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Level.78 助っ人

Level.78 助っ人

 レイニーの放った雷の槍で、ワイバーンダークナイトたちは2つに分かれて、その片方づつにリトとライクスが分かれて向かい、ワイバーンダークナイトたちを倒していった。レイニーがリトの方に加勢しようと空を飛んでいると、前線から少し離れた距離でワイバーンダークナイトたちに囲まれて、悲鳴を上げている冒険者がいた。

「た、助け…!」

「いけない!助けなきゃ!」

 レイニーが慌ててその男性冒険者の元へ飛んでいき、ザシュッという音と共に男性冒険者を殺そうとしていたワイバーンダークナイトたちを倒した。

「大丈夫ですか!」

「あ、ああ。すまない…。」

「気を抜かないでください、次が来ます!」

 男性冒険者を倒すとレイニーは直ぐに近くまで迫ってきていたワイバーンダークナイトたちに振り返って、槍を構え直した。そしてリトのいる前線まで進まなくては…と思っていると、レイニーの元に小竜の巣の上空から魔法攻撃の雨を降らせる大役を済ませてきたレイクスがやってきた。

「レイニーさん!」

「レイクスさん!」

「あにぃはどこに!?」

「ライクスさんなら、東の大群の方にいます!私はリトの加勢に向かいます!」

「分かりました、情報ありがとう!」

 そういうと、レイクスが兄であるライクスの加勢に向かうことになり、レイニーは少し安心した。それからレイニーがリトの元へ行こうとするのを遮るようにワイバーンダークナイトたちが行く手を塞いでいるので、レイニーは舌打ちをした。

「っち!そこを退きなさい!」

 レイニーは雷の一閃を放って、横一直線にワイバーンダークナイトを屠ると、リトの元へ飛んで行った。だがリトに伸ばした手に矢が刺さった。

「!!」

 レイニーはその矢が飛んできた方角を見ると、レイニーたちの上空にワイバーンダークナイト軍の中での弓兵部隊が配置されており、レイニーたちに向かって矢の雨を降らせてきた。レイニーは直ぐに飛行リングで一気に弓兵部隊まで距離を詰めたが、そんなレイニーの足をワイバーンダークナイトが掴んだ。

「なッ!?」

 ガクンと引っ張られてレイニーは空に放り出された。直ぐに飛行リングで体制を立て直したが、そんなレイニーに次々とワイバーンダークナイトたちが剣を突き立てようとしてきた。レイニーはそれを槍でいなしながら、剣が体を突き抜けないようにしていたが、あまりの数の多さにレイニーは遂に右腕に剣が突き刺さった。突き刺さった痛みにレイニーが一瞬怯んだ隙にワイバーンダークナイトたちはチャンスだと思って、一斉に剣をレイニーに突き立てた。

「がッ…!」

 レイニーの体にはたくさんの剣が突き刺さり、レイニーは思わずその痛みから吐血した。レイニーが串刺しになった瞬間、周りの冒険者たちはレイニーを助けようと、ワイバーンダークナイトたちを蹴散らしていった。

「レイニーさん、大丈夫か!」

 声を掛けてきてくれたのは先ほど助けた男性冒険者だった。まだ近くにいたようで、レイニー救援をすべく直ぐに駆け付けたようだった。レイニーに突き刺さった剣をすべて引き抜くとレイニーはその痛みを耐えるように、唇を噛んだ。そしてレイニーは視界が霞む中、レイニーは手をパンパン!と2回叩いた。そして現れたレイニーの精霊であるミナとフーカが主であるレイニーの様子に顔面蒼白だった。

「主!ここは一旦後方支援部隊に戻りましょう!」

「ミナ、私たちで主人様を運びましょう。」

「分かったわ。追撃してくる輩は私が蹴散らすわ。」

 二人がそう話している中、レイニーはなんとか意識を保っていた。そしてフーカに運ばれた。だが執拗にレイニーを殺そうと追撃してくるワイバーンダークナイトたちにミナの雷撃が放たれるも、奴らは数でミナを突破するとミナはワイバーンダークナイトたちに串刺しにされ、しゅわっという音と共にその姿を消してしまった。

「ミナ!!」

 フーカが叫んだ声でレイニーは薄く目を開いた。

「フーカ…私のことはいいから、逃げて…。」

「何を言っているんですか主人様!!ミナは一旦姿を消したようですが、まだ気配はあります、大丈夫です!私が必ず後方支援部隊に送り届けます!」

 フーカの気迫に押されて、レイニーはミナのいなくなった空を見ていると、次々とフーカたちの後を追いかけてくるワイバーンダークナイトたちを捉えた。

「う”ッ!!」

 レイニーは自分は運んでいるフーカからぐいっと手で押して離れると握っていた槍を構えて、ワイバーンダークナイトたちに迎え撃つために魔力を溜めた。

「いけません、主人様!!」

 ワイバーンダークナイトたちから串刺しにされた後の体では体内に空いた穴から魔力が溢れ出し、レイニーはなかなか魔力を貯めることが出来なかった。だが、そんな体にレイニーは緻密な魔力操作によって、蒼電糸膜を発動させた。

「フーカ、これで追っ手はしばらく来ないから…、急いで…後方支援…部隊、に…。」

「主人様!」

 レイニーは体中から溢れた魔力や出血量が多く、フーカは直ぐにレイニーを担ぐとフーカが飛べるマックスのスピードで戦場を駆け抜けて後方支援部隊に辿り着いた。

「すみません!エミュレット様はいらっしゃいますか!」

 精霊であるフーカが見えない人はどうして傷だらけの冒険者がぷかぷか浮いてるのか不思議で後方支援部隊はざわついた。その騒ぎに後方支援部隊のテントからエミュレットが出てくると、フーカは目を輝せた。

「エミュレット様!」

「フーカさん?それに担いでいるのは…レイニーさん!傷だらけじゃないですか!今直ぐ処置します!さぁ、このテントの中に!」

「はい!あの、ここにくる途中で主人様のもう1人の精霊のミナが串刺しにされて姿が消えてしまったのですが…、大丈夫でしょうか…。」

「契約した精霊は主が死なない限り、その契約は続く…何度でも甦れます。だから、ミナさんのことも大丈夫です。」

「分かりました…!私は主人様を信じて待ちます!エミュレット様、どうか主人様の命を繋いでください!」

「任せてください。レイニーさんは必ず復活させます。」

 フーカの必死の形相にエミュレットは笑顔で答えると周りにいた救護班のメンバーに次々と指示を出して、レイニーの治療にあたった。フーカがテントの隅っこでその様子を見ながら手をぎゅっと握り合わせてレイニーの目が覚めるのを待った。

 ――――――

 そして戦場ではリトの元にレイニーが負傷して後方支援部隊に飛んでいったことが情報として回ってきた。

「なに!?レイニーが!?」

「はい、俺を助けてくれたレイニーさんが…多分精霊を駆使して後方支援部隊に下がったみたいです。俺を守ってくれた人があんなにもボロボロになるなんて…。」

「そうか…。向こうさんは俺たちプラチナランクやレイニーのゴールドランク冒険者の情報を掴んでいるようで間違いなさそうだ。現にこうして囲まれちまったり、な。」

 リトと男性冒険者が話している間に2人の周りにはたくさんのワイバーンダークナイトたちがいた。

「ひ、ひぃ!!!」

「男が情けない声を出すなよ!俺らを殺そうとして来ているんだな、受けて立つぜ!行くぞ!」

「は、はい!」

 リトの合図と共に男性冒険者は剣を構えてワイバーンダークナイトに剣を振りかざした。

 一方、小竜の巣のガルテ総統の元にはゴールドランク冒険者1人を後方支援部隊行きにすることに成功したとの報告が舞い込んできた。ガルテ総統は表情を一切変えず、報告してきた部下を下がらせた。そして巣の最奥にいる空間で1体の小竜がバサバサッとガルテ総統の前に降り立った。その小竜の背に乗っていた人物はガシャガシャと鎧を鳴らしながらガルテ総統の前に来ると跪いた。

「ガルテ総統様、お呼びでしょうか。」

「ソーシャス、これからの軍の指示はお前がしろ。残るプラチナランクとゴールドランクの冒険者を殺してこい。」

「はっ!」

 ソーシャスと呼ばれた人物は水色の流れるような長髪を背中あたりで一つに縛り、そして青を基調とした鎧を身にまとい、小竜の中でも珍しい水属性のブレスを吐くとされる水の小竜を操る、ワイバーンダークナイト軍の将軍だった。彼に一任されたこの戦いでソーシャスは出世するチャンスだと野心を燃やしていた。そして、やってきた小竜にヒョイっと乗ると前線の様子を見に行くべく、小竜を操縦して向かったのだった。

 ――――――

 一方でレイニーたちが休む後方支援部隊の元にも動きがあった。総指揮を執っているクルエラの元に伝令係の青年が転がりこむようにクルエラのいるテントにやってきた。

「クルエラ様!ついに…ついに来ました!"イグリス騎士団"が!!!」

「来てくれたか!」

 クルエラが嬉々としてテントの外に出ると、ガシャガシャと鎧の重そうな音を鳴らしながら、数十名がクルエラの元にやってきた。そして頭に被っている兜を取るとその下から美女が現れた。

「クルエラ。少し遅れてしまってごめんなさい。団長が遅刻しちゃってね…。」

「セリナ!いやいや、君たちが今のタイミングで来てくれてありがたい!戦況の説明をしたいんだが…。その団長は…?」

「はぁ…団長はまだ来てないのよ。あまりにも遅いし、副団長の私の判断で勝手に先に来ちゃったのよ。」

「これまたいつもの自由奔放だな…。」

 クルエラが苦笑いをしていると、セリナと呼ばれた明るい茶髪にウェーブをかけてポニーテールにしている凛々しい女性だった。

「戦況の整理と共に状況把握が先ね。クルエラ、少しでも良いから教えてちょうだい。」

「分かった。私のテントで話をしよう。」

 セリナが率いて来た団体はハインツ皇国の隣国、アルシュッド王国の王国騎士、イグリス騎士団というものだった。王国騎士であるイグリス騎士団は一人一人の強さが冒険者ランクゴールドに匹敵するほどの強さらしく、セリナとクルエラは年も近いこともあって意気投合し仲が良かったのだった。

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