階へ駆け降りた。

「リト!お待たせ!行こう!」

「おう!」

 今日も相棒であるリトと共に冒険者ギルドを訪れてレイニーたちは今日受けようと思うクエストを吟味した。そして選んだコボルトの集落の殲滅を選ぶとシルビーにクエスト受注のハンコを押してもらい、レイニーたちはコボルトの集落ができたと言う、ベーゲンブルグの草原と林の間に向かった。

 あっという間にコボルトの集落を陥落させ、レイニーたちはハイタッチを交わして、その場で昼食を取ることにした。

 レイニーとザルじいは朝ごはんの後に作っておいたバゲットサンドを青空の下で頬張りながらレイニーはリトにも今日見た夢の内容や今朝の出来事を話した。リトは"ふむふむ"と聞きながらバゲットサンドを食べ切ってペロリと指を舐めてから話し始めた。

「そのレイニーを闇から離してくれたっていう7人だけどさ、もしかしたらこっちの伝説にある英雄のことがしれない。」

「英雄…?」

「そうそう。こっちの世界では"童話の七賢者"っていう七英雄がいるんだよ。」

「童話の七賢者…。」

「7人って言うと間違いなくその童話の七賢者をこの世界の人たちは連想すると思う。」

「でも私の背中を押してくれた8人目の人は…?」

「それは…もしかしたら女神様じゃないかな。」

「女神様?」

 リトは2つ目のバゲットサンドを頬張るとバゲットに挟んであったベーゴンが先にぺろっと出てきてしまったのか、それを器用に手繰り寄せて食べるともぐもぐしてからリトは話を続けた。

「この世界の創造神様は女神なんだ。童話の七賢者っていうのはその女神様から力を授かって闇を打ち払う…とされているんだよ。」

「へぇ…。私の周りを7人が取り囲んでいたってことは私これから童話の七賢者と会うかもしれないってこと…?」

「その可能性はあると思うぞ。」

 そう言ったリトがバゲットサンドを食べ終えてパンパンと手でパンクズを払うと、立ち上がった。

「今回の夢をそんなに深く考えない方がいい!闇を祓ってくれたんだろ?なら大丈夫だ!レイニーには童話の七賢者様と女神様の支えがあるんだと思えば!」

「ふふっ、そうだね。よし、午後も何かクエスト行こうか!」

「おう!そうだな!」

 レイニーは残っていたバゲットサンドを一気に頬張ってもぐもぐと咀嚼してお茶を飲み干すとリュックにバゲットサンドを入れていたカゴを押し込み、背負った。直ぐにベーゲンブルグの冒険者ギルドで報酬金やドロップ品の返品をしてもらい、レイニーはテレポート結晶でピーゲルの街まで帰ってきた。

 それから季節は厳しい冬を乗り越え、春の息吹が感じられる季節になってきた。レイニーは喫茶店のメンバーでの思い出作りを何かしたいと少しずつ思うようになってきたのだった。

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