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Level.8 武器と防具を揃えましょう

Level.8 武器と防具を揃えましょう

 レイニーとリトは冒険者ギルドがある街の大通りを横切った斜め向かいにある武器屋に寄ってみることにした。

「そういえばリトの武器はなんなの?」

「俺?俺は双剣って2本の剣を扱ってるんだよ。攻撃の手数が多くてごり押しをする俺にとっては持ってこいの武器なんだよね。」

「そうなんだ…、私武器どうしよう…。」

 武器屋に入ると、何人かの冒険者がカウンターで店主と武器についての相談をしていたようで、レイニーたちに気付いた店主が"いらっしゃい"とだけ言って直ぐに相談事に意識を変えていた。レイニーはお店の中に所せましと並べられている武器を見て、自分でピーンと来るものを…と思っていたのだが、あまりの種類の多さに目が回りそうだった。

「レイニーは初心者だし、接近戦をしない魔法使いとか弓矢とかどう?」

「うーん…、接近戦は確かに怖いし…。あっ、コレ…。」

 レイニーが目を付けたのは、1本の槍だった。刃先が鋭利で刺突攻撃に特化した武器であり、物理攻撃の手段しかないが、ある程度の距離を保ちながら、敵に攻撃することができる代物だ。それを講習会で習っていたレイニーは槍にしようと決断したのだった。

「お嬢ちゃん、この間街外れの一軒家に引っ越してきたっていう女の子だろ?噂話が回っているよ。冒険者になるんだな。これは俺からの引っ越し祝いだ。武器代は貰わんよ。」

「えっ、そんな悪いですよ!って言いたいところですけど、所持金がちょっと心もとないのでありがたく…。」

「がっはっは!正直なお嬢ちゃんだな!冒険者として頑張れよ!槍を新調したくなったら、俺か近くの街でいえば…シュッツガルドの武器屋いいだろうな、どちらかの店で新調することができるから、また贔屓にしてくれ!」

「ありがとうございます!頑張ります!」

 レイニーは思わぬプレゼントにタダで貰った槍をぎゅっと握って、武器屋の店主に深々と頭を下げた。そして隣の防具屋を訪れると、そこにも何人かの冒険者たちがあれこれと防具について語っているところだった。レイニーはきょろきょろと店内に並べられた防具や鎧を見ながら、自分の好みに合った防具を探した。

「お、リトじゃないか。ようやく帰ってきたか、心配させやがって!」

「おっちゃん、ごめんごめん…。数日前に帰ってきたんだよ。」

リトはこの店の店主と知り合いのようで、店主に肩を組まれて満更でもなさそうな表情で絡まれていた。そんなリトを尻目にレイニーが防具をどうしようかと迷っていると、店主がレイニーに気付いた。

「お嬢さん、見ない顔だな。冒険者になりたてかい?」

「あ、はい。ついこの間冒険者の登録書類にサインしたばかりで…。ギルドの受付嬢のシルビーさんにこのお店を紹介してもらって…。」

「ああ、シルビーちゃんからの推薦か。ありがたいね。どうだい、俺がお嬢さんに似合う防具を見繕ってやるよ。」

「え、いいんですか?ありがとうございます!」

 レイニーは防具屋の店主とカウンターで防具の説明から始まった。

「防具ってのは、自分の身を守ることも出来るし、防御が最大の攻撃になることもある。防具をきっちりしておくだけでも、自分の命を守る時間が増えるってことだ。慎重に選んだほうがいい。お嬢さん、武器は見たところ槍のようだな…、槍のリーチがあるが接近戦になるから、防具は少しがっちり固めた方がいいが…。女の子だしなぁ、甲冑のような全身がっちり固めるのはおすすめしないかもなぁ…。」

「防御が最大の攻撃…。講習会で習いました!そうですね…、甲冑とかだと歩きづらそうだし…、比較的軽装備でありながら急所を守ることができる装備がいいですね。」

「分かった。今お嬢さんに合う装備を取ってくるから、ちょっと待ってな!」

 レイニーは防具屋の店主と防具についての話をして、自分の希望を伝えるとすぐに心当たりのある装備があるようで、お店の奥へと向かい装備品を取りに行ってくれた。

 そんな時にレイニーはふと試着室の鏡が気になった。

「(そういえば、私この世界に来てから鏡って見てない…。自分の容姿が分からないって致命的よね…。)」

 そう思って、レイニーはひょこっと試着室の鏡を覗き込んでみた。するとそこに写っていたのは金髪で緑色の瞳を持った少女だった。

「だ、誰これ!」

「れ、レイニー、どうした!?」

 少しばかり大きな驚いた声を出してしまったので、少し離れていたところで防具を見ていたリトがすっ飛んでくると、レイニーが鏡を見て、ぷるぷると震えながら、固まっているのを見て、なんとなく叫んだ意味を理解したようだった。

「レイニー、ここで初めて鏡を見たみたいだな。前の世界ではどういう容姿だったのか分からないけど、少なくとも、この世界には馴染んでいる髪色だから心配しなくて大丈夫だよ。」

「り、リト…。これが私…?金髪少女になってる!」

「分かった分かった。焦んなくてもいいから。レイニーの新しい容姿を受け入れなくちゃ。」

「そ、そうだよね…。これが私か…。こんなに変わった見た目だとは思わなかった…。」

 レイニーはこの世界にも溶け込んでいると言ってくれたリトの言葉を信じて、自分の容姿をまじまじと鏡で見て目に焼き付けていると、お店の奥から木箱に防具を入れて持ってきた店主が戻ってきた。

「お嬢さん、さっき大きな声を出していたようだが、何かあったか?」

「い、いえ、なんでもないです…。」

「そうかい?お、そうだ、これがお嬢さんに似合いそうな防具一式だ。胸や腰回りのプレートは軽くて動きやすいものを選んだ。後は膝当てと肘当てだな。これは付けても付けなくても大丈夫だ。これは個人の自由さ。こんなもんかな…。槍で刺突攻撃をするのに、速さを重視した軽めの素材で作られたもんだから、少々値は張るが…。お嬢さんお金はありそうかね?」

「あっ、お金…。どうしよう、特注品ですか?」

「ああ。まぁな。作り手が少なくなってきている工房が作った代物だからな。お金が無いんじゃあ、暫くは魔物と戦わずに薬草採取とかでコツコツ…。」

「それじゃあ、レイニーが危ないじゃないか!そうだな…どうしようか…。あっ、そうだ、おっちゃん、食べ物は美味しいものを食べたいよな!」

「お?なんだ、リト…藪から棒に…。まぁここいらの食事はありきたりで飽きていたところだったが…。それと今の防具代の話には関係ないだろ?」

「レイニーはめちゃくちゃ美味い料理を作るんだ!その料理を振舞うので防具代をチャラにしてくれ!」

「おいおい、リト。流石にお嬢さんが作る料理でこの防具代を賄うのは…。」

「そうだよ、リト…私の料理じゃ…。」

「自信持てってレイニー!あの大きな家のキッチンをフル活用するチャンスだよ!な、おっちゃん、一回だけでいいんだ、レイニーの作った料理を食ってみてくれ!」

「うーん…、リトがそこまで推してくるなら、少しは食べてみてもいいぞ。まぁ、嫁入り前のお嬢さんが作る料理なんてたかが知れてるがな。」

「よっし!そうと決まればレイニー、家に帰ってザルじいと作戦会議だ!おっちゃん、3日後のお昼に街外れの大きな一軒家に来てくれ!他のお店の人も呼んでいいから!」

「リト、話が大きくなってるよ…!」

「大丈夫、大丈夫!俺が保証する!」

 リトはあれよあれよと防具屋の店主と話をまとめてしまい、料理を作る肝心のレイニーの言葉を遮るように答えて、にっかりと笑った。そこまでリトが勧めてくれる料理なら、食べてみる価値はあるのかも…とリトの提案に乗ってくれた店主に家に来てくれる日付を伝えると、リトはレイニーの手を引いて、街外れの一軒家に帰宅したのだった。

「ザルじい!今度この家の1階の広いスペースで料理の試食会を開くことになった!」

「なんじゃと?またそんな話を勝手に決めおって…。」

「まぁまぁ。レイニーの防具代をチャラにしてくれる約束を取り付けてきたんだ。だから、レイニーとザルじいの料理を食べてもらって、びっくりしてもらうんだよ!」

「そんなにうまくいくかなぁ…。」

 レイニーはリトの暴走で、巻き込まれてしまったのだとザルじいに説明しつつ、自分が料理を作る訳じゃないからと安易に考えているんだろうと、溜息を吐いた。

「でも、私の防具のためのお金は足りないし、ここは乗りかかった船だし、頑張ってみようかな…。」

「レイニーがそう言うならわしも手伝うぞ。それでどんな料理にする?」

「そうだね…。何人来るか分からないけど、大人数でわいわい楽しめる料理…。後は見た目も楽しんでもらえるものがいいよね…。」

「そうじゃのう。メインとデザートくらい用意すればいいじゃろう。デザートは簡単な材料で作れるフレンチトーストはどうじゃ?」

「いいね!簡単だけど、美味しいし!メインは…ザルじいが開発している料理器具でホットプレートってある?」

「ああ。あるが…。」

「じゃあ、簡単なペッパーランチっていう料理にしよう!牛肉とコーン、ネギと味付けは焼き肉のたれみたいなのを作れば美味しいし!」

「ほう、ペッパーランチはわしが元いた世界にはなかった料理じゃな。最近の若者の料理かの?」

「そうなの。私のいた世界で流行り始めてた料理で。簡単で美味しいから皆にも楽しんでもらえるよ!」

こうして2品の料理が決まったことでレイニーたちは早速材料の調達から始めて、3日後の試食会を成功させるために、奔走することになったのだった。

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