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Level.4 街へ!

Level.4 街へ!

それから3人で朝食を食べ、リトが食後に水を飲んで口の中をスッキリさせると、思い立ったように"そうだ"と声に出した。

 ザルじいもレイニーも食器を片付けようとキッチンの方へ行こうとしていたので、その足を止めてリトの言葉の続きを聞こうとした。

「俺もう体力回復したし、ピーゲルの街に帰るから!森を抜けて帰れば夕方には着くだろうし。沢山の料理と寝床を提供してくれたこと、俺忘れないから!」

「リトさんは冒険者ですもんね…。色んな街に行くんですか?」

「ああ。俺はさまざまな街にある冒険者ギルドで依頼…つまりクエストをこなして稼いでいるからな、ピーゲルの街に実家はあるけど、職業柄毎日帰っている訳じゃないんだ。今回はただピーゲルの森に行くとだけ伝えておいて、家に帰らなくなってるから、両親はカンカンに怒ってる…か…も…。」

 リトは自分の両親のことを思い出してさぁーっと血の気が引いていくような表情をしていた。

「ねぇ、ザルじい。私たちもピーゲルの街にに行ってリトさんのご両親に挨拶した方がいいんじゃない?」

「おお、それはいい案じゃのう。ご両親が心配しておるやもしれんし、わし達が助けたことも伝えればリトへのお咎めも軽く済むじゃろうて。」

 レイニーの閃きにザルじいも賛成してくれたので、レイニーたちは3人で森を抜けてピーゲルの街に行くことになった。

 ザルじいが用意してくれた洋服は少し色が褪せてしまっているので、もし街に服屋さんがあるなら新しいのを買いたいな…とレイニーが思っていると部屋の外からザルじいが呼んでいるので、レイニーは慌てて導き石を首から提げ、部屋を出た。

「レイニー、忘れものはないかの?」

「うん、導き石も持ったし、軽い着替えとかも持った。」

「うむ、それじゃあ、ピーゲルの街に行こうかの。」

「おー!」

 レイニーは初めての街に行くのでワクワクした気持ちなのだが、先導するザルじいの後ろの後ろにいるリトが先ほどからズーンとした重い空気を漂わせて歩いているのが気になった。

「リトさん!さっきからそのズーンっていう気の重みはなんですか!?こっちの気分まで下がってしまいます!」

「あ、ごめん、レイニー…。いや、何も言わずに森で生き倒れていたとか母親に知られたらと思うと…」

 何を想像したのか分からないが、リトが震えてきたので、レイニーはザルじいに助けの視線を投げかけた。

「リトの母親は…確かランラさん、と言ったかの。とても愉快な人であると記憶しておるぞ。息子に対しては怒れば怖いということか…」

「それなんだよ…、母さん怒ると怖すぎて…せっかく腹一杯ご飯が食べれたのに、また食事抜きとかされたら俺また餓死しちまう!」

 リトは相当怒った母親が苦手なようで、ガタガタと震えて座り込んでしまった。そんなリトにレイニーは励ますように肩に手を置いた。

「リトさん、大丈夫ですよ。謝る時は私も謝りますし、何よりお母様は心配して怒ってくれるんだと思います。その気持ちをちゃんと汲み取れば大丈夫ですよ。」

「レイニー…、う…分かった。俺より年下の女の子に慰められるなんて…男として失格だな。」

「え、リトさんおいくつですか?」

「俺?18だけど。」

「私も18です。誕生日がくれば今年で19です。」

「「え。」」

 レイニーの励ましからふと思った疑問をリトにぶつけてみると、衝撃の事実が発覚した。

「「ええーーーーっ!?!?」」

 2人の大音量の声が森を揺さぶり小鳥がパタパタと飛んでいってしまうほどだった。

「なんじゃ2人とも大声を出して…」

「ざ、ザルじい、リトさんって18だったの!?」

「ザルじい!レイニーって18でもしかしたら俺より年上なのか!?」

 ザルじいは耳がキーンとなっているようで、少しばかり迷惑そうな表情をしたが、すぐに2人が勘違いをしていた発言をしたので、"ほっほっほっ"と笑った。

「お互いに勘違いをしていたようじゃの。レイニーは19になるし、リトは18になったばかりじゃろう。」

「俺の誕生日まで知ってたの!?」

「街でランラさんに会うとリトの話をしておったからの。覚えておったんじゃよ。」

 そんなリトとザルじいのやり取りを聞きながらレイニーはリトから年下に見られたことがショックだったのか項垂れていた。

「私ってそんなに童顔なのかな…」

 シクシクメソメソとしながら森を歩き始めたレイニーの手をリトが取った。

「レイニー!女性に対して失礼なこと言ったの、謝る!泣かないでくれよ!レイニーは笑顔が1番だ!」

「リトさん…!」

 手を取られたことで自然と手を繋いでしまったレイニーとリトに直ぐにお互いにハッとして手を離した。

 照れたようにはにかむリトの姿は年相応の18歳の彼の笑顔に見えた。

 3人はそんな話をしながら時折動物や魔物を狩りながら森を抜けた。午前中に小屋から出発したのだが、街へ着いたのは夕暮れ時だった。

「さぁ、まずはリトの家に行って事情を説明せねばな。レイニー、一緒に来てくれるかの?」

「うん、行く!」

 ザルじいと一緒にリトが母親から怒られるのを半減させるためにレイニーはザルじいと共にリトの実家へと向かった。

 ガチャリとリトが家の扉を開けてそーっと中を覗いて、"ただいま…"と小さく言うと家の奥からどたどたと誰かが走ってくる足音がした。

「こら!!!リト!!!あんた近所のピーゲルの森に行くって言って1週間以上も帰ってこないって何してたの!!」

「うげ…、か、かあさん…。」

「部屋を見てみれば導き石も忘れてってるし、食料もそんなに持って行ってなかったようだし…、全くこの子は!!!あれだけ、荷物の確認をしろと!!!」

 リトの予想通りリトを鬼の形相で出迎えたのはリトに顔立ちが少しばかり似ているランラという女性だった。そしてその人がリトの後ろで構えていたザルじいとレイニーに気付くと、軽い会釈をした。

「あらやだ、ザルじいじゃない!久しぶりだねぇ!ってまさか、リト、あんたザルじいに助けてもらったの!?」

「あ、あの!リトさんのことそんなに叱らないでください!私たちが料理をたくさん食べさせてあげましたし、本人も反省してましたので…」

 ランラは勘が鋭いようで直ぐにザルじいがこの場にいることの意味を受け取り、リトに詰め寄った。リトは慌ててレイニーの後ろに隠れたので、レイニーがランラに向かってリトを怒らないでほしいとのお願いをしてみた。

「おや、この子は初めて見る子だね。名前は?」

「レイニーと言います。最近森でザルじいと一緒に住み始めたんです。よろしくお願いします。」

「はい、よろしく。なんだい礼儀正しいいい子じゃないか!リト、そんな可愛い子の後ろに隠れてて恥ずかしくないのかい!男ならしゃんとしな!」

「いてっ!」

 リトはレイニーの後ろで隠れていたのだが、直ぐに捕まり家の奥へと連れていかれそうになった。

「あの!私この街に来たのが初めてなので!明日リトさんに街の案内を頼みたいんです!いいですか…?」

 ランラに引き摺られながらリトは"オッケー!10時半に俺の家に来てくれ!"と言い残して家の奥へと消えていった。

 そんなお騒がせなリトの家族にレイニーは少し懐かしさを感じた。今自分の家族はどう過ごしているのか、それが気になってしまった。

 一瞬だけ暗い表情をしてしまったのを、ザルじいは見逃さずにポンポンとレイニーの頭を撫でてやり、2人はリトの家から離れると今夜泊まるピーゲルの宿泊施設に向かった。

 ――――――

 翌日。約束された時間にリトの家に行こうとすると、ザルじいは市場で賑わう別の道を通ろうとしてた。

「え、ザルじいは一緒に行かないの?」

「わしはもう何回もこの街に来ておるからの。わしは食料調達をしておるから、レイニーはリトと一緒にこの街を案内してもらいなさい。」

「ん、分かった!また夕方に、宿泊施設の前で!」

 2人で宿屋の前で別れると、レイニーは昨日の記憶を頼りにリトの家まで辿り着くとそこには私服らしくかっこいい佇まいのリトが立っていた。思わずレイニーはリトの太陽に反射して輝く銀髪と整った顔立ち、節々が目立つ男性らしい手。どこを見てもこれはイケメンの部類では!?と思っていると、リトが茂みに隠れてリトを観察していたレイニーに気がついた。

「何してるの?」

「え、えっと…。探偵ごっこ?」

「探偵?それも異世界語かな?」

「あ、この世界には探偵はいないのか…。ま、まぁいいじゃないですか!この街の案内、よろしくお願いしますね!」

「おう!任せとけ!」

 茂みを覗き込むリトと茂みに意地でも隠れようとするレイニーの攻防戦が小さく繰り広げられていたが、直ぐにレイニーが降参して茂みから立ち上がったので、ピーゲルの街の案内をリトにしてもらうべく街に向かって歩き出したのだった。

 

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