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Level.58 風の魔法

Level.58 風の魔法

レイニーとハルストの奇襲にメデューサ軍は不意を突かれたようで、狼狽えている間にレイニーの槍やハルストの片手剣に体を刺されて絶命していった。だが、少しずつ体制を立て直してメデューサたちはたった2人で奇襲にやってきたレイニーたちを取り囲んで、石化魔法の光線を放ってきた。その光線にあたれば最後、石化が始まってしまう恐ろしい魔法だった。

 2人が後方支援部隊から飛び立つ時にクルエラから支給されたあるものを使う時だとレイニーとハルストは目を合わせると背中に背負っていた盾を展開して広げると鏡の盾がメデューサたちを写した。そして、石化魔法の光線がレイニーに放たれた瞬間、レイニーはバッと鏡の盾を構えてその光線を跳ね返した。跳ね返った光線は鏡によって屈折し、別のメデューサに光線が当たってそのメデューサは石像になってしまった。

「こ、こいつら鏡の盾を持ってやがる!」

「ひ、怯むな!石化魔法を放て!」

 メデューサ軍はそんな鏡の盾に怯えることなく石化魔法の光線を撃ってくるので、レイニーはハルストと共に頷いて背中合わせになった。それからお互いの鏡の盾をガンッとぶつけ合わせてさらに鏡の盾を開いて広範囲を敵を鏡で捉えられる特注の鏡の盾の真骨頂を見せた。そしてハルストの光の刃をそのドッキングして広くなった鏡の中心に刺し、鏡の盾の端の方を曲げて光の刃を取り囲むようにすると、ハルストは光の刃に魔力を貯め始めた。

 そして…。

「これを食らっても立っていられますか?」

 そう言ってハルストが光の刃を"ハッ"という気合の言葉と共に突き出したことで鏡によって光の刃の光が大量に凝縮され、ハルストがその光の刃を突き出しただけで強力な光線がメデューサ軍を分つほどの威力を見せた。

 魔界の地面がじゅう…と焼け爛れているのをみるとそれほど高温の光の刃だったことが見て取れた。

「す、すごい…。」

「クルエラ様からテントの鍛治師に超特急で作らせた特注の鏡の盾なら私の力を最大限に発揮できるだろうとのことで…。実際やってみたのは初めてでしたが、これはいい攻撃方法ですね。活用法は他にもありそうです。」

 そう言うハルストはなんだかワクワクしているようで嬉々として展開していた鏡の盾を収納してある程度光の刃で焼き払ったメデューサたちには目もくれず、レイニーたちはメデューサ軍の総大将、ヒュドラがいるところまで走った。

 レイニーは一度魔物大図鑑でヒュドラについて調べたことがあった。ヒュドラは9つの頭を持つ蛇でその頭を切ってもすぐに再生するどころか2倍になって復活すると言うおまけ付き…。さらには猛毒ガスも吐いてくるらしい。その話を本で見た時はこんな相手とは戦いたくないなぁ…と他人事のように思っていたが、今レイニーの前には本で見た時よりも大きくチロチロと見せる真っ赤な蛇の舌にレイニーはさぁーっと顔から血の気が引いていく感覚に襲われた。

「……さん!…ニーさん!レイニーさん!」

「はっ!」

「ぼーっとしている場合ではないですよ、ようやくヒュドラのご登場みたいですよ…。」

 ハルストに声を掛けられるまでレイニーはヒュドラの殺気に当てられていたのだった。それほど強大な魔力と殺気を含んだ眼光…レイニーはこんなやつを倒せるだろうか…と思っているとヒュドラが息を吸い込む動作に入った。

 レイニーはその動作に入ったのを見ると、上空にいるノアリーに向かって叫んだ。

「ノアリー!!!!」

 レイニーの必死の叫びに魔界の雲を突き抜けて漆黒のドラゴンがレイニーたちの地上まで急降下して来るとすぐさまレイニーとハルストの服に爪を引っ掛けて戦線離脱をした。

「あっ…ぶなかった~…」

「あの猛毒のガスを吸い込んだら最後、全身が焼けるような痛みに悶えながら絶命すると言うのが魔物大図鑑に載っている文面でしたね…。」

 ノアリーの爪の先でレイニーは今まで無意識で止めていた呼吸を再開させるともう少しで毒ガスに当たるところだったのをノアリーが助けてくれたのでレイニーたちは間一髪撤退することが出来たのだった。

 レイニーたちはメデューサたちの頭上で様子を伺っていると、やはりヒュドラが毒ガスを吐き出し始めた。周りのメデューサたちもそのガスを吸い込み、バタバタと倒れていくのを見ているとレイニーはそのガスの近くにまで人界側の冒険者たちが進んでいるのを見つけた。レイニーはその前線で戦っている冒険者に毒ガスのことを教えなければと思った。

「レイニーさん。私が彼らの元に降りて状況を説明させて避難させます。レイニーさんは後方支援部隊のクルエラ様にこのことを。」

「分かりました!ノアリー、聞いてたね?ハルストさんをここに残して私たちは後方支援部隊に行こう!」

「あい、分かったぞ!」

 ハルストは自分からノアリーの爪に引っかかっていた防具を外すとヒュンッと直下の冒険者たちの前に落ちていった。それを確認してからノアリーはレイニーを連れて後方支援部隊に戻った。巨体のノアリーが後方支援部隊にやってきたことで、その場は騒然とした。司令部のテントからはクルエラとジルビドが慌てた様子でレイニーを出迎えた。

「レイニー殿、どうしたんだ!?何か問題でも…?」

「今、ヒュドラが毒ガスを吐いたんです!このままの風向きでは直ぐにここにも到達します!皆さんガスマスクの準備を!」

 レイニーは深呼吸してから一気に用件を簡潔的に伝えるとクルエラの方を見た。だが、彼女はガスマスクをするわけでもなく、ノアリーの鱗を撫でながら、こう言った。

「その毒ガスの最前線に私を連れていってくれないか?ノアリー殿。」

「なっ!?クルエラ様、危険です!ヒュドラの毒は…。」

「毒を浴びなければいい話だろう?私は風属性の魔法の使い手でね。少し自信があるんだ。私に任せてくれ。」

「あ~、もうっ!私がクルエラ様とついて行って最前線に向かいます!ノアリー、お願いね!」

「レイニー殿はここで…。」

「私も!い!き!ま!す!」

「は、はい…。」

 なんだか強情なレイニーにノアリーは呆れながらも直ぐに身を低くして2人が背中に乗りやすいようにしてくれた。2人が背中に乗るとノアリーは"それではいくぞ"と声をかけてからその巨体をふわりと浮かせて直ぐに翼で高度を上げるとメデューサ軍総大将ヒュドラが吐いた毒ガスの最前線に向かった。

 空から見ても紫色の毒々しいカラーの煙がヒュドラのいる場所から冒険者側の方へ風で流れてしまっていた。それを見てクルエラは"ふむ"と頷いてからレイニーの方を見た。

「私はここから投下してあの毒ガスを払おう。それをレイニー殿はここで確認してほしい。」

「分かりました。無茶だけはしないでくださいね?」

「ああ。分かっているさ。」

 そう言うとクルエラはノアリーの背中からヒュドラの毒ガスが迫る前線に向かって落下して行った。弾丸のようなスピードで風を切って進んでいくクルエラにレイニーがハラハラしながら上空で見ているとクルエラは地面に衝突する瞬間に地面に風を起こしてふわりと優雅に着地した。

 総指揮官のクルエラが最前線に現れたことで冒険者たちは驚きをあらわにした。だが、そんな言葉を耳を傾けている場合ではなかった。

クルエラは黙って冒険者たちに背中を受けて一歩、また一歩と風に流れて近づいてくる毒ガスに近付くと、鞘から片手剣を引き抜き、その剣に魔力を込めてぶんっと横一線に薙ぎ払った。

 その瞬間。

 ゴォオオオオオ!!!という途轍もない突風が吹き荒れ、人界の冒険者軍に迫っていた毒ガスがその風でどこかに吹き飛んでいってしまったのだった。レイニーはその様子を上空から見ていたが。単に目の前の毒ガスを晴らしただけではなく、ヒュドラが吐いた毒ガス全部を消し去るほどの威力の風魔法が繰り出されたのだった。

「流石、クルエラ様…。あの毒ガスを一瞬で…。ノアリー、クルエラ様のところに降りて!」

 レイニーはノアリーにそんな風に指示すると、ふわりと優しい風がクルエラの元にやってくると、ドラゴンのノアリーとレイニーが地面に降り立ってきたのだった。

「クルエラ様の魔法攻撃って風属性だったんですね!あの毒ガスを一撃で消し去るなんて…、私上空から見ててすごくびっくりひました!では、クルエラ様はこの後後方支援部隊に…」

「何を言っている。私はまたいつ吐くかもしれぬヒュドラの毒消し担当としてこの場に残るぞ。」

「で、ですが、総指揮官のクルエラ様がここにいては後方支援部隊が…。」

「後ろにはジルビド殿が守ってくれている。大丈夫だよ。」

 そう言うとレイニーは反論できず、"うぐぐ…"と唸った。レイニーは確かにクルエラの風魔法があればいくた毒ガス攻撃が来ても対処出来るし…と思った。

「クルエラ様が無理しないよう、私がサポートに入ります!」

そう言って話している間に毒ガスが放たれてきた方角からズルズルと何かを引きずる音が聞こえ始めたので、レイニーたちは武器を構えた。

 そして姿を現したヒュドラにレイニーたちは最後の一戦を仕掛けるのだった。

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