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Level.41 武器の寿命

Level.41 武器の寿命

 2日間に及ぶ、収穫祭が終わり、レイニーたちはまたいつも通りの喫茶店の営業を始めた。

 お客さんの中には、収穫祭での出店に来てくれた人や、料理対決を見ていた人が訪れてくれて、レイニーはそんな人達から有名人扱いをされて、なんだか少し恥ずかしい気持ちになりながらも、今日も料理を作っていた。

 それから土日の喫茶店の営業を終えて、また平日に冒険者業をしていると、レイニーはある違和感に気付いた。

「あっ、これ刃こぼれしてる…?」

 そう、レイニーが気付いたのは、ここまでたくさんの魔物と戦ってきた我が相棒の槍の刃先の部分が刃こぼれし始めていたのだった。レイニーがそういって立ち止まったのを見て、一緒にクエストをしていたリトがレイニーの元に駆け寄ってきた。

「あちゃー…、もう武器の寿命かな…?レイニーの槍には何度も助けられてるし、そろそろ高くて新しい槍に新調するのも手だと思うぞ。」

「ここまで一緒に頑張ってきてくれてありがとう…。よし、今日は街へ帰ったら、武器屋さんに行ってみる!」

 こうしてレイニーはクエストを速めに終わらせると、ピーゲルの街の武器屋に向かった。そーっと店内を覗いてみると、今の時間はお客さんが誰もおらず、外から覗き込んできたレイニーの存在に店主はいち早く気が付いた。

「おや、レイニーちゃんじゃないか。いらっしゃい!」

「ドルグさんこんにちは。あの、今時間大丈夫ですか?」

「ああ。大丈夫だよ。どうした?」

「あの…、ここで買った私の槍が刃こぼれしちゃって…。リトから新調するのも手だと言われたんですけど…。」

レイニーはおずおずと自分の槍をカウンターに出すと、その武器の様子を見て、ドルグと呼ばれた武器屋の店主は"あちゃー"と言葉を漏らした。

「俺の店で買ってくれたから、またこうしてお店に来てくれたんだよな。ありがとうな。よし、最高の武器を作ってやる!って言いたいところなんだが…。レイニーちゃんももうシルバーランク冒険者だ。特注の武器を作ることも可能だが…。どうする?」

「特注…、それにします!私だけの武器ができるってことですもんね!ぜひ作ってください!」

「あいよ!それじゃあ…、レイニーちゃんの扱う魔法属性ってなんだ?」

 槍の様子を見てからドルグは特注の武器を作ることを勧めてきたので、レイニーは貯金もあるしと考え、思い切って特注品を作ってもらうことにした。するとドルグはカウンターの下から、何かの用紙を取り出すと、レイニーにいくつかの質問を投げかけてきた。

「魔法属性ですか?えっと、雷です。」

「雷属性ね…。ふむ、それなら雷属性に対応する素材が必要になってくる。そうだな、鉱石は軽くてでも頑丈なものがいいだろうな。例えば"星屑の海洋石"と"天海の琥珀"とかがいいんじゃねぇかな。雷属性に対応する素材としては雷竜の鱗が一番妥当だが…、今挙げた素材は皆レア中のレアだ。いくらシルバーランクのレイニーちゃんでも、集めるのには時間がかかるだろうが…。それでも特注品を作るかい?」

「"星屑の海洋石"と"天海の琥珀"…。確かに聞いたことないですね…。その鉱石はどこで採れるんですか?」

「うーん、鉱山都市のラッシュの山ならあると思うぞ。って、本当に採りに行くのかい!?」

「はい!だって私の相棒ですもん!苦労は惜しみません!その3つの素材を持ってくるので、待っててください!」

 ドルグが言った鉱石などの素材を採ってくるとレイニーは行きまいて、武器屋を出た。そして鉱山都市ラッシュに向かうため、冒険者ギルドで話を聞くことにした。

 今日も受付カウンターで忙しなく働いている、シルビーの元に行くと、レイニーは声を掛けた。

「シルビーさん、こんにちは。」

「あら、レイニーちゃん、こんにちは。今日はどんなクエストに行くの?」

「えっと、今日はちょっと鉱山都市ラッシュのことについてお聞きしたくて。」

「ラッシュ?何か鉱石でも採りに行くの?」

「はい。私の相棒の槍が刃こぼれしちゃって…。新しく作ってもらうための素材を集めに行こうと思いまして!」

「そういうことね。ラッシュは鉱山に囲まれた都市で、いくつもの鉱石が採れることで有名ね。ラッシュ行の馬車も出ていると思うし、ピーゲルの街からラッシュまで転移魔法陣があるから、着いたら、鉱石のことなら冒険者ギルドでも情報はあると思うから聞いてみるといいかも。」

「そうなんですね!情報ありがとうございます!早速行ってきます!」

「はい、いってらっしゃい。」

 レイニーはシルビーに笑顔で送り出されて、ラッシュ行の転移魔法陣を発動してもらい、ラッシュの冒険者ギルドを出るとまず宿泊施設にチェックインだけして、冒険者としての装備であるアーマーなどを部屋に置いて、情報だけでも聞きに行こうとラッシュの冒険者ギルドを訪れた。掲示板を見ても、レイニーの欲しい鉱石の情報は書かれておらず、レイニーは受付嬢に聞いてみることにした。

「あの、すみません。ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが…。」

「はい、いらっしゃいませ。何かをお聞きになりますか?」

 笑顔で対応してくれた受付嬢にレイニーは"星屑の海洋石"と"天海の琥珀"のことについて、聞くと受付嬢は少し考える素振りを見せると、"少し待っててくださいね"と言って、カウンターの奥の部屋に行ってしまった。レイニーは言われた通り、その場で待っていると、受付嬢が分厚い本を持ってきてくれた。

「これは?」

「これはラッシュで採れる鉱石の一覧が載っている図鑑です。そうですね…、”星屑の海洋石"も"天海の琥珀"もこのラッシュで採れることに間違いはないようですが…、レア度が高い鉱石なので、この本には少しの情報しかないですね…。どこで採れるかまでは分からないんです…。すみません…。」

「いえいえ!わざわざ調べてくれてありがとうございました!」

「ラッシュの武器屋に行けば、もう少し鉱石についての詳しい情報がもらえるかもしれません。行ってみてください。」

「ありがとうございます!行ってみます!」

 冒険者ギルドの受付嬢から武器屋に行って話を聞くことをお勧めされたので、レイニーはその言葉通りにラッシュの武器屋を訪ねてみた。今の夕方の時間は冒険者の数も少なく、武器屋はがらんとしていた。

 武器屋はピーゲルのところよりも、店内は広く、店内に並べられている武器の数もピーゲルのよりも多かった。そんな武器たちを"ほえー"ってきょろきょろしながら、見ていると、カウンターに座る無精ひげを生やした店主と目が合った。

「なんだい、嬢ちゃん。武器屋に何か用かい?」

「あの、私冒険者なんですけど、武器が刃こぼれしてしまって…。今鉱石などの素材を集めているんです。"星屑の海洋石"と"天海の琥珀"っていう鉱石なんですけど、何か情報はありませんか?」

「今その二つの鉱石は店に取り置きがないから、嬢ちゃんに取ってきてもらうしかないな。その2つなら、ラッシュの鉱山で採れるよ。"星屑の海洋石"はラッシュの山と山の間の湖で夜にだけ採れる。"天海の琥珀"は明朝の山の頂上で空から落ちてくる流れ星の中に含まれる鉱石だ。2つとも採るのが難しいが…。」

「その鉱山の場所教えてください!」

「嬢ちゃん、今から採りに行くのかい?」

「はい!”星屑の海洋石"は夜で"天海の琥珀"は明朝ですよね!今からでも行って採ってきます!」

「夜通し働いている鉱山の男たちがいるから、もし会うことがあれば、そいつらからも鉱石の話を聞くといい。」

「!ありがとうございます!行ってきます!」

 レイニーは宿泊施設に一度戻ってアーマーなどを再び取り付けてから、ラッシュの鉱山に向かった。ラッシュの武器屋の店主から鉱山の場所をメモしてもらったものを持って、レイニーは夜が近付いてくる山へと足を踏み入れた。

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