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Level.49 素材を求めて

Level.49 素材を求めて

 グレンまでは馬車で3時間ほどで着いた。レイニーが前にいた世界での日本のような和を基調とした趣で真っ赤な鳥居が目印となっている街だった。

「ここがグレン…。紅鳥の素材ってどこに行けば貰えるのかな…?」

「とりあえず冒険者ギルドに行って聞いてみようぜ。」

「うん、そうだね!」

 レイニーとリトはまずグレンの冒険者ギルドを訪れて紅鳥の素材を貰える場所について尋ねてみた。

「あの、すみません。私たち紅鳥の素材が欲しいんですけど…。」

「紅鳥の素材でしたら街に入って左手の神社に行ってみてください。そこで受け取れますよ。」

「ありがとうございます!行ってみます!」

 レイニーたちは冒険者ギルドで有益な情報を入手し、早速神社に行ってみると、巫女が箒で落ち葉の掃除をしていたので、レイニーはその巫女に話しかけた。

「すみません、紅鳥の素材が欲しいんですけど…。」

「冒険者の方ですね。紅鳥の素材なら巫女長(みこおさ)から話を聞いてから貰ってください。今巫女長を呼んできますので、お待ちください。」

「あ、はい。分かりました。」

 巫女は箒を持って神社の奥の社務所に行き巫女長と呼ばれる人を呼びにいってくれた。そして、呼ばれてきたのは黒髪をポニーテールにして黒い瞳の日本人のような女性が現れた。

「あなた方が紅鳥の素材を欲しいという冒険者様ですね?」

「はい。あなたが巫女長の…?」

「ええ、私が巫女長のミトといいます。紅鳥の素材が欲しいのでしたら、少し場所を変えましょう。付いてきてください。」

「?はい…。」

 レイニーは巫女長のミトの誘導で神社の社務所の脇の道に入り、少しずつ滝の音が聞こえ始め、レイニーたちは紅葉している木々のトンネルを抜けて滝がある一つの水車小屋のところに出てきた。

「こんなところに小屋が…。」

「あの小屋で話を聞きます。お入りください。」

 レイニーとリトはミトに勧められて中に入ると、ミトは何やら魔法を発動させた。

 青緑色の立方体ができたからと思えば、それが大きくなり小屋全体を覆い尽くし、パキンという音と共に魔法が完了したようだった。

「ミトさん、今のは…?」

「この小屋の中の音を周りに聴かれないために音を遮断しました。そういう魔法です。」

「そんな魔法が…、ミトさん、今度教えていただけますか?」

「私でよければ。それでは…紅鳥の素材を渡す前に聞きたいことがあります。」

 ミトの真剣な表情にレイニーたちはごくりと喉を鳴らした。どんな質問をされようともすみれを救うためだと思って身構えた。

「紅鳥の素材を使って何をするおつもりですか?」

「紅鳥の素材と複数の素材で筋力増加の薬を作ろうと思ってるんです。私たちの大事な人が病気で筋肉が衰え始めているんです。なんとかして助けてあげたくて…。」

 レイニーはミトに問いかけられると素直に理由を話した。すみれの病気を治したいその一心でレイニーはミトを真っ直ぐ見つめた。レイニーのその視線にミトは目を閉じて"ふう"と一息吐くと、レイニーの目を見て話した。

「事情は理解しました。紅鳥の素材はとても貴重です。私利私欲のために使う不届きものもいます。ですので、この神社では巫女長の私が紅鳥の素材の使い道を尋ねてその真意を聞いてから渡すことにしているのです。試すようなことをしてごめんなさい。約束の紅鳥の素材は用意しましょう。」

「そうだったんですね!紅鳥の乱獲とか防ぐためですよね、素材を簡単に渡さないようにしている事情、理解しました。」

「ありがとうございます。紅鳥の何が欲しいですか?」

「えっと、粉塵です。」

「分かりました。水車小屋を出て待っていてください。」

 ミトは小屋にかかっていた音を遮断する魔法を解き、レイニーたちを外に出すと水車小屋の隣の蔵に入って行った。そしてしばらくして麻袋に入った紅鳥の粉塵をレイニーに渡した。

「これが紅鳥の粉塵です。これを使って大切な人を助けてあげてください。」

「ミトさん、ありがとうございました!薬の材料に使わせていただきます!必ずこのご恩はお返しします!」

 レイニーはミトの手を握ってその手に喫茶レインの名刺を握らせてミトとはその場で別れた。

 こうしてレイニーたちは紅鳥の粉塵を手に入れた。次なる素材を求めるためレイニーたちは一旦ピーゲルの街に戻った。

「リト、次の素材は?」

「エルフの血だな。エルフは少数民族でどこにエルフの里とかがあるか分からないんだ。禁書庫で調べてもエルフに関する記述が少なくて、どこに行けばエルフに会えるのかすら分からないんだ。ただエルフは長寿の象徴だ。だから、すみれさんの薬にも使えるかと思ったんだけど…。」

「エルフの居場所かぁ…、冒険者ギルドにはそう言った情報ないのかな?」

「ダメ元で行ってみるか。」

「そうだね。」

 レイニーたちは冒険者ギルドにエルフに関する情報がないかと思い尋ねてみた。受付嬢のシルビーがカウンターから2人に気づいてくれた。

「2人ともこんにちは。今日はどうしたの?」

「シルビーさんこんにちは。今日はちょっとお聞きしたいことがあって…。」

「?なんでもどうぞ!」

「エルフに会いたいんですけど、エルフがいる場所とか知りませんか?」

「エルフかぁ…少数民族だからね、情報あったかなぁ…。ちょっと待ってて。」

「はい。」

 シルビーは少し考える仕草をしたが、直ぐにカウンターの奥の部屋に行ってエルフに関する情報を探してきてくれることになった。レイニーたちがカウンターでその時を待っていると、シルビーが少し嬉しそうな顔をして戻ってきた。

「レイニーちゃん!エルフの情報あったよ!ハインツ皇国とアルシュッド王国の国境のムーゲルツィオっていう村にエルフのシスターがいるらしいの!是非行ってみて!」

「ムーゲルツィオ…、ここからだとどこの街が一番近いですか?」

「そうねぇ…、ベーゲンブルグかな。そこまでならテレポート結晶で飛んで後は馬車で…って感じかな。」

「分かりました!情報ありがとうございます!」

 レイニーはシルビーからエルフに関する有益な情報を手に入れることができたので、その日はグレンに行ったりして疲れたし、もう既に夕方になっていたので、レイニーたちは翌日にムーゲルツィオに向かうことにしたのだった。

 ――――――

 翌日。レイニーは朝ごはんを食べて冒険者ギルドで待ち合わせをしていたリトと合流し、ベーゲンブルグまでテレポート結晶で飛んだ。そこからムーゲルツィオまでの馬車を借りてそこに向かった。ムーゲルツィオに向けて次第に深くなる森の木々を見ながらレイニーたちは無事にムーゲルツィオまでやってきた。馬車を操ってくれていたおじさんにお礼を言ってムーゲルツィオを訪れると、その村には荘厳で立派な教会があった。

「すごく綺麗な教会…。国境の村にこんな教会があるなんて知らなかった…。」

「だな。よし、エルフのシスターさんを探そうぜ。」

 レイニーはそんな教会に目を奪われつつ、直ぐにこの村に来た理由を思い出してシスターを探すことにした。まずは村の村長に挨拶をと思い、近くにいた村人に村長の居場所を聞くと村の奥の一番大きな家に村長はいると教えてもらったので、レイニーたちは直ぐに村長の家を訪ねた。

「おやおや、冒険者様、よくぞいらしてくれた。何もない村じゃが、ゆっくりして行っておくれ。」

「ありがとうございます。それで…、この村のシスターにエルフがいると聞いたのですが…。」

「ええ。この村のシスターはエルフですぞ。彼女なら教会にいます。」

「ありがとうございます。これから会いに行ってみます。」

 そう言ってレイニーたちは村長の家を出ると村の象徴とも言えそうな教会に足を踏み入れた。中に入ると大きなステンドグラスが目を惹き、太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。それが美しくしてレイニーは見惚れているとリトに肩を叩かれて"エルフのシスターを見つけないと!"と言われてレイニーはハッとして直ぐに教会の中でシスターを探した。するとステンドグラスの下にシスターの装いの女性が祈りを捧げていたので、レイニーたちは静かに近付いて祈りの邪魔をしないようにした。祈りが終わったようで振り返ったシスターにレイニーは息を飲んだ。

 透き通るような白い肌に金色の絹のような髪。エメラルドのように輝く緑色の瞳を持つシスターにレイニーは少しの間見惚れてしまっていた。直ぐに意識を戻したレイニーがシスターに問いかけた。

「あなたがこの村のエルフのシスターですか?」

「はい。私はエルフですが…、あなた方は?」

「私はピーゲルという街の冒険者でレイニーと言います。今訳あってエルフを探していたんです。お話を聞いてもらえますか?」

「レイニーさん…。分かりました。お話をお聞きしましょう。」

 エルフのシスターはそう言って頷くと教会のベンチにレイニーたちを誘導して座った。レイニーはすみれの筋肉が衰える病気のことやその人を助けたいこと、その薬にエルフの血を使用したいことを話した。全てを話し終えるとシスターは目を閉じて聞いていたので、目を開けて答えてくれた。

「その方を助けたいためにエルフの血が必要なのですね…。分かりました、レイニーさんの真摯なお気持ち、感じとりました。私の血をほんの少し差し上げましょう。」

「!ありがとうございます、シスター!」

 レイニーの真剣な気持ちにシスターも分かってくれたようで、レイニーにエルフの血を少しだけ分けてくれることになった。レイニーが用意した試験管なほんの1,2滴程度の血を垂らしてレイニーたちはシスターに頭を下げた。

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