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Level.43 雷竜に会いに

Level.43 雷竜に会いに

 朝に帰ってきたレイニーはそのまま眠りにつき夕方まで起きてこなかった。ザルじいが心配して声を掛けに来るとレイニーはようやく起きたのだった。

「レイニーが起きてこんからちょっと心配したぞ…」

「あはは…ごめん。熟睡してた…。」

 レイニーは頭を掻きながら謝るとザルじいと一緒に夕飯を作った。メニューは収穫祭の時に使った焼きそばソースと同じソースを使ってお好み焼きを作ったのだった。ソースの香りが香ばしくて懐かしい気分に浸りながらレイニーはお好み焼きをザルじいと一緒に堪能したのだった。

 翌日。レイニーは先日採ってきた"星屑の海洋石"と"天海の琥珀"を持ってピーゲルの街の武器屋を訪れた。レイニーが上機嫌でお店に入ると、先客はおらず、カウンターの奥の方で作業をしている音が聞こえていた。

「すいませーん。」

「おう、待たせたな。レイニーちゃん、もしかしてもう槍の材料を?」

 レイニーがカウンターからお店の奥に向かって声を掛けると、武器屋の店主が現れた。レイニーが来たということは…と思っていると、レイニーは"ふっふっふ…"と不敵に笑って、"星屑の海洋石"と"天海の琥珀"をカウンターにごとりと置いた。

「こ、これは間違いなく、”星屑の海洋石"と"天海の琥珀"…!レイニーちゃん、この数日で一気に採ってきたのか!?」

「はい!頑張りました!」

 レイニーは自慢げに胸を張って答えた。だが、そんなレイニーとは裏腹に武器屋の店主はカウンターの上の代物を見て、少し申し訳なさそうに眉を下げた。

「レイニーちゃん、悪いんだが…。槍を作るための素材はもう一つ必要なんだよ…。」

「えっ!?もう一つ鉱石が!?」

「いや、鉱石じゃなくて、雷属性の武器を作るときに必要な素材でな…。雷竜の鱗が必要なんだよ。」

「雷竜の鱗…。それってどこで獲れるんですか?」

「うーん、俺もそこまでは知らないが…。冒険者ギルドに行けば竜の情報は取り扱っていそうだけどな。」

「分かりました!ギルドに行って聞いてみます!あ、その鉱石たちはそちらで保管していてもらえますか?」

「ああ、大丈夫だよ。レイニーちゃん、無理しないようにな!」

「はーい!」

 レイニーは思わぬ誤解があり、鉱石だけでは槍は作れないと知ると、がっくりと肩を落とした。そんなレイニーに武器屋の店主も苦笑いをしつつ、次なる素材の話をしてくれた。レイニーは雷竜の鱗についての情報を掴むため、武器屋から通りを挟んで斜め向かいになる冒険者ギルドを訪れた。

 今日もクエストを求めて、様々な恰好をした冒険者たちがひしめくなか、レイニーはギルドの受付カウンターに向かった。

「シルビーさーん!」

「あら、レイニーちゃん、こんにちは。今日もクエスト?」

「こんにちは、シルビーさん。いえ、今日は聞きたいことがあって…。雷竜についての情報ってありますか?」

「雷竜かぁ…。多分ないと思うけど…。確認してこようか?」

「一応お願いします!」

 レイニーは頼みの綱とばかりにシルビーに情報が来ていないかの確認をお願いした。レイニーはシルビーが確認をしている間、掲示板にて雷竜の情報が無いか見て回った。

 そして確認が終わったらしいシルビーがやってくると、レイニーはシルビーの表情を見て、残念そうに肩を落とした。

「ごめんね、レイニーちゃん。やっぱり雷竜の情報はギルドにはなくて…。せっかく来てもらったのに、ごめんね?」

「いえ…、大丈夫です…。ありがとうございました…。」

 レイニーは項垂れたまま、冒険者ギルドを後にした。だが、レイニーには後雷竜の情報を持っている人の心当たりがなかった。"どうしよう…"と悩んでいると、レイニーはふと思い出した。

「雷竜…竜…ドラゴンならいるじゃん!」

 そう、思い立ったのはドラゴンのノアリーの存在だった。レイニーは一旦家に帰ると、ノアリーへのお土産のためにサンドイッチを手早く作り、ザルじいに"森に行ってくる~"と走りながら伝えて、家を飛び出した。ピーゲルの森の洞窟は最近のノアリーの居住地であり、そこに行けばノアリーに確実に会えるのだった。

 日が落ちる前にピーゲルの森に入ったレイニーはノアリーがいる洞窟まで一直線に走った。そして、洞窟につくと、近くにあった手頃な木の枝を手に取り、雷属性の静電気を強く発動させて木の枝に着火させた。簡易たいまつを作り、洞窟の中を進んで行くと、洞窟の最奥でレイニーは黒く輝く鱗を持つ、ドラゴンの姿のノアリーを発見した。洞窟の最奥は天井に穴が開いていて、日の光が差し込んでいて明るかったので、レイニーは松明の火を消して、ノアリーに近付いた。すると、ノアリ―も洞窟への訪問者がレイニーと知っていたのか、むくりと体を動かして首を上げると、直ぐに体が光に包まれ、少女の姿へと変わった。

「レイニー、よく来たな。今日はどういった用件じゃ?」

「ノアリーの知り合いに雷竜っていない?」

 唐突に雷竜の話を持ち掛けたレイニーはサンドイッチの入ったカゴバックを近くにあった手頃な岩の上に置いて、自分も近くの石に腰を下ろした。

「なんじゃ、藪から棒に…。確かに雷竜とは知り合いじゃが…。それがどうしたんじゃ?」

「あのね、今の私の相棒の武器が刃こぼれしちゃってて…。新しい槍を作ってもらうのに、雷竜の鱗があれば雷属性の魔法にも耐えられる強い武器ができるって言われて…。でも冒険者ギルドでも雷竜の情報はないっていうからさ…。もう本物のドラゴンのノアリーに頼るしかなくって…。」

「そういうことか…。わしの知り合いの雷竜は気難しい奴でそう簡単に鱗を渡してくれるとは思わんが…。」

「それでも雷竜の鱗を手に入れないと私の冒険者業が成り立たないのよ!ノアリー、雷竜のところに連れてってくれる!?」

「はぁ…。まぁ、行ってみるだけ行くか。」

「ありがとう!ノアリー!サンドイッチ全部食べていいよ!」

 レイニーはノアリーからいい返事がもらえたことで喜び、レイニーが作ってきた沢山のサンドイッチをノアリーに差し出した。ノアリーも悪い顔はせずに嬉しそうにサンドイッチを頬張った。

「それじゃあ、明日の朝森に来るね。」

「ああ。待っておるぞ。」

 レイニーが持ってきたサンドイッチを全て平らげたノアリーは満足そうにお腹を摩りながら、翌日に雷竜の元に運んでくれる約束をしてレイニーはピーゲルの森を後にした。

 レイニーが家に帰ると、そこにはクエスト終わりなのか、冒険者の格好をしたリトがいた。

「リト!来てたんだ。」

「ああ、おかえり、レイニー。クエストで疲れたから、ザルじいの肉料理が食いたくなってさ!」

「そうだったんだね。あ、そうだ。ねぇ、リト。私明日ノアリーの案内で雷竜に会いに行くんだけど、リトも一緒に来る?」

「えっ、雷竜!?なんかすごそうだな…。俺も一緒に行っていいのか?」

「うん。ノアリーなら承諾してくれると思うよ。」

「じゃあ、俺も行く!」

 レイニーは明日の雷竜へ会いに行くのをリトも同行の元行くことにしたのだった。その日の夕食はリトのリクエストでハンバーグを作った。肉汁溢れるハンバーグにリトも満足したようで、皿洗いを買って出てくれたので、ザルじいには休んでいてもらい、レイニーとリトで夕食後の後片付けをしたのだった。

 そして、翌日。レイニーとリトは朝9時にピーゲルの森に向かった。森の入り口にはノアリ―が既に少女の姿で二人を待っていた。

「なんじゃ、リトも来たのか。」

「俺も来ちゃ悪いのかよ。」

「いや、雷竜はそんなに人好きではないから、逆鱗に触れないように気を付けろよ。」

「了解。」

 そうしてレイニーたちはドラゴンの姿になったノアリーの背中に乗ると、ノアリーが"行くぞ!"と声を掛けて、その巨体を持ち上げた。バサッバサッと翼を動かして、空を飛ぶと、レイニーはその高さに驚いていた。

「こんなに高いの初めて!」

「振り落とされんようにな!」

 レイニーは風を感じながら、ノアリーの背の上で目まぐるしく通り過ぎていく景色を楽しみながら、雷竜がいるという場所までの飛行を楽しんだのだった。

 ノアリーの飛ぶスピードはかなり速く、1時間も飛んでいれば、眼下には鬱蒼と木々が生い茂る亜熱帯地方になっていた。

「さて、そろそろ降りるぞ!」

 ノアリーがゆっくりと着地すると、そこはレイニーたちが住む街よりもムシムシとした場所で、レイニーは思わず額を拭った。

「暑いね…。」

「ああ。ここは亜熱帯地方だな…、俺も初めてきたぞ。」

「二人とも、こっちじゃよ。」

 二人がきょろきょろと森の中を見渡していると、ノアリーは森の中を進み始めたので、二人はおいて行かれないように、急いでノアリーの後を追いかけた。

 数分歩いて辿り着いたのは、苔むした大きな神殿だった。

「ここに雷竜が?」

「ああ。そうじゃよ。ライニック、おるか!ノアリーじゃ!」

ノアリーが神殿の入り口の扉に向かってそう叫ぶと、ゴゴゴ…と重そうな音を立てて。扉が開いた。レイニーたちは勝手に開いた扉にびっくりしつつも、ノアリーの背中を追いかけて、神殿の中に入ったのであった。

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