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Level.44 キュクロプス戦

Level.44 キュクロプス戦

 神殿に入ると、本当に雷竜が住んでいるのかと思うほど苔で覆われた神殿の中を進んだ。神殿の天井が崩れて日の光が差し込む少し広い空間に出た。レイニーが日の光の先を見るとそこにはノアリーと同じ黒い鱗に覆われながらも体に雷属性の色である黄色の発光色の線が引かれている、何とも威圧感のある、ドラゴンが鎮座していた。

「久しいな、ライニックよ。」

「ノアリーか…。人間の子供などを連れて今日は何しに来た。」

 ライニックと呼ばれた雷竜はそのままノアリーと今回のこの場に来た理由を説明してくれた。その間にレイニーはライニックと呼ばれた雷竜のいる神殿をぐるりと見渡した。苔に覆われてはいるが、それがまた神聖な感じを醸し出していて、竜がいそうな雰囲気をより一層引き立てているようだった。そんなことを思っていると、いつのまにかノアリーは雷竜に鱗が欲しいという説明を終えたらしく、レイニーの方を見ていた。

「レイニー?」

「あっ、ごめんなさい。な、なに?」

「雷竜には話を通しておいた。あとはお主の口から気持ちを伝えるといい。」

「えっと、雷竜様、武器の新調のために鱗が欲しいんですが…。」

「我がそう易々と人間の子供に自身の鱗を渡すと思うたか。」

「えっ…。」

「と、言いたいところだが、いい機会だ。冒険者というお主に試練を課そう。このライニック樹海にここ最近居座るようになった、キュクロプスを倒してもらおうか。」

「キュクロプス…一つ目の巨人ですね?」

「ほう、人間の小娘にもキュクロプスがわかるとは…。」

「ちょっとそう言った魔物の情報は持っているので…。そいつを倒してくればいいんですね!よし、リト、行こう!」

 レイニーに鱗を渡す代わりにこの樹海に居座るようになったキュクロプスの討伐を課せられるとレイニーはリトの手を取ってキュクロプスを探しに行こうとした。だが、レイニーたちが神殿を去ろうとしたその行手を雷竜の爪が阻止した。

「キュクロプスはお主1人で、倒してくるんだ。」

「私…1人で…。」

 レイニーはそこで"無理です!"と言おうと思ったが、ここで無理だと決めつけて話を断ってしまったら、自分の最高の武器を作ることが出来なくなってしまうと思い、こくりと頷いた。

「分かりました!1人で頑張ってみます!」

 そういうとレイニーはリトから手を離した。するとリトは不安そうな顔でレイニーを見た。そして、リトが持っていた体力回復や魔力回復のポーション、予備の武器を譲り受けた。

「レイニー、無理すんなよ?」

「大丈夫。必ず戻ってくるよ。」

「人間の娘よ。情けだ、キュクロプスはこの樹海の川沿いを中心に動いている。その情報だけで奴を探せ。」

「情報ありがとうございます!」

 そう言ってレイニーは雷竜の神殿からキュクロプスを探しに樹海に飛び出した。

 雷竜の言った情報を頼りにレイニーは川の流れる音に耳を澄ませてその方角へと進んでいった。川に到着したが、キュクロプスの姿はなく、レイニーは川沿いを上流に向かって走った。すると少し進んだところで大きな体の魔物が河原で寝そべっていた。

「(これで一つ目の魔物だったら、キュクロプスね…)」

 そんなことを思いながら少しずつ魔物に近付いていくと、あともう少しのところで、パキッと小枝を踏んでしまった。その音で魔物が目を覚ましたようで、その巨体を持ち上げてレイニーの方を見てきた。

「(一つ目だ!こいつが雷竜様の言っていたキュクロプス!)」

 レイニーはキュクロプスから一旦距離を取って攻撃を見極めた。キュクロプスは河原に転がっている岩を持ち上げると、レイニーに向かってぶん投げてきた。その動きは遅く、レイニーは容易くその岩を躱すことができた。

「(キュクロプスの攻撃は遅い…、これなら避け切れる!)」

 そう思ったレイニーはすでに刃こぼれしていつ壊れてもおかしくない我が相棒を構えて、キュクロプスの足に向かって3連撃の刺突攻撃を繰り出した。だが、キュクロプスの皮膚が分厚いようで、レイニーの相棒の槍はパキンという音と共に壊れてしまった。戦いを開始して早々に相棒が壊れてしまったので、レイニーはここでリトから予備で貰った短剣を1本、腰の鞘から抜いた。

「(短剣3本でなんとかこいつを倒さなくちゃ…!)」

 レイニーは一旦落ち着くためにキュクロプスの視界から逸れ、木々の後ろに隠れて深呼吸をした。

「(キュクロプスの攻撃は遅い、でも、皮膚が分厚くて通常の槍の刺突攻撃でもさほどのダメージは入ってない…。魔法攻撃を試しにやってみるか…)」

 と考えていると、レイニーの隠れていた木々がドゴンと引っこ抜かれて、レイニーの姿はキュクロプスに丸見えになってしまった。

「(しまった…!)」

 レイニーは後ろを取られてしまい、攻撃されるかと思って、自分が出せる一番のスピードでキュクロプスから距離を取った。だが、キュクロプスはレイニーが移動してから右腕を振り下ろしていたので、レイニーはそんなに遅いなら焦ること無かった…と落胆した。だが、恐るべきはその力強さと頑強さである。レイニーは魔力を短剣に込めながら、キュクロプスの左胸を狙って距離を詰めた。そして、雷の槍(短剣ver)を発動させた。ズバァン!!!と落雷の音と共にレイニーの手からゼロ距離で放たれた短剣は小さな稲妻のようにキュクロプスの左胸を突き破り、数本の木を貫いてやっと止まっていた。キュクロプスの左胸からは魔物の血である紫色の液体がビシャビシャ出ていたが、レイニーはそこに魔石がないことに気がついた。

「(魔石はここじゃない…!?)」

 そして雷の槍の付与効果で電撃が体を走ったというのに、キュクロプスはほんの2,3秒スタンしただけで、直ぐに意識を取り戻し、レイニーの腕を掴んで上に持ち上げた。

 キュクロプスから舐め回すように見られて気分を害したレイニーは足を使って体を前後に動かして揺らすとその勢いでキュクロプスの手に向かって腰から2本目の短剣を取り出して刺した。

「ぐあ!!!」

 という声を上げてキュクロプスはレイニーの掴んでいたでの捕縛を解いたので、レイニーはその隙に距離を取ってすぐさま魔力回復のポーションをぐいっと飲み干した。

「(左胸に穴空いてるのに、まだ動くのか…!)」

 レイニーは風穴だけでも開けば少しは倒せる兆しが見えてくるかと思ったのだが、動きは鈍いもののまだ動けている、キュクロプスの体力の無尽蔵さに脱帽した。

 だが、ここで諦めてはいけない、あともう少し。と考えると、レイニーたちを囲う木々をどうにか使えないかと思いついた。それと同時に木々を数本一気に切り倒せるほどの威力を出せる斬撃型の魔法攻撃を編みだせないかと考えた。

 そして、イメージをした。木々を数本一気に切り倒す、雷属性の斬撃…レイニーのイメージが固まってくると、キュクロプスもレイニーに向かって近づいてきていた。

 レイニーはキュクロプスに背を向けて木々の中に誘い込んだ。巨体のキュクロプスは力で物を言わせるようで、木々を薙ぎ倒しながらレイニーに目掛けて走ってきた。

 そしてレイニーが一定の距離を取ると、レイニーは魔力を短剣に込めて、イメージを付与した。そして目の前の2,3本の木に向かって横一線に空間を切った。

「《雷の一閃》(いかづちのいっせん)!!!」

 再びライニック樹海に落雷の音が鳴り響き、レイニーは落雷の眩しさから目を瞑ってしまったが、直ぐに切ったと思われる木々を足で蹴ってこちらに向かってきていたキュクロプスの頭目掛けて木々を薙ぎ倒したのであった。

「があああ!!!」

 光が止むとそこには木々が10本程度キュクロプスの頭に中心に倒されていて、その木が頭にぶつかったからか、キュクロプスは怒りでジタバタともがいていたが、木10本分の重さは流石のキュクロプスでもどうにもできないようで、レイニーはこれをチャンスだと思った。直ぐに腰のポーチから魔力回復のポーションを取り出してぐいっと飲み干すと、魔力がじわじわ回復してくる感覚を味わいながらレイニーは木々を伝って高くジャンプをした。

 そしてキュクロプスの脳天目掛けて《雷の鉄槌》を繰り出した。

「潰れろぉおおお!!!」

「がぁああああ、!!」

 レイニーが高い場所からスタンプしたその落下の引力の重さと落雷の衝撃がプラスされ頭は潰れかかっていたが、キュクロプスはそんなレイニーの鉄槌を押し返そうとしていた。レイニーとキュクロプスの押し問答がほんの数秒続いたところで、レイニーの短剣の方が限界を迎え、パキンとヒビが入ったかと思えば刀身が全て木っ端微塵になってしまった。そこで雷の鉄槌の雷の光が消え、レイニーは頭をフル回転させてどうしようと思っていると、キュクロプスに剣を持っていない方の腕を掴まれ、そして次第に力を入れはじめた。そして…

 ゴギャッ

「あああああああ!!!!」

 キュクロプスはその怪力でレイニーの腕を潰してしまったのだった。そして、腕を掴んだままブンブンとレイニーを振り回すと最後に地面に叩きつけた。レイニーはその衝撃で口から血を吐いてしまった。ゲホゲホと喉から競り上がる血の味を感じながらレイニーは痛みに悶えた。腕の痛みに背中も激痛が走っている。早くキュクロプスを倒さないと…と思っていても体中の痛みから蹲ることしかできずにいた。

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