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Level.83 勝利

Level.83 勝利

 ガルテ総統が魔界の地上に降り立ったことで、レイニーたちは飛行リングに魔力を注ぐ必要がなくなったので、魔力を存分に生かして怒涛の魔法攻撃でガルテ総統に攻撃して行った。

その中でもレイニーとリトは抜群のコンビネーションで少しづつだがガルテ総統を押し始めていた。

「(これならいけるかもしれない!)」

 そこへライクスの火属性の連続魔法攻撃がガルテ総統の大剣を吹っ飛ばした。

「皆行け!!!」

 ライクスが大剣を弾き飛ばしたノックバックで体勢を立て直している横をレイニーが雷光神速を使って高速移動+連続の刺突攻撃を発動させた。

 だが。それだけで倒れないのがガルテ総統だった。

 レイニーの高速の連続刺突攻撃をガルテ総統は剣も無しに手だけで柄の部分に触れていなしていった。

「(今のを素手でいなした!?)無茶苦茶じゃないの!」

 レイニーは雷光神速の効果が消えた瞬間、ガルテ総統は目を光らせてレイニーに向かって手を鋭く尖らせて突き出してきた。レイニーはそれを寸前のところで避けたが、ピッと頬にその尖った手先が掠めて一筋の血が流れた。レイニーはそれをぐいっと拭うと武器もなしにここまでとは…と思っていると、ガルテ総統の後ろに転移魔法陣が浮かび上がった。

 ガルテ総統が魔法陣に気付いて振り返った瞬間、魔法陣から飛び出してきたのはレイクスだった。

「当たれぇええ!!!」

「…!」

 ほぼゼロ距離で放たれた水属性の水流を纏ったレイクスの矢はガルテ総統の右目を狙って放たれた。その矢はバシュッという音と共にガルテ総統の右目を貫通した。だが、ガルテ総統は倒れなかった。なぜ動いているのか、レイニーたちには訳が分からなかった。

 ガルテ総統は右目に風穴を開けているというのに、穴を開けた張本人のレイクスの首を掴むと、ギリギリと力を込めて行った。

「レイクス!」

「ぐ…う…!」

 次第に締まっていくガルテ総統の手にレイクスは抵抗しようと手を首に持っていった。そして、なけなしの体力で脚を上げてガルテ総統の首にかけると、グッと力を入れて頭を地面に叩きつけるように技をかけた。

 その衝撃でレイクスの首からガルテ総統の手が外れ、レイクスはげほげほと咳き込みながらフラフラとガルテ総統から距離を取った。

「なんで動いてるんだよ、あいつ…。右目に魔石があるんじゃ…。」

「まさか…2つ目の魔石があるとか…?」

「!!その可能性がある…、もう一つの場所を特定しないと…!」

 首を絞められてしまったレイクスにライクスが駆け寄ると2人を守るようにリトとレイニーがガルテ総統の前に出た。レイニーが2つ目の魔石の可能性を口にするとリトは冷や汗をかきながらガルテ総統を観察した。今までの攻防の中から導き出された、ガルテ総統のもう一つの魔石の場所…それをリトは考えた。

「2つ目の魔石があるなら全身をバラバラにしてしまえばいいのね。」

「キュリアさん!」

「私だって、教え子のレイニーに先を越されないように新しい魔法攻撃、考案してるんだから。」

 2つ目の魔石のことでレイニーとリトがその場所を探っているとその隣にキュリアが立った。レイニーはキュリアのその眼差しに冷気を感じていた。キュリアの新しい魔法攻撃とは一体どんなものなのか、レイニーは場違いだが少しワクワクした。そして、キュリアが一歩一歩ガルテ総統に近付くと少しづつ戦場に冷気が漂ってきた。

「絶対零度。」

 ガルテ総統まで残り3メートル辺りでキュリアが一歩踏み出した瞬間、ピキリと地面が凍ったかと思えば、一気にその氷結がズワッという音と共にガルテ総統と地面を凍り付かせた。ほんの一瞬にしてガルテ総統を氷漬けにしたキュリアの魔法攻撃にレイニーはびっくりした。

「これがキュリアさんの魔法…。」

「レイニー、まだ気を抜かないで。私の魔法属性は氷、対してガルテ総統は火。私の絶対零度も溶かしてくると思う。だから、氷から出てきた瞬間が1番のチャンス。レイニー、思いっきりやって。」

 レイニーの隣には1箇所集中の氷魔法を発動させ、魔力が枯渇しているキュリアが少し肩で息をしながら立っていた。そのキュリアの言葉通り、少しづつ氷にピキピキと音を立て始めた。周りにいる冒険者たちもガルテ総統が出てきた瞬間を狙っているのか、武器を構えて、皆、今か今かとその瞬間を待った。

 そして。パキィンッという音と共にガルテ総統が氷から出てきた瞬間。レイニーは契約した精霊のミナの力を借りて、再びあの紫色の雷を先ほどよりも高出力で発動した。

「紫電…雷光!!!」

 紫色の稲妻が魔界の戦場に落ちた瞬間、レイニーは魔力の回復ポーションをぐいっと飲むと直ぐに雷光神速を発動させて雷に打たれて少し間スタンしているガルテ総統にレイニーは走り込んで懐に入った。そして雷光神速の速さをもって、ガルテ総統の体を切り刻んだ。

 体を切り刻んだことで手の甲からキラッと光る魔石を見つけた。

「(これを壊せば!)はぁああッ!!!雷の…一閃!!」

 レイニーの渾身の雷の一閃がガルテ総統の2つ目の魔石を捉え、スパンッと切った。その瞬間、ガルテ総統の体がぶわっと光の粒子になって爆風を生んだ。ガルテ総統の懐にいたレイニーはその暴風に吹き飛ばされたが、直ぐにリトが後ろに回って止めてくれたのでレイニーは魔力の枯渇でふらふらとしながら、ガルテ総統の最後を見守った。そして、光の粒子は、サラサラと魔界の空気に溶けて消えたのだった。

 最初は誰もがやっとの思いで倒したガルテ総統が本当に倒せたのか半信半疑なところだった。だが、光の粒子が空に吸い込まれていくかのように溶けていく幻想的な様子を見ていると少しづつあのガルテ総統を倒したのだと実感してきた。

「う…。」

「うぉおおおおおお!!!!」

 レイニーの周りにいた冒険者たちがプルプルと震え出したかと思えば大声で喜び始めたので、レイニーはビクッと肩を震わせた。そんなレイニーの様子を見て、レイニーを受け止めていたリトが"少しは静かにしろよ!"と言っていたが、レイニーは"やっとの思いで倒したんだから、喜ばせてあげようよ"と言ったので、リトは渋々頷いた。

 そんな歓喜に沸く冒険者たちがガルテ総統を倒したことは後方支援部隊のクルエラの耳にも届いた。

「そうか!やってくれたか!」

 クルエラも緊迫した状況で気を張り詰めていたのか、ホッとして椅子に倒れ込むと脱力して"本当に良かった…"と呟いたのだった。そんな様子を見てアーグナー団長が“ガーハッハッハッ"と豪快な笑い声を上げた。

 ガルテ総統と戦いながらも周りにはワイバーンダークナイトたちはほとんど倒していたので、ガルテ総統を倒した後の歓喜に沸く冒険者たちには襲いかかってくる者はいなかったのだった。

 そして、後方支援部隊にいたクルエラと合流したレイニーたちはようやく魔界を後にしてハインツィアの街へと帰ったのだった。

 ――――――

 ワイバーンダークナイトたちとの戦いがあってから3日後。レイニーの喫茶店には相変わらずお客さんが絶えず出入りし、レイニーは久々に感じるお店の忙しさにうれしい悲鳴をあげていた。そんな中、ホールにはお店に訪れていたキュリア、ライクスレイクス、エミュレットがいた。

「はい、お待たせいたしました、ナポリタンとピザトーストとハンバーグとグラタンです!」

「おお!美味そう!」

「本当、外の寒空にはうってつけの温かい料理…!いただきます!」

 4人は出来立てでほかほかと湯気を上げる料理を見てごくりと喉を鳴らしてから、フォークやナイフを取るとそれぞれ料理を一口取るとパクりと食べた。

「う、美味い!!この肉がぎゅうぎゅうに詰まった感じ!俺好きだ!」

「うーん、グラタンって料理も美味しいわ〜!あっ、あにぃ勝手に食べないでよ!」

「レイニー、この店には肉じゃがは…」

「うちは喫茶店なので和食の肉じゃがは出してませんね…」

 ガヤガヤと騒がしい店内がさらに大騒ぎになっており、レイニーは苦笑いをした。そんな4人が料理を楽しんでいる間にレイニーはホールを後にして厨房で残りの注文された料理を作りに行った。

 ワイバーンダークナイトを相手にしたグランドクエストは無事に人界の冒険者軍が見事勝利を収め、レイニーたちは検査入院として1〜2日ほど入院をしてからその退院した日にレイニーはピーゲルの冒険者ギルドに招かれ、レイニーはプラチナランクへ、リトは次なるランクアップのため、新しく設置されたダイヤランクになるための説明を受けた。

 ――――――

「ダイヤランクになるためには、スターと呼ばれる宝石を4つ集めてもらう。」

「ジルビドさん、それって私もですか?」

「ああ。プラチナランクになっていれば誰でもダイヤランクになるためのスター集めに参加してもいい。スターは大きな功績を残した者に与えると決定された。魔神軍四天王を倒した今、次なる相手は魔神軍の幹部になってくるだろう。グランドクエストが発行されるかどうかは分からないが、もしスターを集めたいなら魔神軍幹部クラスをどうにかしないといけないかもしれない。」

「魔神軍幹部かぁ…。強いんでしょうね…。」

「俺は腕がなるぜ!魔神軍幹部が来ても倒してみせる!」

 ジルビドの前で力瘤をムキっと見せたリトにジルビドは笑いながら、"今後も活躍を期待しているよ"と言ってくれた。そんなジルビドからの話を思い出しながらレイニーはオムライスを作り上げると、ナシュナを呼んで早速運んでもらった。

「さて!次は何を作るかな?」

 レイニーはこれからも人界に襲いかかってくる脅威から国や街を守りつつ、食文化の発展もしていければなと思った。

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