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Level.80 アーグナー団長

Level.80 アーグナー団長

 戦いの最前線ではクルエラが巨大な竜巻を発生させ、ワイバーンダークナイトたちを飲み込み、ソーシャス将軍の取り巻き達もそれに巻き込まれていった。ソーシャス将軍はなんとか竜巻には巻き込まれなかったものの、小竜の体力を消耗していたようで、フラフラと飛んでいた。

 そんな時、ソーシャス将軍の頭上に、静かに転移魔法陣が現れた。ソーシャス将軍は寸前までその気配に気付くことができなかった。

 グリムが作った転移魔法陣によってソーシャス将軍の頭上にテレポートしたキュリアとリトはソーシャス将軍の魔石があるであろう、急所…心臓や目の位置を狙って剣を振りかざした。

 だが、ソーシャス将軍にあとちょっとというところで、ソーシャス将軍は2人に気付き、剣が頬を掠めただけで、ソーシャス将軍にの体には刺さらなかった。

「プラチナランク冒険者が何故ここに!?」

「そんなこと教えてやる義理はないね!!」

 狼狽えるソーシャス将軍にキュリアとリトは次々と剣で攻撃していく中でキュリアはあることに気が付いた。

「(あれは…、小竜の魔石…?)リト!小竜の左目を狙って!」

「!!分かった!」

 キュリアの言葉にリトが小竜の左目を見ると、きらっと輝く魔石を発見したので、リトは直ぐに頷いて、小竜の左目を執拗に狙った。

「くっ…!(こいつら、小竜の魔石の位置を確実に狙ってくる…!)」

 ソーシャス将軍は小竜の魔石を壊されないように、小竜のブレスを駆使したり自分で剣を取ってリトやキュリアの剣戟をいなしてきたが、小竜の体力の方に限界が来たようで、ガクンと一瞬小竜の力が抜ける瞬間があった。リトたちはそんな隙を逃さなかった。

「(今だ!)双蒼牙狼!!」

 リトが小竜の左目、目掛けて双蒼牙狼を放ち、その攻撃が小竜の左目にクリーンヒットすると、小竜は"グルァ…"という悲しい声を上げながら、光の粒子となって四散した。

「よしッ!」

「ッち!!」

 ソーシャス将軍の小竜を倒したことで、リトはガッツポーズを取った。ソーシャス将軍は乗っていた小竜を失い、地上に落ちて行った。それをキュリアは見逃さず、直ぐに飛んで追いかけると、空中戦では有利なキュリアがソーシャス将軍に近接戦闘を持ち掛けた。キュリアのレイピアによる猛攻を受けて、ソーシャス将軍は遂にキュリアの刺突攻撃で手に持っていた剣を弾かれてしまった。その瞬間をキュリアは見逃さず直ぐに氷属性の魔力を纏わせたレイピアでソーシャス将軍の首を切ったのだった。そして目にも留まらぬ速さの剣戟でソーシャス将軍の頭を切り裂き、完全に魔石を壊したのだった。魔石を壊されたソーシャス将軍はそのままさらさらと光の粒子が空に溶け消滅したのだった。

 前線に来ていた敵軍のソーシャス将軍を打ち取ったことは直ぐに後方支援部隊に戻ってきていた、クルエラの耳にも入ってきた。

「よし、ソーシャス将軍を打ち取ることができたようだな!あの作戦が成功したようでよかった!」

「クルエラもこの作戦に一役買っているじゃない。」

「私の活躍はそれほどでは…。」

 人界の冒険者軍の方に軍配が上がりつつある中、一方で小竜の巣の最奥ではガルテ総統が次なる刺客を差し向けることを決めていた。次に選ばれたのは、先ほどのソーシャス将軍よりも地位が上のマーテル元帥だった。

「このマーテル、必ずや勝利をガルテ総統のために持ち帰ってまいりましょう。」

「…任せたぞ。」

「はっ!」

 マーテル元帥は小竜に跨ると、直ぐ様最前線へと向かったのだった。

 人界の冒険者側ではクルエラが一向にこちらの陣営に参加する様子の無い、イグリス騎士団の団長のことを心配していた。

「セリナ、団長殿は…。」

「あの人、ちょっと遅れるって言ったきり、合流しなくて…。どこをほっつき歩いているんだか…。」

 そんなことをセリナがぶつくさと文句を言っていると、"がーはっはっはっ"と特徴的な笑い声が戦場に響いた。

「今の声はまさか…!」

「はぁ…、やっと来たんですね…。」

 クルエラとセリナが指揮官のテントから出ると、丁度よく二人の目の前にドスンと重い音で魔界の地上に着地した人物がいた。

「団長…遅れてくるのもどうかと思いますが、もう少し登場の仕方を考えてくれませんか?少しでも敵の数を減らしてくるとか…。」

 セリナは頭を抱えてこめかみを抑えながら、団長と呼んだ大柄の男に苦言を呈した。そんなセリナの様子を見て、団長と呼ばれた大柄の男…アーグナー団長はこれまた豪快に笑った。

「がっはっは!それなら心配には及ばぬ。ここに来るまでに50体ほどのワイバーンダークナイトを屠り、更には重役クラスだと思われる奴も斬ってきたぞ!」

 アーグナー団長がそう言うと、時間差で上空で爆発音が響いた。その爆発にクルエラが驚いて"何が起きた!?"と情報を整理しようとしていると、それをセリナが止めた。

「今のは団長の魔法攻撃よ。」

「確か団長殿の魔法は…。」

「俺の魔法攻撃は時限爆弾だ。切った箇所から時間を置いて爆発する仕組みになっている。」

 アーグナー団長から直々に魔法の説明を貰ったクルエラは"なるほど…"と納得していた。

 一方で戦場に出て来たばかりのマーテル元帥は憤慨していた。前線に向かっている途中で、空を飛んでいるアーグナーを発見したはいものの、直ぐに部下たち50人をあっさりと切り伏せ、更にはマーテル元帥の右腕も切り落として、傷口を止血しようとした瞬間に爆発が起こり、マーテル元帥はただでさえ腕を切られたことで体力を消耗しているのに、至近距離での爆発を受けてしまい、体力が残り僅かになってしまった。

「く…ッ、この私にこんな屈辱を…。お前たち、今すぐ豪快でがさつな男を殺してこい!」

 部下にそう指示したマーテル元帥はぼたぼたと血が垂れるのも気にせず、自分であの豪快に笑って去っていった男を絶対に殺すと怒りに身を任せ、小竜を片手で操って、前線に向かった。

 その頃、アーグナー団長はセリナから戦況を報告されて、ゴールドランク冒険者が一人、後方支援部隊にて治療を受けている話をした。アーグナー団長は"分かった"と一言頷くと、前線からの報告でワイバーンダークナイトの次なら刺客であるマーテル元帥が前線に出てきたことを知ると、アーグナー団長が自ら、戦場に赴くことになった。

「セリナ、騎士団の指揮はお前がやれ。俺はそのマーテル元帥とやらを倒してくる。」

「分かりました、団長。お気をつけて。」

 そういうとアーグナー団長は騎士団の小竜を操って前線へと向かった。マーテル元帥はあの大柄な男を探して、自分に向かってくる冒険者たちを次々と切り伏せていき、ゴールドランクに匹敵するほど強いとされるイグリス騎士団の団員も重傷とはいかないものの、怪我を負わせていった。

 そんな時。マーテル元帥の目に、こちらに小竜に乗って向かってくる、アーグナー団長を見つけると、怒りで目が血走り、片手で小竜を操ると、アーグナー団長目掛けて、一直線に飛んで行った。

 だが。次の瞬間。マーテル元帥は何が起きたのか分からなかった。いつの間にか自分は小竜から落とされ、気付いた時にはあのがさつで豪快に笑うアーグナー団長に頭を掴まれていた。

「ば、バカな…!この私が一瞬で…ッ」

「お前か…?俺の大切な団員を殺したのは…。」

「お前のような指揮官の元に就く人間など、虫けらにすぎない!いくら殺したって、お前たち人間はいくらでも…!」

 マーテル元帥がそこまで言うと、アーグナー団長はマーテル元帥を掴んでいる手に力を込めた。ぎりぎりと締まっていく、マーテル元帥の頭に本人は次第に痛くなる頭を抑えたかった。だが、自分の両手の感覚がなかった。

「な…ッ!?」

 そういつの間にかマーテル元帥は首から下を斬られており、今マーテル元帥は首だけをアーグナー団長に握りつぶされそうになっていたのだった。

「もう一度聞く。お前が俺の大切な団員を殺したのか?」

「そ、そうだと言ったら…!?」

「そうか。お前はさっき"人間はいくらでも"って言ったな。だがな、それはお前ら魔物だって同じだ。いくらでもいるんだろ?だが、戦える人間は有限だ。その人間を殺すことを目的としているお前たちにはいくら考えてもその低能な頭では理解できるまい。」

 そしてそこまで言うと、アーグナー団長はマーテル元帥の頭を放り投げた。

「いやッ!嫌だ!私はまだガルテ総統のお役に立てていないッ!!」

 宙を舞いながら、マーテル元帥が叫ぶ中、アーグナー団長はそんな奴の頭を腰から抜き放った大剣で切り刻んだ。マーテル元帥の脳内にあった魔石を破壊したことで、マーテル元帥は光の粒子となって四散した。

 アーグナー団長が来たことで、あっさりとマーテル元帥が絶命し、ワイバーンダークナイトは残すところ、ガルテ総統だけとなった。

 

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