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Level.60 大丈夫

Level.60 大丈夫

レイニーたちが後方支援部隊のテントに戻ってくると、救護班の女の子がレイニーを見ると駆け寄ってきた。

「レイニーさん!あのダークエルフの女の子が目を覚ましたよ!」

「!本当ですか!?今行きます!」

 レイニーは魔力切れでふらふらしつつもキュリアの方を借りてひょこひょこと歩きながらダークエルフの少女が眠っていたテントに入った。だが、簡易ベッドには彼女はおらず、救護班の冒険者の手が示す先を見てみるとテントの隅っこで縮こまっているのが見えた。

 簡易ベッドで使っていた布団を頭からかぶってカタカタと震えているようだった。

 レイニーはそんなダークエルフの少女の前に跪き、手を差し伸ばした。

「もう大丈夫だよ。急に人の多いところに連れてこられてびっくりしてるんだよね?」

「…魔物は?」

「!魔物はみんなお姉さんたちが倒したから大丈夫。これから人界に帰るから。森に戻れるよ。」

 レイニーが優しく話しかけるとダークエルフの子はとても小さな声で魔物の心配をしていた。彼女は魔物がいるかもしれないという恐怖で縮こまっているのだとレイニーは気付いた。そこでレイニーが魔物を全部倒してきたことを話すと彼女は少しだけ布団から顔を覗かせてレイニーの顔を見た。レイニーは彼女の視線に気付くと安心させるように小さく微笑み、さらに前に手を差し出した。少女はレイニーの手と顔を交互に見るとおずおずと手を出してレイニーの手を取ってくれた。

「!ありがとう。あなたの名前は?」

「…アル。」

「分かった、アルね。私はレイニー。私はあなたが助けてと呼んでいる声に導かれてあなたを見つけたの。何があったか話せる?」

「う、うん…。私たちダークエルフは人界に里を築いて穏やかに暮らしていたの。でも、ある時魔界から魔物たちが転移魔法陣を使って押し寄せてきた。男は問答無用で魔物たちに殺され、女子供は捕虜として魔界へと連行されて来たの。それからは1ヶ月に1回くらいのペースで1人ずつ牢屋から魔物に引かれて出て行ったんだけど、誰も帰ってこなくて…。私が最後の1人になってから牢屋から出る時に隙を見て逃げ出したんだけど、荒野にあった東屋で休憩していたらなんか魔物の軍隊が通過して私隠れてたら東屋が壊れて…出れなくなっちゃって…。」

「それであの場所にいたのね。怖かったよね…、もう大丈夫だよ、安心して。人界に帰れるから。」

「…うん!」

 ダークエルフのアルはやっと布団から顔を出して少しぎこちないような感じがするが笑顔を見せてくれた。レイニーは彼女の本当の笑顔を引き出してあげないとという使命感を感じた。レイニーは顔を出してくれた彼女の頭を撫でてあげていると、彼女は眠くなったのかゆっくりと舟を漕ぎ始めたので、レイニーはお姫様抱っこで簡易ベッドに寝かせてあげると布団をかけてあげた。

 そしてダークエルフの少女が眠ったことでレイニーは報告のためにクルエラのいるし 司令部のテントへ向かった。

「クルエラ様、あの例のダークエルフの女の子、目が覚めまして、少し話を聞くことができました。」

「おお、そうか。ついに目覚めたんだな!それで様子は…?」

「人間がたくさんいる場所に連れてこられて警戒していたようですが私が大丈夫と言ったら私の手を握ってくれました。」

 レイニーは彼女が手を取ってくれた瞬間の時を思い出して自分の手をぎゅっと握ってその感覚を思い出していた。

「そうか…。彼女の名前はなんと?」

「アルって言ってました。」

「アル殿か…。ダークエルフの里は無くなってしまったかもしれないが、森で新たに暮らすことはできよう。私も彼女に支援しよう。」

「ありがとうございます。クルエラ様。出立はもう直ぐですか?」

「ああ。今転移魔法陣の最終チェックをしてもらっているところだ。レイニー殿は一応念の為に病院に行ってもらうからな。」

「えっ、私今はポーションで回復して…。」

「一度ボロボロになったんだ、身体の外傷は消えても内側や傷は分かりづらい。一度病院で診てもらいなさい。」

「う…。はい…。」

 レイニーはクルエラ様に言いくるめられ病院へ行く羽目になったのだった。それから数分で転移魔法陣の最終チェックが終わり、レイニーたちは冒険者ギルドの職員が待っているピーゲルの街の広場までテレポートしたのだった。

 一瞬で帰ってきたピーゲルの街並みを見てレイニーは大きなため息を吐いた。

「な~に大きなため息吐いてんだよ!」

「リト…。なんか帰ってきたな~と思ったらでっかいため息が出ちゃったのよ。」

「ま、そうなる気持ちもわかるな。さてと、レイニーは病院行きだと聞いてるぞ?」

「う…そういうリトだって診察と点滴治療があるって聞いてるけど?」

「なっ…、2人して体を酷使したもんなー。病院に行きますかー!」

「そうだね。」

 2人で苦笑いをしてピーゲルの街の病院に行くと、看護師がレイニーとリトの格好を見ると、グランドクエストから帰ってきた冒険者だと直ぐに気づいて医師を呼んで診察するべく部屋へと通されたのだった。

 ――――――

 病院では検査入院のために2,3日掛かり、レイニーはピーゲルに帰ってきてからまだザルじいに出会えていなかった。だから、レイニーは退院すると直ぐにザルじいの待つ店舗兼住宅の玄関を訪れた。からんからんと扉につけたベルが鳴り、家の中を覗くとちょうどキッチンで料理をしていたザルじいと目があった。

「た、ただいま。ザルじい。」

 レイニーがそういうとザルじいは切っていた包丁を置くと、ズンズンとレイニーに近付いてきた。レイニーはザルじいが怒ってるのかと思って後退りしたかったが、あいにくレイニーの後ろは玄関扉であり、逃げ場は無かった。

 そしてザルじいがレイニーの目の前まで来るとレイニーの肩をガシッと握った。そしてぐいっと自分の方に抱き寄せた。

「本当に…本当に無事で良かったわい…。」

「ザルじい…。」

 ザルじいは涙声でレイニーを抱きしめてくれた。レイニーは今回のグランドクエストで初めて魔界で1泊したので、ザルじいにはとても心配をかけてしまったんだなと思って抱きしめ返した。

 ――――――

 レイニーもザルじいも落ち着いた頃、ザルじいはレイニーが病院に検査入院している間に冒険者ギルドから手紙が届いていたようで、コーヒーと一緒に手渡された。

「なんだろう…ランクアップとかかな?」

 レイニーがガサガサと手紙を開いて中身を確認すると、やはりというべきか、ランクアップについてともう一つクルエラ様からの言伝を預かっているから来て欲しいとのことだった。

「クルエラ様からの言伝…?ってなんだろう…すごい嫌な予感…。」

「まぁ、レイニー、傷が治っているようなら冒険者ギルドに行ったらどうじゃ?」

「うん、そうだね。今から行ってくる!」

 レイニーは直ぐに冒険者の服に着替えると家を飛び出して冒険者ギルドに向かった。

 ギルドに到着すると、シルビーさんが手招きしていたのでカウンターまで行くと、話が通っているみたいで、レイニーは直ぐにギルド長室へと通されることになった。

「よくきてくれた、レイニーくん。傷の具合はどうだね?」

「はい、もう完治してますが…ジルビドさんたちの方が痛々しい気がしますよ?それにここにいるのはゴールドランク冒険者の皆んなじゃ…。」

 レイニーは自分の心配よりもジルビドやハルストの頬に貼られたガーゼなどの治療の痕が痛々しかった。そしてレイニーはこのギルド長室に入って気付いた、ジルビドの机を真ん中として左右に2人ずつ並んでいる冒険者がゴールドランク冒険者であることに瞬時に気づいた。

 そしてなぜゴールドランク冒険者が集まっているのか分からずにオドオドしていると、ジルビドが軽く笑ってから"今から説明するよ。"と答えくれた。

「実はゴールドランクの上にはもう上がるランクがなかったんだが、最近の決定でゴールドランクの上、プラチナランクを創設することになったんだよ。」

「プラチナランク…。」

「そう。レイニーくんはゴールドランクへのランクアップとそしてここからがメインだ。クルエラ様からのリクエストでプラチナランク創設を祝う進呈式で会食が開かれるんだが、レイニーくんの料理の腕を見込んで食事メニューの監修をして欲しいらしいんだ。」

「え…、えぇえええええええ!!!?」

 

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