表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/90

Level.81 復活

Level.81 復活

 マーテル元帥が命を落としたとの連絡は直ぐにガルテ総統の元へと届いた。マーテル元帥、ソーシャス将軍の重役2人をも屠った人界の冒険者たちにガルテ総統は言いようのない沸々と静かに湧き上がる怒りを感じていた。ガルテ総統もアーグナー団長と同じく仲間を殺されて平気でいるほど、冷めてはいないということだった。

 今回の作戦でガルテ総統は自分が出る幕も無く、人間たちを屠ることが出来るだろうと思っていたが、ここまで追い込まれたの初めてであり、これから未知の領域に足を踏み入れるのだという高揚感をガルテ総統は感じた。

 そしてついにボロボロの竜の巣からガルテ総統が操る小竜が飛び出し、そして、口いっぱいにブレスを溜め込むと、遥か上空に放った。花火のようにひゅ〜という音を立てた大きな火球は上空でバン!と弾け、竜の巣付近にいるもの全員を覆い隠すように流星群が降らせてきた。

 人界の冒険者たちはクルエラの指示で退避が勧告されたが、パニックになって人とぶつかりその瞬間に火球が降ってきてそれが体に当たると体が燃えて冒険者たちは次々と火だるまになってしまった。

 ギャーギャーと悲鳴が上がる中、ガルテ総統が騎乗する小竜は聖獣である本物のドラゴンよりかは力が足りないが、ワイバーンダークナイト軍の中でも屈指の強さを誇るものだった。そんなガルテ総統の小竜が放った流星群に後方支援部隊の指揮官テントから出て来ていたクルエラは戦慄した。

「これが…ガルテ総統の小竜の力…。恐ろしいものだな…。」

 そう言って拳をぎゅっと握ったクルエラの横をセリナが通った。

「クルエラ、ここでたじろいてはいけない。あとガルテ総統を倒せば勝利するのだ。直ぐに私たち騎士団も向かうが、冒険者たちも前線に戻らせた方がいい。」

「そうだな…。後退していた冒険者たちに進軍の伝令を伝えろ!」

 セリナの言葉にクルエラが頷くと直ぐにそばに控えていた伝令役の冒険者に指示をして、ワイバーンダークナイトたちが後方支援部隊の近くまで進んでこないよう、食い止めることにした。そして先ほどの言葉通り、セリナはアーグナー団長の前に出ると覇気を込めた声で叫んだ。

「これよりイグリス騎士団は進軍する!1ミリたりとも団長に敵を近づけさせるな!」

「はい!」

 副団長セリナの言葉に団員が頷くと騎士団の中でも精鋭の四天王がまず小竜に跨り、飛び立った。そして冒険者軍の要、後方支援部隊がある場所に向かって来ている、ガルテ総統を捉えると、四方向に四天王が散らばった。そして、結界魔法を発動させてガルテ総統をその結界から出られないようにした。その様子を報告にて聞いたクルエラは"よし!"と拳を握って喜んだが、アーグナー団長は渋い顔をしたままだった。

「まだだ。」

 アーグナー団長の言葉の直後。ガルテ総統の操る小竜が、ググッと体を丸め込んだかと思えば魔力を貯め…そして、一気に解き放った。ゴァッという音と共にガルテ総統の小竜から放たれた火球は最も容易くイグリス騎士団四天王の結界魔法を壊して、後方支援部隊にいるアーグナー団長の目の前まで飛んできた。クルエラが直ぐに剣を抜き放ってアーグナー団長を助けようとしたが、アーグナー団長はそれを手で制すると、自分の腰から大剣を抜き放ち、小竜の火球を真っ二つに切った。凄まじい爆風が後方支援部隊に巻き起こり、テントが飛ばされそうになったが、中にいる回復班の面々がなんとかテントを押さえつけて飛ぶのを回避してくれた。

「こんなところまで飛んでくるとは…。アーグナー団長、お怪我は。」

「俺よりも回復班の状況を見てやってくれ。ゴールドランクの冒険者が眠っているんだろう?」

「!そうだ、レイニー殿…!」

 クルエラは直ぐにレイニーが眠っているテントを確認するとエミュレットがレイニーの容体の確認のためにテントを訪れていて、クルエラが来たことに気付くと、こくりと頷いて見せた。それを見たクルエラは安心したようにホッと息を吐いた。

 そして、こうもあっさりとイグリス騎士団四天王が張った結界を破るとは思っておらず、今後のガルテ総統を倒す作戦をどうするか、クルエラは思考をフル回転させた。そんなクルエラの肩をとある人物がポンと手を置いた。その人物を見てクルエラは驚いた。

 ――――――

 一方、戦闘の最前線ではイグリス騎士団の四天王がガルテ総統と戦っていた。イグリス騎士団のトレードマークでもある、白銀の鎧を見に纏っていた四天王だったが、ガルテ総統の剣戟に次第に鎧を着ているというのにその鎧を貫通させて斬撃が通るようになって来てしまった。

 ここまで異次元の強さを誇るガルテ総統に四天王は苦戦していた。そこにガルテ総統の背後から青い炎の狼がゴオッという音を立ててガルテ総統を飲み込んだ。

 四天王がその炎に驚いていると、別方向からやって来たプラチナランクのリトやキュリア、ライクスレイクスが合流し、ガルテ総統の様子を伺った。リトの放った双蒼牙狼の炎に飲まれているというのに、ガルテ総統は微動だにせず、そして一瞬のうちに剣を抜き放つと、リトの双蒼牙狼を吹き飛ばした。

「俺の攻撃をこうも簡単に…。」

「イグリス騎士団の鎧も貫通するほどの剣の鋭さ…リトの攻撃を吹き飛ばすほどの剣の威力…、こりゃ手こずるな…。」

 ライクスがガルテ総統の強さに少し尻込みしていると、今まで静かに佇んでいたガルテ総統がぴくりと動いた。

 その瞬間。ドゴォン!!!という凄まじい落雷の音と共に紫色の雷がガルテ総統に目掛けて落ちた。

 そんなすごい雷を落とせるのは1人しかいない…そう思ったリトは"ようやく目覚めたか!"と歓喜した。

 そう、先ほどまで後方支援部隊の回復班の元で治療を受け眠っていたレイニーが目覚めたのだった。

 レイニーは後方支援部隊の指揮官テントの前でガルテ総統の動向を見上げながら様子見していたクルエラの肩を叩いて微笑んでみせた。

「れ、レイニー…殿?」

 そしてレイニーが復活してことにより、彼女と契約した精霊のミナもフーカも全員フル回復していた。

「ミナ、最大出力の雷落とせる?」

「はい、主。紫色の電撃を帯びた落雷を落としますね。私のタイミングに合わせて魔力を練ってください。」

「分かった。」

 ミナが雷を落とす場所の特定をしてからレイニーが魔力を練ることで、次第に魔界の空がゴロゴロと雷雲が現れ始めた。そして…。

「主、いつでも落とせます!」

「…紫電、雷光!!!」

 ミナの合図と共にレイニーが手をバッと下に下げると、紫色の稲妻がガルテ総統に直撃した。だが、そんな高圧電気を流したのに、ガルテ総統は少しピリピリはしているものの、体の様子をチェックしているのを見ると、さほどのダメージにはなっていないようだった。

「ほーう?あれを受けてもダメージがあんまり入ってないですね。復活したミナの魔力フル活用して落としたのに、嫌な顔ひとつしてない…、さすが総統様ですね…!」

 クルエラの隣でなんとも飄々とした態度で戦況を見ていないレイニーにクルエラが心配そうに尋ねて来た。

「レイニー殿、体は…。」

「ああ、あれはもう大丈夫ですよ、エミュレットさんが完全回復してくださったので!今の"紫電雷光"は契約精霊のミナの魔力を使ったので自分の魔力はほとんど減ってないんです。魔力切れの心配はありませんよ。」

 そう言ったレイニーはどうやってガルテ総統を倒すための作戦会議をしたほうがいいだろうと思った。

 なにも計画なしに突っ込めば怪我をする…最悪は死に至る可能性だってある。ここは通常兵士のワイバーンダークナイトたちを先に全滅させたほうがいいだろうと前線にいたリトはそう思った。それを同じプラチナランクのキャリアに話して伝達して行き、誰もガルテ総統に挑まぬまま戦いは再び始まったのだった。

 そしてガルテ総統だけ取り残されていたので、それにはアーグナー団長が向かうことになった。

「あいつの相手は俺が務めよう!セリナ、レイニー嬢、直ぐに作戦を練ったら伝達してくれ。俺はなるべく時間を稼ぐ。」

「はい、よろしくお願いします!」

 レイニーはアーグナー団長を見て最初は"誰!?"と思っていたが、クルエラの反応や周りにちらほらいる騎士団員を見て、隣国からの騎士団が来たのかなと推測をした。

 そうして、指揮官のテントに戻ったレイニーたちはレイニーとセリナが軽く自己紹介を済ませると、直ぐに作戦会議を開始し始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ